障害のある人のライフステージに起こりうる様々な問題とは?

1996年「不良な子孫の出生の防止」という条項が削除され、旧優生保護法が母体保護法へと姿を変えました。それと共に少しずつ、障害を持っていても当たり前の権利として子どもを持つ選択ができる時代へと世の中は変化してきました。

障害を持っていても子どもを持つかどうかを夫婦の選択で決めることができます。ですが、実際に障害のある人が子どもを持つ際にはいくつものハードルが待ち受けているのではないでしょうか?

今日はそのハードルにはどんなものがあるのかを、見ていきたいと思います。


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✓金銭的問題

出産~育児はお金がかかります。子育てをしていけるだけの収入があるかどうかは、障害の有無にかかわらず子どもを持つ上で重要になります。

子どもを持つために不妊治療等が必要になる場合は、それにも多額の費用が掛かります。

初めて不妊クリニックにいきお話を聞いたとき、心底驚きました。
最初の検査だけで5万ほど(!)かかり、そこから毎回受診のたびに万単位で飛んでいく…
幸いわたしたちは1度の採卵で5個受精し、2度目の移植で授かることができました。
それでも100万以上かかってます。
残りの受精卵は凍結しているので毎年凍結料としてランニングコストがかかっています。
もし採卵や移植を何度となく繰り返す…となるといくらお金があっても足りません。
早く保険が効くようになってほしいですね。(車椅子パパの配偶者Kさん)


✓遺伝の問題

疾病や障害によっては、子どもへの遺伝が懸念されることもあります。

「遺伝して同じ思いをさせるなら産まない。」「かわいそうな思いをさせるたくない。」という選択もあれば、「どんな病気か、どう対応すればいいかは十分わかっているし心づもりができてるから大丈夫。」「私は障害があっても楽しくいきれているからきっと大丈夫。」という選択もあります。

遺伝をどう捉えるかは、ご夫婦の価値観次第です。

遺伝の問題は本当に悩みました。病院で自分の疾患が子どもに遺伝する可能性は60%前後だと言われました。主治医から「60%を多いととるか、40%は遺伝しないととるかは夫婦の価値観次第だよね。色々言う人はいるけれど、産むのも育てるのも周りじゃない。」と言われ、吹っ切れました。たとえ遺伝していても、それがどういう疾患かはわかっているし十分対応していける。大変なこともあるけれど疾患は自分の一部でしかないから、子どもに遺伝しても何も変わらないなと思い産むことに決めました。五体満足に産まれても途中で障害や疾病を負うことだってあるんです。私たち夫婦は遺伝の可能性を、リスクが事前にわかっているかわかっていないかの問題と捉えました。結果、子どもに遺伝していましたが産むことを選択して良かったと思っています。(遺伝性疾患を持つHさん)


✓妊孕性の問題

男女ともに、障害により妊娠をのぞむことが難しい障害や疾病もあります。障害によるもの以外でも、妊娠能力の有無は大きな壁として立ちはだかります。

また男女ともに年齢によっても妊孕能力は大きく異なります。

夫が脊髄損傷による男性不妊で、妊娠することがとても難しい状態でした。不妊治療で初めて、男女ともに歳が上がるにつれ妊娠が難しくなると知り驚きました。睾丸炎や尿路感染を繰り返すことも妊孕性を脅かすと知り、将来子どもを望むなら、少しでも早く動き出すことが必要なんだなと知りました。そういう情報をもっと早く知ることができればよかったのにと思っています。(車椅子パパの配偶者 のりちゃん)


✓産めるかどうかの身体的問題

妊娠が可能でも、身体的な問題で妊娠継続が難しい場合や、出産が負担になり大きなリスクとなる場合もあります。

車椅子でも産めるよとは聞いていましたが、実際に産めるの?一体どうなるの?と不安でした。リハビリセンターにいる時に看護師さんに相談に乗ってもらったり、同じような障害の人の体験談を聞くことができ、やっと子どもを産むことを考えれました。もっとそういう情報が身近にあればいいなと思います。(車椅子ママKさん)

✓産院の問題

折角妊娠しても様々なリスクにより、医師から反対されたり、前例がない・設備がないなどの理由から、出産することに前向きではない産院もあるようです。可能な限り産みたい気持ちを尊重してくれ、専門知識を持った産婦人科医に会えるかどうかも大きな鍵になることがあります。

産院の問題検査薬判定で妊娠が分かり、まずは産婦人科へ。でも移り住んできた当時は、町のどこの産婦人科がいいかなんて知りもしませんでした。ネットで調べても、バリアフリーかどうかくらいしかわからないんですよね。車椅子の方がここで出産しました!なんて情報は、きっとなかったと思います。当時の主治医のいる病院は遠すぎました。そこで、町の評判のいい産婦人科へ主人と行くことに。でも、バリアフリーでもなければ診察台にもひとりでは乗ることもできず、ここで出産はないなと思いました。大学病院へ紹介状を書いてもらい、その先の病院で車椅子での出産にまつわるリスクなど、恐る恐る相談したことを覚えています。幸い、「やってみましょう」と前向きな先生や助産師さん達のおかげで出産を乗り越えることができました。しかしながら、その先生は二人目のときにはすでに他に移られていたようです。信頼できる先生、車椅子も対応してもらえる病院にたどり着けるよう、事前にもっと情報があればいいのにと感じました。(車椅子ママHさん)

✓育児の問題

いざ出産しても、育児には体力が必要です。また、障害のある体に合う育児グッズや方法を手に入れるのは至難の業です。情報収集した中に、自分と似たような状態の情報があるとも限りません。試行錯誤しているうちに子どもはどんどん成長し、折角手に入れた方法が通用しなくなるのが育児です。

どこまで自分がやれるのか、やれないことは無理をせず割り切れるかが鍵になるかもしれません。

✓頼れる手・機関があるかどうかのサポートの問題

障害の有無に関わらず、育児には人手が必要です。障害があるなら尚のこと、手は多ければ多いほど育児をスムーズに行えることでしょう。

親兄弟、親戚、友人、公的機関、民間サービス、できないことは割り切って信頼出来る誰かに任せられる環境作りも、立派な育児の1つです。


✓これらを夫婦が受け入れられるかの精神的問題

支援の手は伸びていても、それを掴むかどうかは勇気のいることです。どこまで割り切れるか、自分たちがそれらを受け入れられるかは大きな問題でしょう。夫婦で意見をどこまで擦り合わせられるかも重要です。自分だけがこうしたいと思っていても、パートナーと足並みが揃わなければまた別の困難が立ちはだかることになりかねません。


✓周囲の理解の問題

「自分のことも自分で出来ないのに育児?」という考えの方はまだまだ多いように思いますが、理解は必要不可欠です。反対を押し切ることも自由ですが、味方は多いほど育児はやりやすくなります


まとめ

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障害のある人が子どもを持つとき、誰もが経験する困難はより色濃くなり、さらにそこに障害がある人ならではの問題が大きくのしかかることになります。

既存の考え方や役割に執着せず、うまく周りを巻き込んで、自分たちの方法で育児を楽しめるといいですね。



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