Brian Eno "The Ship"再現ツアー in Utrecht, Netherland 2023/10/28
前回から間が空いて、まだ夏休みのライブ記録も書いてないのだが、Brian EnoのThe Ship再現ツアーがあまりにも良すぎたので、これだけ先にライブ評を書いておくことにした。
Bran Enoの簡単なBiography
イギリス人のミュージシャンで、元Roxy Musicのキーボーディスト。今は言わずと知れたアンビエントミュージックの第一人者。Bowie好きな私はもちろんLow, Heroesのプロデューサーということで知ったわけだが、もう少し年代が若いとU2やColdplayのプロデューサーということで有名。ちなみに、Windows 95の起動音を作ったのもBrian Enoである。
ちなみに私が一番好きなEnoのアルバムはこちら。Music for Airportsは衝撃を受けた。何かしている時に聞く音楽として全く邪魔にならない。BGMとして完璧なのである。
Eno、初めてのソロツアー(欧州5都市のみ)
今回は"Venice Biennale's Golden Lion for Lifetime Achievement"という賞をEnoが受賞するにあたり、Venice, Berin, Paris, Utrecht, Londonの5都市で初めてのソロツアーをやるということになった。75歳にして初めてのソロツアー。今までツアーがあったことは何度かあるが、数年に一度、弟や他の人人と一緒にという形態が多く、ソロツアーをやるのはこれが初めてだという。今回はBaltic Sea Philharmonicと一緒ということで厳密にいうと、ソロではないのだけれど。
このライブが決まった時に、直感的に「これはいかねば!これが最初で最後のソロツアーになるはず!」と思って、速攻チケットだけは押さえてしまった私。仕事が忙しいのでなるべく休みはとりたくなく、とりあえず1泊3日の弾丸オランダ渡航を決めてしまった。
では、早速、ライブの様子について。
オランダの会場はユトレヒトTivoliVredenburg
TIvoliVredenburgという会場で、小さなコンサートホール。約2000席ほどだったが、ほぼ満杯だった。
私が会場に着いたのは30分ほど前。隣のモールの中にあるホテルに宿を取っていたので、すでに下見済みだったため、開場は2時間前だったけど、その時間に行ってもしょうがないと判断したため。
物販もちゃんと売ってた。Use an old Ideaと書いてある黒いTシャツを買った。他にも、もう1枚I'm a painter of musicって書いてあるやつもあってマヨたんだが、Use an old Ideaが気に入ったのでそちらを購入。襟足にBrian Enoって書いてある。
物販購入後、すぐにライブ開始。オランダ人は体がでかいので見えなかったらどうしようと思っていたが、ステージが少し高くなっていたので、とりあえず見えた。私は舞台中央アリーナ5列目の絶好ポジションだと思ってたのだが、私のところからではEnoが指揮者に隠れることが多く、指揮者が動き回ってくれてたので、半分くらいは見えたという感じ。
コンサートの様子
オーケストラが入場。
Eno先生、とうとう歌い出す!
The Shipのところでも盛り上がるところっ!
I set freeを聞いたら号泣すると思っていたけど、何か優しいものに包まれてしっとりと泣くという不思議な感覚に襲われた。こんな気持ちになったのは初めて。
この流れからのBy This River!
一転、Who Gives A Thought
And Then So Clearも綺麗だったなぁ。
この日急遽追加された曲Bone Bomb
よく撮れてる写真を数枚。
10/28の公演のセットリスト
感想
全体は約1.5時間ほどの公演だった。前半はThe Shipの世界観が空間に表現されており、まるで海の中を漂う船の中にいるかのような感覚で360度音に包まれている感覚だった。Las VegasでU2がSphereでimmersiveな体験を提供しているのとは全く違う方向のimmersiveな体験。目ではなく、耳だけを使ったimmersiveな体験とはこのことを言うのだと体感した。むしろ、目ではなく耳(=三半規管)で人間は空間を捉えている割合の方が大きいのではないかと思うくらいだった。これに一役買ったのがオーケストラ。もちろん、電子機器やスピーカーの配置がその音像環境を作り出すのに寄与していることは言うまでもないが、オーケストラの奏でるサウンド、特に指揮者のクリスチャン・ヤルヴィのEno楽曲の解釈、指揮は素晴らしい。もちろん、Enoが監修してるわけではあるのだが、Enoがつくる電子的な音像環境に匹敵する、いやそれを上回る環境をオーケストラで作り上げたのは感服に値する。
この日の直前、イスラエルがガザへの攻撃を強め、Enoはステージ上で国連職員の知り合いから来たメールを読み上げた。Enoは常に音楽家として、思想家として、政治的なメッセージを発し続けている。音楽家が政治に口を出すなんてという日本人も多いけど、私は元々主義主張を通す手段が音楽だと思っているので、こうやってアーティストが姿勢を示すことは重要なことだと思っている。決してイスラムVSユダヤの宗教の戦争ではない。イスラエル国外のユダヤ教徒がガザへの攻撃への非難の行動をとっていたりもする。戦争をするのは戦争をしたら得な人間がしているだけなんだ、とEnoは力説した。このライブより前にはBone Bombは演奏されていないのだが、Utrecht公演から追加された。自爆テロを行うパレスチナの女の子を題材にした曲だ。なんという皮肉だろうか。
この1.5時間の間にものすごく多くの経験ができたと思う。でも、それはなかなか言葉にできない。音が体を包み込む感覚。これがEnoが体現するAmbient Musicなのだ。本当はもっとEnoのライブを生で聴きたい。日本のみんなにも体感してもらいたい。もう75歳なので来日はなかなか叶わない気がするが、Ambient Kyotoを実施したこともあるので、頑張って呼べばどうにか来てくれるんじゃないかという望みも捨てられない。Enoは多作で、今でも新しい楽曲を次々と生み出している。今後にも期待したい。
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