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江國香織 『つめたいよるに』 を読んで

とても優しい、短編小説だった。


僕は、小説が好きだ。

中学生だったころ、学校の図書館に通いつめた。

部活(卓球部)が終われば、疲れた脚を引きずりながら、本屋に入った。

それくらい、好きだった。

何かを求めているかのように、いや、何かから逃げているかのように、僕はとにかく本のある場所に向かっていた。

そのころから、いつも決まって、長編小説を読んでいた。

小説に出てくるたくさんの登場人物たちと、できるだけ長い間一緒にいたかった。


そんな僕が、この『つめたいよるに』を読んだ。江國香織さんの、短編小説だ。

一週間前、書店の中を歩いていたとき、ふと目に入ってきた背表紙。いまの自分にピッタリと合致する何かを、強く感じた。


短編小説というジャンルの本は、以前にも読んだことはあった。

でも、「物語の流れに乗ってきたな」と感じるときには、もう話が終わってしまう。その感覚が、あまり好きではなかった。一つの物語と長く付き合っていたいという願いが、僕の中にはあったのだろう。


だけど、『つめたいよるに』は、一味も二味も違うのだ。

綴られた一つひとつの物語は、独立しているようで繋がっていて、でもやっぱりそれぞれの色があって、読み進めるたびに引き込まれる。

いままでに味わったことのない、不思議な感覚だった。

手元にずっと置いておきたい。いつまでも側にいて欲しい。

そんな想いを抱かせてくれる、素敵な本だった。


最近疲れている方や、悩みがある方、元気が欲しい方、勇気づけられたい方、そのほかいろいろな方々に、ぜひ手にとって欲しいと思う一冊だ。


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