マニア系マンガ書店の元社長が送る 「同人よもやま話」第1話
突然ですが、同人誌ってご存知ですか?
同好の士が集まり文芸同人誌を発行していた時代からおよそ100年、
現代で言う通称サークルがアニメや漫画、ゲームの二次創作を中心に自費出版されたものを同人誌と言います。
『某デンキ街の本屋さん』のモデルになったマニア系マンガ書店の元社長Kが、同人業界のアレコレをビジネス寄りにお伝えできればと思います。
©2014 水あさと/株式会社KADOKAWA メディアファクトリー刊/コミックうまのほね
【同人誌の市場規模】
矢野経済研究所の調査によると、同人誌市場規模は、775億円(2015年)から815億円(2018年)と推定。イベント即売会や同人誌専門書店、ダウンロードサイトでの売り上げは伸び続けています。
隣接のコンテンツ市場では、コミック市場の4,414億円(紙+電子)、アニメ市場(制作売上)の2,800億円、アイドル市場の2,400億円に次ぐ規模となっています。
10年間近く売場に立ち続けた中で、新店オープン時に、サイン本や作家描き下ろし限定特典、同人誌を求めて、台風の中2,000人以上多くのお客様が来店いただいた思い出や、倍々に成長する売上に同人誌業界の勢いを感じていました。
【同人誌の種類】
「同人誌」は「漫画・アニメ・ゲームの二次創作同人誌」といったイメージが一部先行していますが、流通や印刷形態により区別する事が出来ます。
<流通形態>
コミックマーケットや同人ショップで流通される「漫画・アニメ・ゲーム系二次創作同人誌」、一部コミックマーケット、コミティアで流通される「オリジナル中心の一次創作同人誌」、文学フリマなどで流通される「文芸同人誌」など。
<印刷形態>
コピー機で製作した「コピー本」、版を用いる「オフセット本」、最近増えていているプリンター出力の「オンデマンド本」、
IT化に伴い、CDやDVD、ダウンロードで頒布する同人ソフトや抱き枕、缶バッチ、アクセサリー等の同人グッズなど。
頒布価格はページ数にもよりますが、コピー本が150~200円、オフセット本は、モノクロ仕様が300〜700円、フルカラー仕様が700〜1200円、同人ソフトが1000円〜2500円が一般的です。グッズ類は多種多様なアイテムが創られており、ノベルティの見本になるなど、「同人→商業」への一部変遷も面白い特徴です。
【コミックマーケットとは?】
コミックマーケット(通称コミケ)は、夏冬に東京ビックサイトで開催される世界最大の同人誌即売会。出展3.5万スペース、3日間で来場者59万人(2018年実績)、開催回数は定期開催だけで95回を数えます。
20代から60代の「サークル・スタッフ・一般・委託サークル・コスプレ」全ての参加者の相互協力によって運営される「場」であり、同人誌を中心としてすべての表現者を許容し継続することを目的とした表現の可能性を広げる為の「場」との理念を大切にしているイベントです。
類を見ない参加者や熱量などは、新たなメディアとして価値付けされ、
芸能人やコスプレイヤーの参加や多くの企業がプロモーションの「場」として注目されています。
はじめてコミケ参加した時の人の波に驚愕したのは良い思い出です。
【まとめ】
同人誌は、メーカーや出版社との関係も少なくありません。
二次創作、同人誌の売上が人気度の指標としての要素もあり、ファン活動の一環として黙認されるケースも多いです。出版社にとっても、売れっ子同人作家は有望な新人作家候補であることから、同人誌市場を注目しています。
明治時代、多くの文豪を輩出したように、平成は多くのクリエイターや作品が生まれました。
「人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ」
令和時代に込められた想いが、様々な技術革新やボーダレス化の中で、同人誌という人々が創作の為に集う「場」を通して、また新たな創作物が生み出されていくでしょう!!
「同人よもやま話」を通して、その可能性をお伝えできれば幸いです。
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