見出し画像

福丸小糸の圧倒的成長 知れば知るほど“沼”にハマる彼女の魅力を語らせてくれ【福丸小糸GRAD感想】

 2020年4月20日にノクチルメンバーのプロデュースシナリオ「G.R.A.D.編 ―Grand.Repute.AuDition.―(以下G.R.A.D.)」が追加されました。ノクチルメンバーのG.R.A.D.出場から優勝までのシナリオを読み終えたのですが、アイドル活動を始めて約一年の経過とともに変化した、ノクチルメンバーのスタンスの違いがはっきりと描写されていました。特にユニット内で変化が大きく、成長を感じられたのは、福丸小糸で間違いないでしょう。もしかすると、これまで登場してきたキャラクターの中で一番かもしれません。

 本稿では浅倉透の顔面の良さと、ノクチルのユニットコンセプトに惹かれたものの、コミュを読み進めていく中で“小糸沼”から抜け出せなくなった筆者が、小糸のW.I.N.G.からファン感謝祭、そしてG.R.A.D.優勝までの道のりを簡単に振り返ります。

「幼なじみと一緒にいたい」がアイドル活動のきっかけ 福丸小糸の小さな一歩【W.I.N.G.編】

 W.I.N.G.編はアイドル活動を始めた小糸の成長の物語です。「“特別な”幼なじみたちとの時間を少しでも長く共有したい。そして自分も特別な存在でいたい」という思いから、283プロダクションの門戸を叩いた小糸。活動当初は自分が「どのようなアイドルになりたいのか」おぼろげな像すら描けていなかった彼女が、W.I.N.G.優勝の果てに「居場所のない人の居場所になれたら」という目標を立てたのが大まかなあらすじです。ここから小糸のアイドル活動の小さな小さな一歩が始まりました。

誰かの居場所を作るつもりが自分の居場所を作られていた 【ファン感謝祭編】

 「ファン感謝祭」は応援するファンのために283プロダクションのアイドルがそれぞれのアイデアを持ち寄ってライブを開催するというもの。小糸はファンから送られてきた手紙のお礼に、ライブ中ファンの前で感謝の手紙を読み上げるという企画を立ち上げ、見事実行します。

 手紙は、W.I.N.G.編で「誰かの居場所」を作ると決めた小糸が、ファンにアイドル・福丸小糸としての居場所を与えられていると気がつき、ノクチルメンバー、そしてファンと一緒に、これからも楽しい時間を過ごしたいという想いがつづられていました。

 手紙を読み上げる姿は、「幼なじみと一緒にいたい」と軽率に思える理由から活動を始めたアイドルではなく、駆け出しながら“一人前”のアイドルの片鱗が見えたように感じます。

「誰かの居場所を作るアイドル」になるにはどうすればいいのか【G.R.A.D.編】 

 小糸はW.I.N.G.編で「目標を見つける」というアイドルとしての小さな一歩と成長を、そしてファン感謝祭ではユニットで催しについて意見を出し合い、メンバーとの結束を高めるとともに、アイドルを続ける上で欠かせない気づきを学びました。そうして一歩一歩、少しずつ成長している小糸。

画像1

 G.R.A.D.編はW.I.N.G.編と同じようにアイドルの成長を描いたものですが、もう一歩踏み込んだ内容でした。一言で表すならW.I.N.G.編で立てた目標をどのように達成するのか、またその過程を再考するものです。

 物語はプロデューサーと小糸はG.R.A.D.出場にあたり、アイドル活動のPRを計画して実行するものの、齟齬が生じてしまうというのが中盤までのあらすじ。冒頭、プロデューサーは小糸に「G.R.A.D.に向けて練習する様子をSNSに載せてPRをしよう」と打診しますが、小糸はPR方法に納得がいかないような様子が描かれています。

 W.I.N.G.編とファン感謝再編を見た読者の方であれば理解していただけると思いますが、小糸は自分が努力する姿をフォーカスされるのが得意ではありません。

 小糸の周りにはなんでもこなせてしまう幼なじみ(=ノクチルメンバー)がいて、そんな彼女たちといるために努力を重ねてきました。小糸にとっての努力とは、皆と比べて劣る部分を補い、どうにか対等な立場になるための手段であって、決して武器(PRの材料)にはなりません。また不完全な自分を見られたくない、劣るからこそ一定以上のクオリティを担保してファンに見せたい……という彼女なりのポリシーが壁となり立ちはだかります。

画像2

 小糸がPR活動に対してとやかく言えるほどの実績があるのかというと、そのようなことはありません。ユニット以外のアイドル活動に目を向けてみると、オーディションに受からないだけでなく、これといった仕事も特になし。実績がないならないで自分のポリシーを捨て置き、中途半端でもいいからその過程を見せ、実績の一要素にしなければならないのは明白なはずです。しかし小糸は、『頑張ってる』ところを見せないとダメなことはきちんと理解した上で

わ、わたしは……下手くそでかっこ悪いところを全部、みんなにさらけ出して
それでもこんなに頑張っているんだって、……それがわたしの良いところなんだって
そういうことを、ステージで言えるほど、まだ……強くは、なれそうにないんです

と告白します。自分が努力をする姿を見せられないのは決して自分のポリシーの問題だけではないのだと。

 くわえてプロデューサーとの対話で小糸は、どのようなアイドルになりたいのか考えたけれど、どうすれば目標を達成できるのかを考えていなかった。“何か”のために頑張りたいのに、親鳥が餌をくれるのを口を開けて待っているだけで自分はなにもしなかった。だから自分の得手不得手を理解してどうすべきか考えていきたいと決意を新たにします。

 そうして「誰かの居場所を作るアイドル」という目標に近づくため、「G.R.A.D.優勝」を掲げてプロデューサーとともに再び走り出した小糸は、宣言通りアイドルの頂点に輝きます。

 優勝後「何かが変わるってわけじゃ無いかもしれないけれど、ほんとうに今までと変わらないですよね」と劇的な変化はないと思いつつ、心のどこかでほんの少し期待していた小糸。しかし彼女が望んだ変化はテレビ局のディレクターの認知によって現実のものとなり、今後のアイドル活動に期待がもてそうな最後で物語が締め括られました。

福丸小糸は今後も悩みながらアイドルとして歩み続ける【総括】

 本稿の冒頭で述べたように、透の顔の良さに惹かれて『シャニマス』を始めましたが、W.I.N.G.からファン感謝祭、(間に2nd、3rdライブ観賞を挟んで)G.R.A.D.の物語を読んで一番ハマったのが福丸小糸でした。

 幼なじみと一緒にいるために始めたアイドル活動を通して、アイドルになりきれていないノクチルメンバーの中で、早々にアイドルの自覚が芽生えたように思います。またそれぞれのスタンス、弱み、課題などが浮き彫りとなったG.R.A.D.編での成長が著しかったのは、やはり小糸ではないでしょうか。

 そうした姿が彼女の魅力なのですが、語る上では小糸役の声優・田嶌紗蘭ちゃんの成長にも触れなければなりません。少しだけ抜粋すると2ndライブの1日目に「いつだって僕らは」の歌詞が飛んでしまい、言えなかったシーンがあるのですが、2日目はしっかり歌い切った上にとびきりの笑顔とガッツポーズで配信のカメラからはけていく姿が本当にいい。3rdは画面に映し出されるときは常に笑顔で、トーク中のちまちました動きはまるで福丸小糸というキャラクターがそこにいると錯覚してしまいます。ゲームだけでなく、紗蘭ちゃんがライブで歌って、踊って、話している姿を見なかったら福丸小糸というキャラクターにハマらなかったと断言できます。小糸と紗蘭ちゃんはいいぞ。

 さて、話が少しズレてしまいましたが、幼なじみが全てだった小糸の“セカイ”が、アイドル活動を通じて広がり続けるのは明白です。今後も迷い、ときにプロデューサーに寄り添われながら、一歩一歩成長する姿が目に浮かびます。願わくは小糸のアイドル活動が実りあるものになるように願いを込めて本稿の結びとします。ここまでご覧いただいた方、長々とありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?