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俳句の鑑賞㉓


罌粟咲いて坂は淋しき名前もつ

村上鞆彦句集「遅日の岸」P.43

季語:罌粟けし(初夏・植物)

淋しき名前の坂、ってどのような名前?と興味津々。
取り合えず、東京の坂の名前を全部調べてしまいました(笑)
そして、怖そうな名前は多いけれど、淋しい名前は東京にはない、と知りました。(←追記参照)

「別れ坂」「涙坂」「ひとり坂」勝手に妄想しつつも、これだけ私が調べたり、妄想したりしてしまう力のある御句ってすごい。
実は、坂の名前は全く違った名前(作者にとっては淋しさを思い起こす名前)かもしれないし、表示すらないのかもしれません。

淋しい坂と感じたのは、あの光の加減によってはてらてらと輝く、薄い花びらの罌粟の花の魔力なのかも、とも思いました。

追記 : X(旧Twitter)で主宰にいただいたヒントで「淋しき名前」の坂は、東京不忍池から東京大学近くまでの「無縁坂」とわかりました。
超有名😅(見逃していたようです🙏)
ついでに、東京・府中市に「かなしい坂」という坂があることを見つけました(笑)


五月病草の匂ひの手を洗ふ

村上鞆彦句集「遅日の岸」P.43

季語:五月(初夏・時候)

五月病。気持ちがセンシティブになります。あれこれと小さなことが気になってもしまいます。
草の匂いのする手を洗う、恐らく、普段以上に念入りに石鹸をつけて、泡だてて。
それを俳句に詠むと、より草の匂いがしてまいります。

かつて、私も、生命力あふれる、あの若葉たちの輝きに、少々気持ちがついていけなくなったことがあったのを思い出しました。


狂ほしき犬の挨拶アマリリス

津川絵理子句集「夜の水平線」P.49

季語:アマリリス(仲夏・植物)

アマリリス、茎がしっかりとしていて、てっぺんに大柄な大胆な花を載せるように咲きます。存在感がとてもあります。

そのようなアマリリスが玄関に飾られている家。そして、自分を迎えてくれたのは、狂おしいほどに鳴くその家の犬なのです。
恐らく、作者を大歓迎してくれているのでしょう、アマリリスと共に。
とても力強い御句と思いました。


看板の隙間看板梅雨深し

津川絵理子句集「夜の水平線」P.50

季語:梅雨(仲夏・天文)

看板の隙間に、また看板があります。私は、細い路地の呑み屋街を思いました。
時は、梅雨の時期、しっかりと長雨が降っているのです。
小さな店が立ち並ぶ道は、湿り気とともに、裏淋しい様子がいたします。
独りでその道を歩いている景が広がります。


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「南風」村上主宰と津川顧問句集の「俳句鑑賞」の経緯はこちらの記事に。
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