見出し画像

七草にちかのW.I.N.G.決勝敗退コミュは「彼女にとっての救いだ」と異論を唱えたい【W.I.N.G.感想】

 バンダイナムコエンターテインメントが提供しているアイドル育成&ライブ対戦ゲーム『アイドルマスター シャイニーカラーズ(THE IDOLM@STER SHINY COLORS以下、シャニマス)』に、新ユニット「SHHis」(シーズ)のメンバー・七草にちかがプロデュースアイドルに追加されました。

 ツイッター上では、にちかのプロデュースを始めたプロデューサーがたちが、W.I.N.G.のコミュを読んで、「辛い」「話が重い」などの感想を述べています。特にW.I.N.G.コミュは総じて「救いがない」という意見が多い印象です。この記事では、そうした「話が重い」意見に同意しつつも、にちかW.I.N.G.コミュを振り返り、決勝の敗退コミュは「彼女にとっての救いだ」と思うに至った理由を紹介します。

 ※本稿は大多数の意見に対し、『七草にちかのW.I.N.G.決勝敗退コミュは「彼女にとっての救いだ」と異論を唱えたい』と過激なタイトルで反論する立場ですが、決して「救いがいない」「話が重い」という視点を否定するわけではありません。物語を読んでいくうちに辿り着いた一つの考え方、捉え方として読んでいただければ幸いです。また本稿は予告なく改稿します。あらかじめご了承ください。

画像1

8つのコミュで構成される、にちかの物語

  現在公開されているにちかのW.I.N.G.コミュは全部で8つ。まずはそれぞれ簡単に振り返ります。

① 〈she〉
② grab your chance!
③ なみ
④ on high
⑤ may the music never end
※①〜⑤の間に各シーズンの敗退コミュ
⑥W.I.N.G.準決勝(前後)
※準決勝敗退コミュ
⑦ 決勝(前後)
⑧ <who> (決勝敗退)or そうだよ(優勝)

 ① ②ではにちかが283プロに所属するに至った経緯が、プロデューサーがにちかと出会ったときの印象とともに描かれています。

自己流で、素人っぽくて……平凡で
けれどアイドルが好きなんだろうなぁという憧れと懸命さに溢れていて────


画像2

 ほかのアイドルと違い、オーディションやスカウトで事務所に所属するのではなく、プロデューサーを監禁・脅迫して事務所に所属させろと迫る衝撃的なシーンに驚いた方も多いのではないでしょうか(余談ですが、書類を偽造した私の担当アイドル、ノクチル・福丸小糸と同じく、犯罪に近しい行為に手を染めるという意味では非常に親近感が湧きました)。

 ③は、にちかが憧れ、①のコミュで偽名の元ネタとして利用したアイドル、八雲なみの大まかな人物像が浮き彫りに。④は、にちかがなみに憧れるがゆえに、自分が誰か(=なみ、あるいはほかのアイドル)の模倣をしなければ、雑踏の中の一人でしかないと、特別な存在(=アイドル)ではないと自覚しながら苦悩する一面が見られる内容です。

 ⑤ではなみの模倣を続けるにちかに対し、プロデューサーが

アイドルでいるっていうのは(中略)八雲なみの真似をして‥…
できない、こうじゃないって‥‥苦しむことなのか?

という問いを投げかけ、憧れと理想、現実の狭間で苦しむ彼女に

‥…アイドルでいるなら、そのことに喜びがないと
じゃないと‥…アイドルでいられなくなるって思う

と、優しいくアドバイスを送ります。

 ⑥のW.I.N.G.準決勝では「自分がなみの模倣をしなければ、雑踏の中の一人でしかない」という思いがさらに、にちかを苦しめます。意識しなければ笑顔を作るのが難しく、自分の命運をプロデューサーに肯定されなければいけないほどで、その様子を見たプロデューサーに

……
優勝させてください‥…もう苦しまなくて済むように‥…
何度そう思ったか
わからないよ

と思わせるほど、精神的に追い込まれているのがうかがえました。

 そして⑦のW.I.N.G.決勝、ここで負けたらアイドルを続けられないという憧れと目標の喪失が、なみの真似をしても自分が雑踏の中の一人に過ぎず、特別な女の子には決して敵わないと突きつけられる事実が、そして自分が何者でもないと再認識させられる決定的な瞬間が訪れることへの恐怖が、にちかを襲います。そうした複雑な感情に打ち勝てるかどうかが、⑧の敗退か優勝かを分けたように思えます。

 W.I.N.G.で見事優勝を果たし、⑧のコミュそうだよに分岐した際、アイドルを続けられるのが確定にも関わらず、苦しそうな笑顔を浮かべているのを見ると、にちかはすでに限界ギリギリ(あるいはすでに限界を超えていた)と言えるのではないでしょうか。

“平凡”な女の子が200%の実力で魅せた、W.I.N.G.優勝までの道のり

 アイドルを続けるべく奮闘したにちかですが、簡単に振り返ったようにW.I.N.G.優勝までの道のりは決して楽ではなく、苦悩の連続でした。

 特にプロデューサーの評価は、これまで担当してきたアイドルのコミュと比べて、決していいものではありません。W.I.N.G.コミュの冒頭でプロデューサーに「平凡な女の子」と評されるだけでなく、物語全体で「平凡」というワードが頻出。この「平凡」という言葉ですが、デジタル大辞泉によると

これといったすぐれた特色もなく、ごくあたりまえなこと。また、そのさま

と記されています。つまりはアイドルとしてなにも優れた要素がない、という評価を決定付けられているのです。

 なにも優れた要素がない(=平凡)と評されたにちかですが、彼女は決して自分の「平凡」さに甘んじている訳ではありません。どうにかその事実から逃れようとなみを模倣し、自分なり考え、実行しています。

 現にプロデューサーは、そうしたにちかの姿勢を見て、⑤のコミュで

『平凡』な子にできる200%のことを、
にちかは見せてくれるよ

と述べています。

 W.I.N.G.では“平凡”ながら自分の実力以上の200%の力を発揮し、見事優勝したにちかですが、アイドルを続けるのであれば、今後は200%以上の力を出し続けなければなりません。

 それは優勝したときに過呼吸になってしまったときよりも恐らく辛い現実が待っているはずです。だからこそ私はW.I.N.G.敗退コミュ<who> に分岐し、アイドルを諦めるという選択肢が「彼女にとっての救いだ」と思えてならないのです。

 決勝に敗れ<who>に分岐しにちかが

もう‥…
自分がなみちゃんでもアイドルでもないって————
思わなくってすむんだもん

と言うように、アイドルを目指さなければ、アイドルを模倣し、くすんでなにかのコピーを続けなくてもよくなり、そうした呪縛から間違いなく開放されます。また自分が持てる力の200%以上のことを常に求められずに、一人の“平凡”な女の子として穏やかな日々を過ごせるはずです。

終わりに

 自分が言いたいことのために大分細かい点を省きました。七草にちかのW.I.N.G.決勝敗退コミュは「彼女にとっての救いだ」と異論を唱えたいとは言ったものの、彼女の物語はこれからも続くのは明白です。

 ノクチルが天塵コミュで誰も自分たちのことなんて気に留めていないような、小さな小さなステージで、アイドルの道を走り始めたように、にちかもまた今後の追加のコミュで、自分自身の「平凡」さ、そして憧れのなみの真似で「くすんでなにかのコピーになる」と評された事実を向き合うことになるでしょう。

 そのとき、283プロの8番目、緑色のユニット「SHHis」(シーズ)としてデビューしたにちかが魅せる輝きは、私たちプロデューサーにどのような景色を見せてくれるのでしょうか。

この記事が参加している募集

コンテンツ会議

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?