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失恋忘備録

#エッセイ部門 夢が醒めたら嫌だから それだけの気持ちで、惰性でなぞった愛情らしきものに、己が求める安寧はあるのかと自問自答を繰り返しながら今の夜を迎える。 ただ祈るような、己の情欲を体良く綺麗事で片付けたような、あくまで形式的な情愛をただ抱えている。 正直な話ね、そんなものは、いらない。 私はただ愛したいだけ。 己の懐にいた可愛い子たちが健やかであればいい。 建前上そう思う中で此奴を想い、此奴の幸せと繁栄を願い、此奴が笑む日々をただ願う。 そうだ、ただの利己だ。此奴

    • 竹鶴17年

      雪に触れた指先から懐古の情が溢れ出すような。 頬の上を滑り落ちる涙が、外気に触れて冷えゆく夜。 私が生まれ育った土地は、冬ともなれば腰丈にまで積雪が成るような雪深い土地だった。 白銀というよりは、灰混じりの白が視界を覆い尽くすような世界。 天地の境を無くした世界はどこか寂しげで、吹雪く風が肌を刺すだけの、侘しげな土地ではあった。 でも私は知っている。 朝日に照らされ鈍く輝く雪の美しさを。 冷えた身を囲炉裏であぶる安心感を。 肌を刺すのは寒さばかりで、人の心は温かいことを。

      •  盆にはご先祖様が精霊馬に乗って現世に御帰りになられるからねと、足に見立てた割り箸を茄子や胡瓜に挿しながら言う祖父の穏やかな横顔を、未だ鮮明に覚えている。  数年前に事故で亡くなったおじいちゃんは、本当にあの茄子とか胡瓜に乗って帰ってきているのだろうかと、盆になると毎年思う。  長年の農作業の賜物とも言える、まるで野球で使うグローブみたいに大きな手指は、細やかな作業が得意ではなかったらしい。やけに足の短いような、ずんぐりむっくりでちょっと不恰好な精霊馬を毎年苦笑いしながら作

        • 酔っぱらいの戯言

           朝焼けの滲んだオレンジの街に、あぁなんて綺麗なんだと、足は止めても涙は止めることが出来なかった。 夜の街に集う夜光虫みたいな、よく顔も覚えていないようなあの人たちはどこへ行ったのだろう。 アルコールと、燻る紫煙の匂い。 食品と吐瀉物と、すれ違った人の香水の臭い。  明かりの灯らぬ道は静かに息を潜め、看板の降りた店はそこに存在すらしていなかったように身を隠す。 まるで摩天楼のように艶やかな街は、柔らかな朝陽に覆われてどこかへ去ってしまった。  始発、未だ人もまばらな電車