見出し画像

はじめての怪談ライブ。“新感覚エンタメ”って言ったらダメですか? アイディアのタネ#15

「怪談界隈」なるものがあることをご存知でしょうか。

つい最近までの私を含む全くこの世界を知らない人は、もしかしたら、稲川淳二さんのような貫禄のある和装のおじさまが蝋燭だけを灯した薄暗い空間でそれはそれはこわーーい話をするようなもの(夏の怪談スペシャル的な番組など)を思い浮かべるんじゃないでしょうか。

集まる人もオカルト研究会的な、好き者の集いというか。かくいう私がそういう偏見をもって、自分には関係のない世界だと思い込んでいました。

でも、違ったんです。

もっと新感覚エンタメ、というか、敷居の低い、フレンドリーなものだったんです。

というわけで、私とホラー的なものとのかかわりは追って説明するとしてこの数ヶ月、いくつかの怪談ライブ的なイベントに参加して、目からうろこが落ちるように、怪談界隈の見方が変わり、全然知らない人にこそぜひ一度行ってみてほしいと思ったことをお伝えしたくnoteを書くことにしました。


1)何をもって「はじめて」かがわからなくなるくらい自由

■ 「ふつうの怪談イベントとは違うタイプの内容」と言われ続ける

本当はこの体験についてもっと早く記事にしたかったんです。

ところが。

去年くらいから怪談がきけるイベントに4回ほど参加してみたのですが、毎回、界隈の人のつぶやきをみると、「これはふつうの怪談イベントとは違う内容でしたね」的なことが飛び交っていて、「そうか、これをもって『はじめての怪談イベント』に参加したというのは違うのか」と思い直していました。

だんだんとわかってきたのですが、この新しい企画や切り口をどんどん盛り込んでお客様に新鮮な体験をお届けしようとするエンタメマインドこそが怪談ライブの最大の特長なんじゃないかと。

■ 始まりは怪談「も」楽しめる交流イベントから

そもそも私が初めて怪談をきいたのは「怖い感じの交流会」というサウンドデザイナーとして、ホラーサウンドレーベルを立ち上げたりなどしているJobanshiさんが主催するイベント。

サウンドインスタレーションの魅力にも最近目覚め、何か関連するものに行ってみたいと思い続ける中で出会ったものでした。

「ホラーファンによるホラーファンのための交流会!」と銘打たれており、ホラーといえば「ゲーム実況を少々」くらいしか嗜んでいない私が参加してもいいものか悩みつつ、怪談好きな友人を巻き込んで、超勇気を出していってみました。

そこで出会ったのが「おてもと」さんでした。

おてもとさんは、こんな人が怪談話すの?というようなポップな印象の方で、稲川淳二しか知らない私にはけっこうな衝撃。

そして怪談を話し出してびっくり。約30分ほどが一瞬!ですぎるおもしろさ。

「怖い」を提供したいのに、おもしろいって怪談師さんにいうのは失礼にあたるでしょうか。
「怖さ」はもちろんあるんですけど、それ以上に、お笑いとも違うそそられる魅力のあるストーリー展開に夢中になりました。

■ 雑談多めでもいい。たくさん笑えてもいい。怪談ライブの自由さ

そこから、一緒に参加した友人とともに、怪談を前よりも楽しめるようになり、おてもとさんが関わるイベントにいくつか参加してみることになりました。

・ゲスト呼んで怪談トークするタイプ

まず「東京魔シュランガイド」。こちらは「事故物件住みます芸人」として名を馳せる松原タニシさんをゲストに、おてもとさんと夕暮怪雨さんのユニット「テラーサマナーズ」が主催するイベントでした。

ちょうど別方面で同タイミングで松原タニシさんの「死る旅」が紹介されていて、購入したところでこのイベントを知りました。

私が行って大丈夫なやつなのかこれは、と思いつつも、これも何かのご縁かも、と参加してみることに。

内容は、ゲストのたにしさんにちなんで食べ物や不動産物件などに関する怖い話いろいろ。
トークテーマにあわせて雑談しているとふっと怪談が始まるタイプの構成でした。

3人のおしゃべりがベースなのでラジオをきいているみたいな楽しさがあるうえ、一つの怪異的な出来事を掘り下げていくことで「人が何かを恐怖する根源にあるのは何か?」みたいなことにずんずん迫っていく様子が楽しくて、経験したことのない没入感が得られました。

イベントの最後に演者さんたちの写真を撮るものらしい

・笑えて怖い怪談話などニューウェーブを楽しめるタイプ

そして直近みにいってきたのは「怪怪怪怪談!!ファイヤーボンバー」。

今回は順番に怪談を話すイベントなので、形式としてはなかなか定番なんじゃないかと思うのですが、お笑い芸人の方もお二人ほど参加されていて、めっちゃ笑った後にひってなる感じ、感情が忙しくてこれまた新しいエンタメ感。

怪談イベントに詳しい方によればこれも「王道ではなく、初心者の方でも気軽に参加できるタイプ」とのこと。

実際、「怖いのは苦手」と明言して逃げ道を確保していた友人を含めて参加したのですが、帰り道には、みんなで「おもしろかった」と興奮しながら語り合っていました。

また、お笑いも怪談も「話すプロ」ということは共通していて、意外とその境界はあいまいなのかもしれないとも思いました。

キャラが濃いイベントでした

・自ら参加できる怪談大会やオンラインイベントもある

ほかにも友人がおてもとさんをゲストに呼んで、素人の我々側からも「ぞっとする話」を披露する「怪談大会」をしたり、1年間の怪談イベントを振り返るトークや、ほかの人の怪談を別の人がアレンジして語るイベントをXスペースできいたりもしました。

事例だけ出しても長くなるのでこのくらいにするとして、「怪談」というか「怖い話」って企画力で多面的に活用できるんだなとここ数ヶ月本当に驚いてばかりです。(ついPRを仕事にする身としてはその活用方法を考え始めてしまいます)

2)「怪談」でつながる交流の輪

■ 怪談界隈の人、みんなX(Twitter)にいる

怪談界隈の人ってみんなXをメインツールにしているケースが多く、応援したい怪談師さんがいたら、割と近い距離で応援することができます。だいたいの情報収集も怪談師さんをフォローしていれば知ることができます。

どちらかが一方的にアイドルで雲の上の存在というのではなく、一緒に盛り上げていってる感覚になれるというか、この親しみやすさはとても魅力的なんじゃないかと思いました。
(私のような人見知りにとっては近すぎるとすら感じます笑)

■ 怪談界隈の人、多才で優しい

怪談という、抵抗感を持つ人の多いジャンルで企てをしている人たちの輪だからなのか、とにかく企画力が高く、また本業が別にある方が多いので、他領域でプロフェッショナルスキルを持つ方が多いのもこの世界が面白い理由の一つだと思います。

また、閉鎖的なコミュニティなのかと思っていたら、とにかくオープン。

時々「みんなご存知の〇〇さん」って紹介されても全然知らないこともあるのですが、基本的に新参者であっても、「どうぞどうぞ」と招き入れていただける感じがします。優しいです。

■ 怪談提供者になりたくなる

行ってみて知ったのですが、怪談話って創作よりも、実際にあった話をベースに話す場であることが基本的には多くて、怪談師さんは常に怖い話を収集しています。そこはほかの芸と異なる部分かもしれません。

そして、それまで怖い話とは無縁に生きてきたのに、人の身に起きた怖い体験をきいているうちに、自分の人生をふりかえって何かなかったかな、と思うようになりました。

ちょっと不思議だなと思って見過ごしてきたことをふと思い出して、怪談師さんに話してみたくなります。

これは実際にそうなってみないとわからない不思議な感覚で、そうなってくるとますますこの世界との距離が近づいたような感覚に陥ります。まるで自分もその輪の中にいるみたいな。

3)怖いものの消費のされ方は多様で普遍的

■ お笑いと違って怖いか怖くないかはわかりづらいから気が楽

演者さんにとっては困ることなのかもしれないですが、「面白かったら笑う」のが基本の「お笑い」と違って、いちいち怖いシーンで悲鳴を上げる必要もなく(出たら出たでたぶんOK)、素の状態で気を遣わずに聞けるのが怪談ライブのいいところだなぁと最近思います。

何を怖いと思うか、どのくらい怖いと思うか、怖いという感情をどう表出させるかって本当に一様ではないじゃないですか。

文化的な背景や育ち、性格等によってきっと変わってくると思っていまして。

「気にしい」でマイペースな性格の私にとってはお笑いより怪談のほうがそうした表現や求められる反応が自由であること、同調圧力を感じないことによって参加しやすいと感じます。

■ ホラーは普遍的な人気コンテンツ

そろそろちょっとだけ私と「怖いもの」の関わりについて触れておきたいと思います。全然読み飛ばしてください。

コンテンツジャンキーとして、楽しめるコンテンツを増やして人生を謳歌することをテーマとしている私にとっては「ホラー」は無視できないジャンル。何しろ数々の神話や絵物語にも「怖い」ものは登場し、1000年以上も前から世界中にコンテンツの基本構造として活用・愛好されているからです。

小さいころ、「学校の怪談」が大好きだったことはありましたが、それ以来、特段苦手意識もなく怖いものには触れてこなかった私。(しいて言えばエイリアン気持ち悪いとかグロいものへの抵抗感はありました)

そこから3年くらい前から一念発起してちびちびとホラーのインプットを始めました。

世界中で大人気のホラーの面白さを体感しつつその構造も知りたいと思って、「恐怖の哲学」や「大学で学ぶゾンビ学」のような本を読み、バイオハザードの一部や短編のホラーゲームなどの実況を見たり、ホラー映画好きな友達に初心者におすすめの5本くらいの映画を教えてもらってみたりしてきました。

2年くらいかけて最近ようやく、恐怖が面白いってどういうことかというのと、実際にバイオハザードなどのホラーゲームが世界的に評価されているのはなぜなのか?というのが実感としてもわかってきました。(これについてはまたどこかで書きたい)

怪談系のイベントに行ってみようかな?となったのはちょうどそのころですが、何が言いたいって本来、人はこういう怖いものをエンタメとして楽しめる素養をもっているんだと思います。

だから、好みの差はあれど、怪談を楽しめる心はみんなが持っている!!と思うのです。

■ アングラ感も残しつつライトに楽しめる入口を

たかが数回、怪談イベント行ってみただけでこんなに大仰に記事を書くのは、もしかしたら専門的に詳しい人を嫌な気持ちにさせてるかもしれず、、本当は超憚られるのですが。

今の感覚だからこそ、誰かに何か伝わるものがあればなぁと思いました。

そう、今のちょっとアングラ感のあるカルチャーもとても素敵なのですが、もっとライトな方でもはいりやすい道が作れたらいいなぁと。

たとえば、もう少し初めての人が自分の行きたいものを選べるような情報整理ができたらなというのと、ホラーに関しては、音楽や映画やゲームもいいものがたくさんあるので、そういったものの楽しみ方についても、インプットした内容を踏まえて考えて発信していきたいなと思っています。
そしてそのうちの一つに怪談も位置付けてみるとか。

また、怪談コンテンツはまだまだ盛り上がっていきそうですし、拡張性やコラボレーションの可能性が広そうなので、仕事でも何か面白いことできないかなと模索していきたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?