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思いがけず『癒しの力』を得た話

浮腫発症

ある時、母から「片足が急にむくみだして全然戻らない」と電話があった。
5年前に受けた癌の手術の後遺症かもしれない。

数日後に見に行ったときにはかなりひどくなってしまっていた。
左足だけ倍ほどの太さでパンパンになって、その上皮膚に炎症までおきてしまっている。

病院で手当てを受けて、処方された薬も効いて、数日で炎症はうまく治まったけれど、浮腫は改善されていない。
伸縮性のある包帯で締め上げてもらった日は少し細くなるものの、はずすとすぐ元に戻る。
「病院でできることはもう無い」と言われて残念そうに帰ってきた。

わたしにできることは何か

今のわたしにも、できることはない。
ないけど、そのままにしておくわけにもいかないだろう。
何かできることはないか、調べてみた。

包帯で締め上げるのは医療行為らしく、
図書館で取り寄せた本は医療従事者向けの学術書だった。
写真や図解もあるにはあるが、基本を知らないでやるのはあぶない気がする。
こわくて実践するのは腰が引ける。
とりあえず、これはやめておこう。

次はマッサージを頼むことを考えた。
でも、美容のむくみ取りとは違っていないといけない気がする。
なにせ『患部』といった感じだから。
探しているうちに、実家に出張マッサージを頼むのも現実的ではない気がしてきたし、近くにそんなマッサージをしてくれるところも見つからなかった。

どうにも確たる方法が見つけられない。
何もできないまま焦ってはいるけれど、
「わたしにはどうしようもないのでは?」という後ろ向きな考えが、実は頭のどこかにある。
だからいろんな『気がして』問題を先延ばしにして、逃れる言い訳の現れるのをどこかで待っている。
「今日もむくみがひかないの」
「今日も歩きづらくて困るのよ」
母からは毎日電話が入る。
愚痴を聞いて欲しいのか、報告する意図なのか。
真意はわからないけれど責められている気持ちになるのは事実。

浮腫についてあれこれ調べるうちに、以前テレビで『なでるような手の動きでリンパ液を流してむくみをとって小顔に』という内容の放送を見たことを思い出した。あの技で足の浮腫もなんとかすることができるのではないか?
記憶をたよりに探してたどり着いた、リンパ浮腫の専門外来の施設。
残念ながら東京にしかない。
でも、この技を手に入れることはできるかもしれない。

わたしがするしかないか。

リンパドレナージ

では次は、その技術をどうやったら習得できるかだ。
今まで考えたこともなかったけれど、調べてみると世の中には色々な技術を教える専門学校のようなところがあるのだと知った。
その気になれば、技術の習得は可能そうだ。

でもまとまったお金も必要だし、時間もとられるし。

でも急いだほうがいいし、あのまま放っておくわけにもいかないし。

かくしてわたしは約2か月程集中的に学校に通い、手技を学び、医療行為に近いリンパドレナージの資格を手に入れた。

週一で実家に通い、毎回2時間近くかけ全身の施術などを繰り返した結果、
滞っていたリンパ液が少しずつ流れるようになり、2カ月ほどかかったけれど左右の足の太さの差をぱっと目ではわからないほどにまで戻すことができたのでした。
めでたしめでたし。(まだ油断はできないけどね)

最後に

結果として、思わぬ形で『癒しの力』を手に入れることになったのでした。
これだけの判断力と行動力が自分にもあったことに驚きつつ、事態を解決の方向に向けられたことに安堵と、多少の充実感を得られたのは収穫だったと思うのです。普段全く親孝行をしていない娘なので、役に立てたことは素直に喜びでした。母には悪いけれど、これも必然だった・・・と言っていいのかな?ま、巡り合わせではあったでしょう。

ただ母の浮腫をなんとかしたいという目的で技術を習いに行ったわたしですが、一緒に学んだ人の中にはこれを個人の仕事にしようとされている方もいて「集客にいい物件があってね、こういうニーズのお客さんが多い立地だからサロンを開いたら・・・」などという計画を聞いていると、そういう手立てもあるのかと、視野が広がる思いがしました。たまには違う環境に身を置いて刺激をもらうのもアリですね。

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