たんぽぽのお酒
レイ・ブラッドベリの作品に「たんぽぽのお酒」という小説がある。
題名だけ知っていたその本の、たんぽぽのお酒が実在すると知ったのは、最近だった。
「青い眼が欲しい」という小説を書いたのはトニ・モリソンだが、それを読んでいると中程に、たんぽぽのワイン、という言葉が出てくる。
ご婦人がたんぽぽをつんでワインにしたりする、という。
たんぽぽのワイン、そんなものがあるのだ。
驚いて「たんぽぽ ワイン」と検索してみる。
スマホの画面は黄金色に澄んだ液体の画像をいくつも映した。
アメリカでは手作りする人が多いこの酒を、日本では通信販売している会社もあるようだ。
何十年も生きてきて、たんぽぽワインという言葉があることすら、私は知らなかった。
レイ・ブラッドベリの「たんぽぽのお酒」を読んだことはない。
題名だけ見て、内容はブラッドベリらしいSFか幻想小説かな、と考えていた。
「たんぽぽのお酒」という題名はきっと、空想の産物だと思い込んでいた。
しかし「たんぽぽのお酒」は、半自伝的ファンタジー小説で、主人公の父が一生懸命たんぽぽワインを作る場面すらある。
たんぽぽのお酒は実在する。
「たんぽぽのお酒」という言葉は知っていたのに、そんなもの存在するはずがない、と思っていた。
おかげで真実を知るまでに何十年もかかった。
現実は広いのに、思い込みで見えなくなっているものが、実のところ多いのかもしれない。
もしかしたら世界は、もっと面白い場所かもしれない。
それにしても、たんぽぽのお酒とはどんな味がするのだろう。気になってきた。
さっき読んだ記事によれば簡単に作れるそうだから、たくさん生えている河原へ摘みに出かけよう。
世界の可能性が広がったから、七月十四日はたんぽぽ記念日だ。