【ショートエッセイ】洗濯機の中から見上げる

今の暮らしは幸せだ。結婚もしていてパートナーとの仲も安定。家族との仲も良好。友人にも恵まれ、対人関係の悩みはない。健康的な体型だし(最近ちょっと太ったのだけど、それはみてみぬふりをして)、週5で仕事もあって稼ぎがないわけじゃない。

でも不安なことはある。

実は転職に際して無職のの期間が一時的にあって、貯金はゼロだし、給料日までハラハラだ。なんなら給料日が来ても支払いや引き落としでハラハラは続くだろう。パートナーに頼らざるを得ない状況で、貯金のことを考えなくちゃどうのこうの〜、と偉そうに話していた自分が情けない限り。


仕事も、入ったばかりで今は皆優しいが、職場の人は特定の人の陰口などで盛り上がっているような、小さな世界。パート勤務で正社員登用される可能性もゼロじゃないよと面接時には言われたが、こんな職場で正社員として一生働くのは気乗りしないだろう。何より、こんな良くも悪くも田舎の小さな世界で、機械みたいに毎日同じことをして老いぼれるまで働き続けるのかと思うとゾッとする。

本当は憧れているのだ。ユーチューバーやブロガーや、フリーランスで好きな場所を旅しながら暮らす人々。自由な人々。私は今の暮らしから抜け出して、自分の理想の暮らしをしてみたい。今の私は洗濯機の洗濯槽に収まっているようなものじゃないだろうか。洗濯槽は生暖かくて、そこにいるのは苦ではない。けれど窮屈で、上を見上げれば抜け出せそうなのだ。なのに自分は抜け出すのが億劫で、抜け出す勇気が無かったり、抜け出したら不安定な暮らしだし・・・と、要は理由をつけて行動できずにいるわけだ。

彼らは好きな時に起き、好きな時に寝て、好きなことをして暮らしているのだろうか。実際は依頼された仕事の関係や、その他諸々の事情があったりして、必ずしもそうとは行かないのかもしれない。でもやはり、好きなことを仕事にできたらと夢想してしまう。

今、思いをだらだらと書き綴っているように、先日投稿したショートショートのように、好きなことを書いて、欲を言えば好きな絵も描いたりして、そうして大切なパートナーと、のどかに暮らしていけたらどんなに幸せだろう。

でも冒頭で述べたように、私は今の生活も幸せだと認識している。今の生活が不満でしょうがないわけじゃない。不満は自分の努力不足による部分のみだ。環境的には申し分ないくらいに恵まれているのだ。あとは自分次第、ということはわかっている。

だからこそ夢見てしまう。自分の努力で、上述したような憧れの暮らしをしている自分を。洗濯槽の外に出た自分を。

きっとさぞかし解放されたような気分だろう。

また陽が昇り、朝が来ればいつもの仕事と家事と、スマホでの娯楽に身を委ねる日々がやってくる。

どう暮らすか、自分次第なのである。

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