俳句の鑑賞㉑
季語:日盛(晩夏・天文)
日盛り、真夏の最も太陽が高い時間帯。それはそれは暑いはずです。そんな中、手紙を出しに行くのです。
出すべきか、出さざるべきか、最後まで迷った末、意を決して真っ赤な郵便ポストまで。
「ことりと」の措辞で、ぎどぎどの時空に、いっとき静寂が訪れたように感じられます。そして、手紙は郵便ポストの口から真暗な空間に落ちていきます。スローモーション。
再びの強い真夏の日差し。背筋の伸びた作者が、ポストから去っていく後ろ姿も見えるようであります。
季語:蝉(晩夏・動物)
実は私自身、蝉の尿を浴びたことがありません。ですが、想像は十分にできます。
蝉取りに勤しんでいる少年。木に止まっている蝉に捕虫網を念入りに近づけ、今だ!と被せた途端、蝉は飛び立ちます。尿を出しながら。
逃がしてしまった少年。顔を手で拭いながら悔し気に木を見上げ、その奥の空をも。ああ、なんて空は青いのでしょう。忘れられない夏の想い出。
夫に訊いてみたら、同じような体験を何度もしたよ、と笑っていました。
季語:あたたか(三春・時候)
柔らかいカステラを手で割っていただくときの、あの手のかたち。
やさしく丸めた十本の指と、手の甲。
やわらかな春の陽射しに包まれた、しあわせな光景が目に浮かびます。あたたか、という季語が本当にしっくりと感じられます。
季語:花菜漬(晩春・生活)
花菜漬、これは小料理屋のカウンターに出されたお通しに違いない(笑)
お仕事お疲れさまでした、な、色の美しい花菜漬と白いおしぼり。「いつもの」ビールをそっと出す。
常連の客は、するするとネクタイを外す。そのネクタイの長さは、まるで、その人が戦ってきたその日一日の長さのよう。
ほっと力を抜いた男性が見えます。
完全に女将目線ですね、妄想しすぎました(笑)
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「南風」村上主宰と津川顧問句集の「俳句鑑賞」の経緯はこちらの記事に。
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