刺したのは私【ショートショート/夏ピリカグランプリ】
ただの気のせいだなんて、どうしたって思えない。
バス停からずっと誰かに後を尾けられている気がしてならない。
こちらが少し速く進めば足音もそれに続き、緩めるとそれに倣う。思い切って止まり、後ろを振り返る勇気などあるはずもなく、かと言って急に猛ダッシュでもしようものなら、それをきっかけに最悪の事態にならないとも限らない。
少し遠回りにはなるけれど、これはもうあそこを通るしかないと思い立つ。
そもそもあの場所は、本当はあまり好きではない。人と人がぎりぎりすれ違えるくらいの狭いトン