愛するということ


「愛してるよ」

彼はよくこの言葉を口にした。

世の中、ほとんどの女は好きな男にこのセリフを言われるために生きているのかもしれない。

私はこの言葉を言われると胸が苦しかった。
愛は言葉にするものじゃないから。

私はその言葉にモヤモヤとしたなにかを感じた。

「愛してる」ってなんだろう。
簡単に口にできる言葉なのだろうか。

彼は「愛してる」という。

それは自分を守りたいからではないかと思った。

愛してるということによって、他人を愛している自分を確認しているのではないか。

私のことを愛している自分が好きなだけではないのか。

彼から大切にされていることはわかっていた。

しかし、愛を感じたことはなかった。

大切にされていることと、愛は違うと思った。

「大切にされているように見せる」のが上手いだけかもしれなかった。

私が求めている愛と、彼が彼なりに与えてくれる愛はすれ違っていた。

愛は難しい。人々は簡単に愛とか愛情とかいうけれど。

私が思う愛と、あなたが思う愛が違っていたら、お互いがどんなに与えても与えても受け取られることなく終わってしまう。

あなたの愛を正しく受け取れなくてごめんなさい。

愛してるの言葉なんて要らなかった。

ただ私が苦しい時に抱きしめて欲しかった。

私にこれ以上苦しい思いをさせないで欲しかった。

私のことを泣かせないで欲しかった。

傷つけないで欲しかった。

だからあなたは他人を愛せない人だと思った。

自分の愛で私を傷つけるから。

ねえ、知ってる?

愛ってね、

愛ってね、相手が望むことを与えるものなんだよ。