俳句の鑑賞《74》
季語:暖か(三春・時候)
春のあたたかな日差しの中、川べりを散歩している作者が見えます。
三段切れは、敢えての手法と思われます。あたたかさの余韻の中、川面にいる鷗、岸にいる鳩、と読み手の視線は、瞬きをするように切り替わります。鳥の動きとも連動しているよう。
都会(荒川、墨田川など)でもよく見かける鳥たちが、主役。普段の生活の中の、ちょっとしたゆとり時間。
読み手の私、そのような昼下がり、お弁当をひらきたくなります。
季語:春の風(三夏・天文)
一句目の、鷗・鳩に続き、こちらには雀。(前回の鑑賞でも、鳩と雀がでてきました)
三脚、カメラなどを支えるための三本足の台のことでしょう。
風景、を撮るために設置した三脚。その脚の間を雀がくぐります。
雀は、日本であれば、自然の中にも、都会の街中にもいるので、カメラがとらえようとしている被写体は色々に想像できますが、春の風に吹かれる中で、ちょんちょんと動き回る雀、そして、ふと足元に見つけた雀を見守る作者の景は、ほのぼのと。
やさしい時間の経過であります。
季語:捕虫網(晩夏・生活)
夏休みでしょうか。大きくて長い捕虫網をしっかりと持ち、虫かごを肩にかけている子ども。
そして、そんな意気揚々としている姿に憧れる、少し年下の子どもたち。だんだんと人数の増えてゆく、虫取り。少し昭和をも感じる、夏の景です。
もしかしたら、作者の子ども時代の姿なもかもしれません。
季語:汗(三夏・生活)
思わず、鼻の上に汗のつぶを浮かべていた友人のことを思い出しました。子どもは、それほど、懸命に集中して遊ぶのです。
「男の子女の子」という丁寧な措辞は、例えば、子どもたち、と一括りにしてしまうよりも、ひとりひとりの男の子、女の子、がしっかりと見えてきます。助詞で繋がない、三回続く、体言止めの効果も感じられます。
一句目の、捕虫網の句のより具体的な景なのかもしれません。真剣に虫を探す、清らかな瞳までもが見えるようであります。
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この「俳句鑑賞」も残すところ、あと四回となりました。
(今月末の金曜日が最終回です)
「南風」村上主宰と津川顧問句集の「俳句鑑賞」の経緯はこちらの記事に。
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