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酒井駒子さんの絵本と迎えるクリスマス

人気絵本作家・挿絵作家・イラストレーターである酒井駒子さん。その人気と素晴らしいキャリアについては今更言挙の必要もなく、読み聞かせのシーンを通して家族でファンになった!というファミリーも多いのでは内でしょうか?いよいよクリスマス直前、図書館員(新米だけど!)としてこの時期におすすめの氏の作品を2点ご紹介します。

①『ゆきがやんだら』(学研)

朝から絶え間なく降り続ける雪。保育園もおやすみになっておうちに閉じこもる「ぼく」は、いつもと違う日常にちょっぴりわくわくしながらも、なんとなくの不安もあって。雪のせいで帰宅できなくなった、パパのことが心配でたまらなくて――。そんな彼を見守るママの姿には、つい自分を投影しながら読み進めてしまいます。雪景色の世界は、見慣れた世界を目に見えるものだけじゃなく、心の中まで変えてしまう。大人になったら忘れてしまう、ささいなある1日のできごとかもしれない。けれど「ぼく」にとって、美しく、きらきらとしながらも、どこか寄る辺ない不安を運んでくる”雪”の日の記憶は、きっと胸の奥深くにずっと残っていくはずです。酒井さんの作品に特有な、家族の愛情、愛すべき日常と隣り合わせだからこそのひとかけらの”せつなさ”を、しんしんと寒さの増す中特別で温かいクリスマスの居間で、ぜひ楽しんでみてください。

②『よるくま クリスマスのまえのよる』

大人気作品『よるくま』の続編シリーズともいえる、クリスマス版です。「よい子のところじゃないと、サンタさん、こないのかなぁ…?」誰もが感じたことのあるちょっぴりの不安とわくわくと、胸いっぱいにかかえて眠りにつく、クリスマスの前の夜。そんな夜、大切なともだちの”よるくま”が僕のところへあらわれてくれて。――えっ、でも、よるくま、「クリスマス」のこと、知らないの? 大丈夫、よるくまはすごくよい子だから… 友達のため、自分のこともそっちのけで奮闘する「ぼく」の姿、ふたりの様子がとにかくかわいい。そうしてかけがえのない時間を過ごすうち、”ほんとうに大事なこと”に、気づいていく。子供だからっていつも前向きで、楽しいことだけが大好きで(親の苦労も知らないで――?)なんてことは絶対なくて、ふうせんのように壊れやすく繊細な感性をもちながらも、幼いからこその強さとしなやかさ、大切な誰かのために進んで行動することができる。子供と暮らしていると正直、その素直さがうらやましかったり、強さに励まされたり、自分が情けなることがしょっちゅうです。そんな複雑かつ繊細な世界さえ内包しながらも、眺めるだけでもホリデイ・シーズンのときめきとわくわく、幸福感を与えてくれる作品。この絵本を読むことで親子それぞれに感じることのできる温かさが、この冬いちばんのクリスマスプレゼントかもしれませんね。

(了)

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