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「地歴部」

「地理」+「歴史」で「地歴部」だと思う。

高校時代、担任の先生が考古学を専門とする社会の先生だった。

いつの頃からか、エジプトの遺跡発掘とか中国の兵馬俑の遺跡とかに興味があった私は、(自分も遺跡発掘とかしてみたいなぁ)と密かに思っていた。

高校入学後、考古学を専門とする担任の先生が「地歴部」の顧問でもあったことから、友人と二人早速加入したのだ。

思い出すのは、学校の前にあった田んぼで文化祭の展示用に自分たちの作った縄文土器・弥生土器もどきを野焼きした時のこと。

”ドッカーン!!、ドッカーン!!”

あ~、まただぁ。みんなから、落胆の声が漏れる。

縄状に細く伸ばした粘土を、渦巻き状に上へ積み上げて作る土器は表面を滑らかにする際に、粘土と粘土の隙間の空気をきちんと外へ押し出しつつ、整えないと焼いたときに内部に閉じ込められた空気が膨張して、土器が破裂するのだ。

火が消えた田んぼにみんなで、ドキドキしながら向かう。

あ~、俺のだぁ~。。。部長が情けない声を出し自分の作品の破片を掴む。

?ということは、部長、今年文化祭に展示する作品がないんじゃ。。。。

という夏を、何度か過ごしたことを思い出す。


もう一つの鮮明な記憶は、「発掘調査」だ。

市街地の造成の際に、どういう経緯か不明だが、実際の建設工事が始まる前に、時折試掘の様に調査を行うことがあったらしい。その折、専門家のわが顧問にも連絡があったのか、私たち高校生にも経験をさせてあげようという配慮からか、発掘のお手伝いをさせてもらえることがあった。

本当にワクワク、ワクワクしながら軽快に自転車を漕いで、現地に向かった。

何にもない、地面が広がっていた。

最初にどうやって掘るかの説明を受けた。「少しづつ掘っていくと、地層の色が変わる所があります。そこまでいったら、横に広げていきます。同じ色は同じ年代ということになります。」みたいな簡単な説明で、「じゃぁ、やってみて」みたいな感じだったように思う。

スコップでそろそろと土をどかす。「掘る」というよりどちらかというと「削る」に近かった。そっと、削る。ブラシのような刷毛を使う人もいた。

自分が想像していた発掘作業は、どんどん掘っていくと突然色の違う層が出てきて、「カツンッ!」みたいなぶつかるイメージだったのに、色の違う層は「明らかに」違うことも「カツンッ!」て音も立てることなく、そっと現れた。そっと、だったのだ。まぁ、考えてみれば風や雨に運ばれたり、山が崩れたりすることもあっただろうけど、人の営みの中でブルドーザーで山から砂や土を持ってきて埋め立てる、なんてことは数十年前からの事で、少しずつ体積したものがとんどん積み重なっているだけなんだと改めて知った。

「出ました~!!」何日も炎天下の中で作業を黙々と続けていたある日、一緒に作業をしていた人が、声を上げた。

みんなで声の主の方へ向かうと、甕棺みたいなものがあり、素人の私たちにもわかる人骨が入っていた。本当に、びっくりした。出たのだ。

1週間くらい作業をしている中で、そういう「大物」や「遺構」を見つけることはほぼ無く、土器の破片すら見つかることもなく淡々と毎日が過ぎていった。そう、恐らくそういう毎日が圧倒的なのだ。

私に残ったのは、その甕棺に入った人骨発見ニュースの衝撃と高校のジャージのすそとソックスの間にわずかに出来た隙間の「日焼け」だった。

「発掘日焼け~!!」とクラスメイトに笑われた。「部活の想い出」といえば、彼女の大笑いした顔とその声を鮮やかに思い出す。





一人の時間にぼんやり考えたことや、クスっと思い出し笑いしたこと、こそっと誰かに話したい事をここで紹介しています。いつか「読むクスリ」みたいな本になったらなぁと野望を抱いております。その時のために、それはそれは有難くお受けすることにしたいと思います!どうも有難う!