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「南風・三月号」を読む。

俳句結社「南風俳句会」に入会したのが、昨年の三月の末。最初に南風誌を手にとってから、十二冊目になるこの三月号であります。

月一度の対面での「東京例会」(欠席投句のことも度々ありますが)、同じく月一回の夏雲システムを使った「メール句会」、今年初めの「新年句会・賀詞交換会」(大阪)に参加し、少しずつ全体の様子が掴め、同人の方、会員の方のお名前もだいぶ把握できてまいりました。
ということで、今月号から、各月の南風誌に載せられた俳句より、私の好きな句・気になる句を選び、記事にしていこうと思います。(村上主宰からの許可もいただきました)


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「南風・三月号」より、好きな句、気になる句。
(句順は掲載順、*=特に好きな句)


村上主宰「歳暮の下」十句より

抱けと泣く石蕗の花よりまだ小さく

リングノート引きちぎる短日の音

冬晴が雌蕊の蜜に映りけり

網棚の歳暮の下に目をつむる

松飾る明日より留守にする家に*


津川顧問「鬣」十句より

冬あたたか太字ペンより生まるる詩*

切り紙の紙よく回る冬青草

大人しく登校したる日の障子

アレクサは答ふるばかり冬薔薇

龍の字の鬣燃ゆる吉書揚


「雪月集」より(敬称略)

襟巻を取りて鎖骨に月の影      小野 怜

枝替へて囀りのまた始めから     岩渕晃三

祈る手はまた銃執る手ガザに冬*   井出千ニ

綿虫を虚空へ返す息ひとつ*     越智哲眞

本箱の文語の聖書冬ごもり      団藤みよ子

キュビズムや乱切りの人参に角*   藤川善子

人日やサックス甘く田に響き     阪本道子

ひたと閉ず禅堂冬の鵙猛る      上村昌美

冬あたたか張り子の虎が首振りて   池之小町

遅れ来し一羽にも餌冬日和      石川恭子

てのひらの錠剤こぼれ日短か     武田佐自子

秋晴や空港のある市に住みて     志貴春彦

早梅や大吉を引く胸騒ぎ       駒田弘子

下駄箱に夫と歩きしブーツかな    田村紀子

鉄塔の星を散らして空つ風      豊田麻佐子

寒晴れのドジャースブルー機影映ゆ* 赤川雅彦

エレベーター開き師走の客となる   小野義倫

抽斗のひとつが固し十二月      林 里美


「風花集」より(敬省略)

冬の蝿眠れる山羊の鼻動く      杉本康子

耳とほき人のほほゑみ栗きんとん*  今泉礼奈

デッサンの基礎は直線ラ・フランス* 岡原美智子

豆皿にけふの錠剤つはの花      中村幸子

老舗書店ビルごと失せぬ冬日向    桑原規之

豚丼に卵乗りたる賞与かな*     若林哲哉

狛犬の仔を抱きゐる落葉かな     新治 功

冬帽に真珠ひと粒一人旅       高畠桂子

シクラメン職員室に笑ひ声      郡山文惠

新米を胸から胸へもらひけり     岡辺 博

しぐるるや土の匂ひの葛根湯     野口憲子

薬待つ欠伸に潤む聖樹かな      太田美沙子

年用意漆器を包む布も古り*     石井朋子

母の杖に犬の噛み跡冬日燦      近常倫子

袋より突き出るごぼう日の短か    越智佳代子

書き込みにうなづく古書や返り花   宮地壽子

冬満月岩塩舐むる孕み牛*      和泉澄雄


「南風集」より(敬省略)

聖樹の灯消して売り場に薄き闇*   五月ふみ

寝るためのラジオ木の葉を雨が打ち  延平昌弥

冬蝿に壺がたふれてゐたりけり    板倉ケンタ

梟のかほ真中よりひらきさう*    ばんかおり

公園を食み出す影の枯木かな     菅井香永

昇降機聖樹の階を置いてゆく*    土井常寛

咳ひとつこぼれて美術館の床     陰山 恵

星空の定まっていく枯野かな     磐田 小

大根引く穴ぽこぽこと笑ひけり    雪岡久代

セーターや羊の毛は伸びただらうか* 久住智子


「摘星集・兼題、雲雀」から

雲雀野に薬師寺とうどおはしけり  赤城嘉宣

空に吹くトランペットや揚雲雀   吉川祥子

なかぞらも湖もあはいろ雲雀鳴く  水野大雅

鳴き声のふくらんでゆく雲雀かな* ばんかおり

遠雲雀刺繍はいつも一針づつ*   市原みお


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卯月紫乃 載せていただいた句

「南風集」
人参の出来損なひの土落とす
寒椿ふり忘れたる清め塩
緑青の生きてしぐるる蝶番
賽銭の音しづかなり大氷柱

「摘星集・雲雀」
履かせたるファーストシューズ雲雀啼く
みどり子の歯の無き笑みや揚雲雀

いただいたサポートは、次回「ピリカグランプリ」に充当させていただきます。宜しくお願いいたします。