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父は愛人の家で死んだ。 僕は狼狽する女から電話を受けた後、その事実をひた隠そうと雨の中を奔走し、群がるマスコミどもを欺いた。残された一族のため、そして何より母の名誉を守るために、許しがたい父を最後に助けた。 長男の家で死んだと。妻も黙って協力してくれた。 時代が今であれば、とても隠しておくことなど出来なかった。 あれから二十年の時が流れ、一族はかつての輝きを失いつつあるが、悲しいかな、僕は未だに七光りと言われるほど、不本意に父の余光を集めてしまっている。 「お父
アレンとアデルは双子の兄妹として十五年前、王室で生まれた。ふたりの見た目は瓜二つであった。時を経るにつれ、ますますそっくりに、そして美しく成長した。互いの性の象を除いては。 ふたりはたびたび鏡の前に並んで遊んだ。 「私がお兄さまで、お兄さまが私みたいね」 「裸になればばれるさ」 「ふふ」 世話係が遊び相手を連れてきても、すぐにふたりきりになってしまう。 「ねえお兄さま。ロミオとジュリエットを読んでくださらない?」 アデルが草の庭に寝転びながら、アレンを見上げる。