7年分の同人誌を自炊した話のおぼえがき
突然だが、私の部屋は物で溢れている。
半分は衣料類や雑貨や画材。そして、もう半分は同人誌だ。
7年近く、同人作家として活動してきた。そして、買い手としてのスタイルはというと、同ジャンルの島中全部買う。だった。
あたりまえに、部屋は同人誌だらけになった。
創作色の強いジャンルだったのもあり、別カプ同カプという概念があまりなかったのもあるだろう。
しかし、転機が訪れる。
家庭環境の変化を機に、実家を出ることになったのだ。
これは、同人誌を自炊したいと考える人に向けての覚え書だ。
①手順
まず、自炊するにあたって必要なもの。調べたところ、自炊代行業者などもいるようだが、法的に少し怪しいところもあり、後ろ暗いところのない自分で裁断しスキャンする方法をとった。
まずは裁断機とスキャナー。
これは
rentio(https://www.rentio.jp/?utm_campaign=check_return&utm_medium=email&utm_source=rentio)
というサイトを利用した。ネットで調べたところDMMが評判が良かったが、ここを利用した理由は明確だ。ここなら空いていたからだ。
機材をレンタルするにあたって、一番重要なのはスケジュールが合うかどうかだ。本の山を置けば勝手に電子化されるなんて虫のいいことはない。結構な作業が必要となり、また日数ごとに料金が加算されていくため、できるだけ短い日数で仕上げる必要がある。
また、配送方法や機材の状態なども、ネットでレビューを見たほうがいい。この rentioさんは問題なかったが、良くない業者もきっとあるだろう。
そして、10日間電子書籍化用スキャナと定番の裁断機セットというものを借りた。
裁断機はDC-210N、スキャナーはFI-IX500Aという型番のものを借りた。
まずは裁断機。これはローラーカッターをスライドさせるタイプにした。
同人誌は薄い本とも呼ばれるし、こちらのほうが安い。しかし、この判断はジャンル特性によっては間違いなのだったが…
スキャナーは、事前の調査でドキュメントスキャナでないと作業効率的に厳しいということがわかっていた。普通のスキャナーがコンビニのコピー機のようにガラス板に一枚一枚読ませていくタイプであるなら、ドキュメントスキャナーは束をセットすると勝手に飲み込んで表裏読んでくれる。素晴らしい。ここは作業時間に大きく関わり、妥協しないほうがいいので型番をよく調べるべきだ。ドキュメントスキャナーのScansnapならアプリの使い勝手も含めてほぼ間違いない。
さて、ウェブサイトで申し込むと即座に機材が送られてくる。
箱は返送するときに使うので捨ててはいけない。しかし、結構場所を取るため箱の置き場所を考えておくべきだと感じた。
スキャナーの設定は簡単だ。
自宅にwifiが飛んでいるならば、スマートフォンと同じwifiに接続しアプリを入れるだけ。パソコンが用意できるなら、ケーブルで繋げばいい。
今回は、パソコンを運ぶのが容易ではないためスマートフォンを利用した。
保存場所はいくつか選べる。スマートフォンとアプリを使用する場合、クラウドストレージに保存することになるだろう。今回はgoogledriveを使用した。
さて、準備ができたら裁断だ。
同人誌の場合、A5あるいはB5サイズのことが多いだろう。気をつけなければいけないのは、ノドのところに糊があるため、ある程度背表紙から距離をとって切らなければならない。表紙の絵が切れてしまうが、それはやむを得ないだろう。
また、印刷会社や印刷方法によって糊の量は異なる。ページがくっついたままだと、スキャナーが詰まるため気をつけたい。特に、表紙と遊び紙の間の糊は幅が広いことが多かった。本文が切り離せて安心していると、遊び紙が詰まる。これには手を焼いたため、ほとんど遊び紙は剥がしていた。
厚みは、おおよそ40ページから50ページくらいの同人誌なら数往復で裁断できた。ただ、それ以上になると力をかけるか、手で背表紙を裂く必要がある。これが私が全てを電子化し切れなかった理由だ。
いわゆるギロチンタイプ、上から刃が降りてきて裁断するタイプの裁断機ではおそらくこの悩みはないだろう。ジャンル柄分厚い同人誌を発行する作者が多かったため、引き裂く時間と労力を天秤にかけ、分厚い再録集やアンソロジーは自炊を断念した。
スキャン作業は原稿を置いてボタンを押すだけだ。途中動作が止まったりすることもあるが、作業中ランプが点灯している間は放っておけばそのうち読み出す。しばらくするとスマートフォンにデータをアップロードした旨の通知が来る。簡単。データは形式が選べるが、今回はpdfにした。
あとはこれを繰り返すだけだ。読み取り作業中に裁断をしていると効率的だろう。より効率的にするために、本のサイズごとに分けておくと裁断機とスキャナーの幅調節をひんぱんに弄らなくて済むだろう。
また、袋とじのコピー本や買った時に挟んだペーパーやポストカード、しおりなどには注意が必要だ。幸い深刻な詰まり方をしたことはなく、すぐに取り除けたが、レンタルしたものが故障することを考えると怖い。
こうして、1日3、4時間を目安に10日間作業をした。
データ数はおおよそ500件。この中には分厚かったため複数回に分けてスキャンしたものもあるため、本としては400〜450冊ほどだろう。
裁断し終わった本は感謝を込めてダンボールに詰め、同人誌専門の古紙改修業者へ送った。今回は以前もお世話になったエコサリオ(http://e-sario.com/eco/)を利用した。ここは、送料のみ連絡不要で送付しそれで完結するのがよい。
段ボールにして8箱、送料は9千円ほどかかった。
良かったこと
・作業をしながら思い出に浸れた
もう何年も開いてない同人誌も数多い。裁断し、一枚一枚スキャナーから出てくるところを眺めていると、面白かったことや好きだったことが思い出されて嬉しい。
・紙の本の劣化を防げる
作業をしていて、なかには埃っぽくなっていたり劣化しているものもあった。目に見える劣化は見えずとも、作業をしていて喉の痛みなどを少々感じたので、これが何年も家にある状況はやはりいいとは言えない。
・同人誌を買う勇気が出る
ここ何年かは、置き場がないことを理由に同人誌購入を躊躇っていた。しかし、定期的に電子化するのであれば、購入に踏み切れるものもあるだろう。
反省点
・分厚い本を処理できなかった
一部は手で割いて電子化したが、やはり労力が厳しい。
アンソロジーなどはまだ紙の媒体のまま残っているため、再び作業する日が必要だろう。
・作業スペースをかなりとる
今回は一部屋を占有し、同人誌と機械を広げていた。処理済みの段ボールも次第に場所を取り始める。紙屑も散るため、長期戦は向かない。
かかった料金としては、10日間の機材レンタルで10480円、廃棄の送料が約9000円といったところだ。これを安いと取るか高いと取るかは人によるが、参考としてほしい。
最後に、スキャン後のpdfデータのよい管理法を探しています。莫大な容量を管理でき、作者やシリーズでタグ付けができるような管理法をご存じの方がいましたら、コメント等で教えていただけると助かります。
それでは、よい自炊を。