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「宇佐美魚目の百句」を読む。

「宇佐美魚目の百句」より、好きな句、気になる句、二十五句選。


手袋の手を置く車窓山深み      『崖』

月の雨棗に色の来つつあり       〃

山羊の頭のしこる遠景障子貼る    『秋収冬蔵』

馬もまた歯より衰ふ雪へ雪       〃

夏花摘あるけばうごく山の音      〃

翔ぶものに空やはらかし余花の村    〃

日々水に映りていろのきたる柿     〃

箸とめてひとも一つ葉見て在るか    〃

顔に墨つけて洋々日永の子      『天地在問』

白昼を能見て過す蓬かな        〃

海の霧精霊ばつた濡らしたる      〃

田に人のゐるやすらぎに春の雲     〃

冷えといふまつわるものをかたつむり  〃

落葉して泉の顔の小さくなる     『紅爐抄』

この中の誰雨をんな竜の玉       〃

雪兎きぬずれを世にのこしたる     〃

春潮や墨うすき文ふところに      〃

大志ありて昼寝欠かさぬ人なりし    〃

初夢のいきなり太き蝶の腹      『草心』

巣をあるく蜂のあしおと秋の昼     〃

秋の夜のこぼれしままの水の玉     〃

この秋や鯛を波より抜き上げし     〃

雪解山描くに一本朱をつよく     『薪水』

美しきものに火種と蝶の息       〃

陽炎の立つやこの筆衰へし      『松下童子』

ふらんす堂、「宇佐美魚目の百句」より抜粋




     ・・・・・

山口昭男句集「木簡」を読んだ後、「シリーズ自句自解Ⅱベスト100 山口昭男」を読み、自分なりに思うこと・考えることがあったので、南風・村上主宰に教えていただいた、宇佐美魚目氏の句を読んでみることに。

句集はすぐに手に入らなそうだったので、取り敢えず、図書館から今回の本を借りてきました。

印象としては、作為がないというか、見えないというか、とても自然な作りの句が多く、なかでも、『秋収冬蔵』、『天地在問』からの句に、特に惹かれました。

それぞれの句集、いずれ読んでみたいと思います。

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