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3枚セットの葉の受難 アカギとデイゴ

 コロナ禍直前の2019年秋。イベントで訪れた那覇市の奥武島公園で、まるで本土の秋のように、くすんだ黄色に紅葉(?)したアカギを初めて見て驚いた。アカギは常緑樹だから、一斉に紅葉するはずはない。この現象はみるみる分布を広げ、那覇近郊の街路樹をはじめ、名護市周辺のアカギも黄色く染まり、落葉樹のように葉がすべて落ちた木も見る。

 犯人は3mmほどの虫、ヨコバイの仲間。大量発生して葉裏などで汁を吸うため、樹下に大量の糞尿が落ちる被害も出ている。新たに若葉が出ても、またヨコバイに吸われるから、このままでは衰弱して枯れる木が増えてもおかしくない。最近になって、中国や台湾に分布するコロアナ・アーキュアータというヨコバイの種名が判明したが、本格的な対策はまだこれからという。

 アカギは沖縄有数の大木になる木で、学校や墓地にもよく植えられている。赤茶色の樹皮と3枚セットの葉(三出複葉)が特徴だ。

 外来昆虫といえば、2005年に石垣島のデイゴで初確認されたデイゴヒメコバチも有名で、やはり数年のうちに全県に広がった。葉や茎に寄生して虫こぶと呼ばれる異物を作り、県内ほとんどのデイゴは花が咲かなくなり、枯れる木も続出した。こちらは、幹に薬剤を注射する樹幹注入という対処法が広がり、最近は復活しつつある。県花であるデイゴも街路樹や公園によく植えられ、大木になり、3枚セットの葉をもつ点で、アカギと共通する。

 沖縄を象徴する3枚セットの葉が、次々と虫にやられるとは。両者とも“犯人”の侵入経路は不明だが、コロナ前は人やモノの往来が激しいグローバル化の全盛期だったし、温暖化で台湾やフィリピンから虫が飛んで来て自然に定着してもおかしくない。いずれにせよ、真の“犯人”は人間の可能性が高いのだ。

<写真キャプション>
●ヨコバイの被害で葉が黄色くなったアカギ(宜野湾・1月)
●健全な頃の国道58号線のアカギ(那覇・4月)
●花を咲かせたデイゴ。西表島のデイゴは過半数が枯死した (西表島・3月)
●デイゴヒメコバチの虫こぶができたデイゴの葉
●アカギの葉 小葉は丸く、ふちにギザギザがある。
●デイゴの葉 小葉は幅広く、ふちにギザギザがない。

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 沖縄の木の見分け方や特徴を詳しく知りたい方は、沖縄の自生樹木全種を収録した拙著『琉球の樹木』(文一総合出版)もぜひご覧ください。

アカギとデイゴ紙面

※この記事は、沖縄の新聞「琉球新報」に折り込まれる副読紙「週刊レキオ」に2021年7月29日に掲載された連載記事「葉っぱで分かる木々明解」を、一部改変して再掲載したものです。

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