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海岸に生えるスーキ  クサトベラとモンパノキ

 南国の海を求めてやって来る観光客にとって、クサトベラはテンションの上がる木だろう。沖縄や小笠原の海岸に行けば、あちこちでクサトベラが群生している。内地では見かけない、テカテカした大きな厚い葉が、枝先に集まってつく姿が印象的で、瑠璃色の海とともに脳裏に焼きつく。

 沖縄ではスーキ(潮木)の方言名があるが、「スーキ」「ハマスーキ」と呼ばれる木には、モンパノキもある。この両者、まったく別の木でありながら、外観も生育環境も似ているので、よく混同されている。クサトベラの葉は黄緑色で毛が少ないのに対し、モンパノキの葉は毛が多くて青白く見えることが違いだ。

 モンパノキといえば、水中メガネを作った木と紹介されることが多い。柔らかい木材を使い、二眼ゴーグルの原型となった水中メガネ(ミーカガン)の枠に使われたのだ。さすがに現在では、この木製水中メガネで泳ぐ人は見かけないが、別の用途がある。モンパノキもクサトベラも、葉の汁を水中メガネのガラスにぬると、曇り止めになるのだ。

 シュノーケリングが趣味の僕は、ふだん唾液か海藻をぬって潜るが、途中で曇ってしまうことも多い。そこで、これらスーキの葉の汁をぬってみたところ、特にモンパノキで曇り止め効果が高かった。これはいい。

 モンパノキはやや個体数が少なく、クサトベラ10本に対して1本以下だろう。それでも、自然のよく残る海岸ほど生えているし、庭やビーチに植えられることもある。あなたの行く海にも、スーキがあるはずだ。

<キャプション>
●砂浜で実をつけたクサトベラ(手前)とモンパノキ(奥)。下のピンクの花はグンバイヒルガオ。
●クサトベラ(草扉)。クサトベラ科の常緑低木で高さ1〜3m。トベラ科のトベラとは別の仲間。花や実は白色。
●葉に毛がない個体と、細かい毛に覆われる個体がある。
●モンパノキ(紋羽の木)。ムラサキ科の常緑低木で高さ1〜5m。「紋羽」は毛羽立った綿布のこと。花は白色で小さく、実は褐色に熟し小型。

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 沖縄の木の見分け方や特徴を詳しく知りたい方は、沖縄の自生樹木全種を収録した拙著『琉球の樹木』(文一総合出版)もぜひご覧ください。

モンパノキとクサトベラ紙面

※この記事は、沖縄の新聞「琉球新報」に折り込まれる副読紙「週刊レキオ」に2021年9月30日に掲載された連載記事「葉っぱで分かる木々明解」を、一部改変して再掲載したものです。

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