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芝辻と学ぶ韓国webtoonの歴史~なぜ韓国でwebtoonが普及したか~

こんにちは、フーモア代表の芝辻です。

改めてこのnoteの目的です。クリエイターさんに向けてのwebtoonの制作方法だったり情報をブログで発信していこうと、そうすることで日本のクリエイターの中からwebtoonのヒット作が生まれるのを期待して情報発信しています。

今週もいろいろニュースがありましたが、クリエイター観点の記事のピックアップから始めたいと思います。

1.今週のピックアップニュース

アートスパークホールディングスとWEBTOON Entertainmentが資本業務提携

アートスパークホールディングスはやや聞き慣れない社名かもしれませんが、子会社にクリスタを開発運営しているセルシスを持っている会社です。
以下リリース文章の抜粋です。

今回の資本業務提携により、子会社セルシスが行うクリエイターサポート事業において、WEBTOON Entertainmentと共同で、コンテンツの制作・翻訳・流通の効率化とマーケットの活性化を目指し、様々な活動を行ってまいります。

Naver webtoonはkakaoと比較すると多様な作品群を持っており、作家の多様化を重視しているということが伺えるかと思います。
最近韓国では作家が自由にwebtoonを描ける環境を求めて、kakaoからNaver webtoonに移っているという話をチラホラ聞きます。

スタジオ制でプラットフォームが求める(そのプラットフォームで売れ筋の)webtoonを制作するというのも一つ良いですが、クリエイター自身の個性や才能を発揮できる場として、Naver webtoonはその多様性に目をつけているのかもなと思いました。

また、小説プラットフォームのwuxiaworldをkakao entertainmentが買収


以下英語記事

売れている原作をwebtoon化という流れはkakao pageでの基本の流れだと思いますが、


売れている人気原作をwebtoon化するからヒットするのか、人気原作だからビジネスサイドが安心してお金張れてプラットフォームもプロモしてヒットするのか、どちらもあると思うんですけど、どちらでも熱い思いがあって作らないとヒット作は生まれないと思う今日このごろ。


さて、今回のnoteは、愚者は経験から学び賢者は歴史から学ぶ、ということで古くからの友人であり日本で最もwebtoonに詳しいフームの福井さんの話を伺い、webtoonの歴史に関して触れていきたいと思います。
※フームとフーモアは名前が似ているだけで別会社です


2.なぜ韓国はwebtoonか?

韓国では、1997年にアジア通貨危機などや、「青少年保護法」により漫画が青少年に有害な物と指定されたことなどがあり、2000年頃まで、漫画産業は壊滅的な状態でした。

一旦、漫画市場が更地になったという感じでしょうか。漫画を発表する場が限られており、多くの作家はパソコンからインターネットで発表するしか方法はありませんでした。そんな中、ポータルサイトの1コーナーとして始まったのがウェブトゥーンです。作品は一本の楊枝型のJPGを張り付けて、スクロールバーが「ページめくり」の役割を担いました。必然的に「縦スクロール」形式になったということです。紙に描くGペンではなく、最初からペンタブレットを使用し、デジタル彩色が当たり前で、「作品数」がどんどん増えていきました。
当初は一部の漫画家から「一過性の流行に過ぎない」と批判もありましたが、次第に新たな漫画のスタイルとして定着していきました(これは後半に説明します。)

韓国は日本の文化が禁止されていました。
日本の出版社が漫画雑誌や単行本等で大儲けしているのに比べて、韓国では日本文化禁止ということをしていたので、韓国の漫画産業が成長するわけがなかったのですが、韓国にも漫画家は存在していました。韓国の漫画家さんは、新聞の4コママンガ的な作品や学習まんがは受け入れられていたので、そこでの制作を通じて細々と生計を立てていました。韓国の通貨危機以降で、デジタル革命をして、キム・デジュンが大統領になり、学習漫画家はたくさんいたので日本との交流も増え始めました。

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チェッパン(貸本房)

そのタイミングでチェッパン(貸本房)やネットカフェがたくさんでき始めたり、インターネット文化が日本よりも早く普及しました。職を失った人たち向けにネットを使って何かをしようということで、韓国でwebtoonが生まれ始めました。当時は貸本文化があり、闇市場で日本のマンガが違法コピーをされたりしていたりしたが、それがインターネットによりwebでも漫画を普及させることができるようになった。そこの最初に公開した漫画家は、新聞での漫画家さんたちが多くいました。

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貸本屋が一時増えるが、2000年代インターネットの普及により減り始める

3.漫画メディアの変遷

2000年代CyworldNaverNATEなどの3大ポータルができ(yahooなど参入したがダメだった)、そこでwebtoonが掲載されはじめ今の原型ができてきました。新聞漫画のヒーローだった漫画家さんたちが初期のdaumwebtoonで大ヒットを出し始めるのです。

4.韓国人はwebtoonが大好き

以下の要因もあり、韓国人はwebtoonが好きな人が多いです。
・子供のころからPCやスマホで漫画を見る習慣
・スマホのSNSの文法は全て縦スクロール
・デジタルのみで収益を上げられる
・縦スクロール特有の演出法とカラーが魅力
・分業やデジタル処理技術の進展による制作環境の改善

webtoonのポータルはすべて新作で市場が埋め尽くされるくらい、活気に満ち溢れるようになりました。そこに更に韓国国家が支援し、投資が入るという、資金の好循環を現在生み出しています。

5.日韓のwebtoonプレイヤーの関係図

以下日韓のwebtoonプレイヤーの関係図です。いろんな記事で取り上げられたりするので、説明は省略します。

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6.日本のwebtoonのはじまり

webtoonは、日本では「COMICO方式」で認知されました。多くの日本人作家も、COMICOで「縦スクロールカラー」作品を発表しました。他にもいろいろありましたが、全く市場も業界も反応しませんでした。私フーモアの芝辻や、フームの福井さんはこの頃出会い、二人でよく韓国に出入りしていました。

7.webtoonは漫画の劣化版として誤認識

カカオピッコマの金さんが、smartoon(ウェブトゥーンのこと)はスナック菓子、横の漫画はディナー、という表現をしていますが、もう少し分解すると以下の表くらいコンテンツとして異なります。

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また、産業構造も日本と韓国では大きく異なりました。初期、韓国ではwebtoonのキャラクターがグッズになったりするような日本みたいな展開はまったくありませんでした。日本の横の漫画はではメディアミックス展開がよくなされていましたが、韓国はおもちゃ屋がそもそもなく、漫画は学習漫画だけだったため、ノートなどにキャラクターが印刷されることなどもありませんでした。

韓国では産業構造的にそもそも何もなかった状態から、日本やアメリカのような産業構造を作りたいというのがあり、naverは検索、daumはコミュニティ、Cyworldなどに人が集まるようになり、webtoonの普及につながりました。そこからワンソース・マルチユース(OSMU)的な日本やアメリカのようなメディアミックスの普及にも繋がっていき、投資も集まるようになっていきました。

そのような中、kakao talkが2010年頃にリリースされ、コミュニケーションがより活発化され、スタンプなどの絵の需要が生まれ始めました。そこからキャラクタービジネスが飛躍的に進化し始めたのは記憶に新しいと思います。

このように韓国では何もなかった状態からスタートし、国主導でのバックアップなどがあり、今のwebtoon市場があるのです。
日本は国の支援ではなく、漫画やグッズ、アニメ、様々な産業がメディアミックスという形で漫画の市場を構成してきたということからもその違いがわかると思います。

8.韓国のwebtoon作品が急増したのは5年前ぐらい

2017年時点では7000作品弱。2021年時点では2万作品程度まで急激に作品数が増えています。以下のグラフはやや古いですが2013年時には1273作品しかなかったことから、ここ数年での盛り上がりは、市場規模以外な観点からも分かるかなと思います。

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9.webtoon初期の名作

ここからはwebtoonの初期の名作たちを見ていきたいと思います。日本でいうと手塚治虫的なパイオニアの作家さん及び作品を紹介していきます。
初期のwebtoon演出は、カンフル、ヤン・ヨンスン(1001)、カン・ドハ(偉大なキャッツビー)等で進化しました。スクロールの方向が縦なので、これを利用した演出法が次から次へ開発されていきました。

◎ヤンヨンスン:作品名「1001」
既に作品のリンクがない状態となっていますのでネットから引っ張ってきた画像を貼ります。

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2004年の作品。
webtoonを見る時、マウスでスクロールで上から下に視線が移動することを積極的に考慮した作品です。

当時としては新鮮なカット レイアウトと演出を使っています。ヤン・ヨンスンは、単純で派手な素材の漫画だけ描く作家でないですが、webtoonを単行本にするのが難しいにもかかわらず、破格的な演出が相当な好評を受けて、多くのウェブトーン作家がこの手法を引き継いでいきました。

ほぼ同じ時期に連載されたカンプルの「少女漫画」、カン・ドハの「偉大なキャッツビー」とともに韓国漫画系に及ぼした影響が大きい作品で、みな日常エッセイ系が中心であったウェブトゥーンジャンルの多様化とポータルサイトやウェブトゥーンサービスの活性化を呼び起こして韓国ウェブトゥーンの方向転換を起こした作品と評価されています。

◎カンプル「少女漫画」
カンプル作品は、ほとんどが映画化、あるいはドラマ化されました。

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◎カン・ドハ「偉大なキャッツビー」
カン・ドハの「偉大なキャッツビー」は2005年の作品。シリアスな恋愛ストーリーと犬猫で描いたコミカルなキャラクターで一世を風靡しました。

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10.韓国のwebtoonの普及は、途上国でキャッシュレス決済が普及したのと同じこと!

今、いろんな日本の会社さんがwebtoonに参入をしてきていますが、デバイスや文法的にwebtoonと横の漫画は異なるという話はいろいろな記事で出ていますが、韓国でwebtoonの市場ができた背景、歴史は意外と語られてないです。
イメージとしては途上国でパソコンやインターネットが普及していない状態でいきなりスマホが輸入された際、キャッシュレス決済がいきなり普及した感じで、漫画市場がなかった韓国でwebtoonが普及したのに似ていると私は思います。
日本はキャッシュレス決済はまだまだで、紙幣や硬貨での支払いがまだまだ多いと思います。漫画も横の漫画が日本でも引き続き覇権を取っていくのは変わらないと思いますが、グローバルではwebtoonはキャッシュレス決済のように市場を作っていくでしょう。

P.S.
そういえば、今回韓国のwebtoonの歴史をまとめるにあたり、面白い論文を見つけました。
以下「韓国マンガ産業の海外市場進出のための戦略モデル研究」と題された論文の著者は尹 仁完という慶應義塾の学生。そう、YLABの創設者でもあり、現LINEマンガのCCOの学生時代の修士論文なのです。かわいい。

https://koara.lib.keio.ac.jp/xoonips/modules/xoonips/download.php/KO40001001-00002010-0120.pdf?file_id=45054

フーモアは日本を代表して、グローバルに日本発の国産webtoonを作っていきたいと思います!
ということで一緒にそんな世界を作っていける仲間を募集しています!

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