まだ上海・北京で消耗してるの?現象を考える

上海・北京での「漂流」生活が自分の目指す幸福ではない、という理由で地方へ移住する動きが以前に増して目に付くようになった。下記に引用した北京の外来人口減少のデータもSNSなどで言及されているのをよく目にする

蓝皮书显示,2015年以来,北京市常住外来人口规模不断下降,2015年达822.6万人,2016年为807.5万人,2017年为794.3万人,2018年为764.6万人,2016年、2017年和2018年较上一年分别下降1.84%、1.63%和3.74%,连续三年呈现负增长。
政府のレポートによれば、2015年以降北京における外来人口の規模は継続して減少している。(2015) 822.6万人、 (2016) 807.5万人▲1.84%、 (2017) 794.3万人▲1.63%、 (2018) 764.6万人▲3.74%と推移しており、連続3年のマイナス成長である。

まず抑えるべきは、外来人口という定義は「北京や上海の戸籍(户口 hukou )を持たない人」である。中国の戸籍制度は大変独特かつ複雑なので説明は割愛するが、今回の話題の関連性が高いところでいえば、北京や上海での戸籍を持たない重大な弊害は下記の二点だと認識している。

①子供が北京/上海市の普通の公立学校に通えない
②市内の住宅が購入できない

上記の理由により、貧困地域からいわゆる出稼ぎで北京上海に来ていて、住宅購入する経済的余裕がなく、子供も地元で留守児童をしている状態の人を除いては、戸籍を伴わない場合には北京・上海生活で家族とともに長期生活することは困難である。なので、例えば若い時に上海での生活を経験してみたくて数年生活したが結婚を期に帰省する、という現象は昔からあった。自由云々の議論をひとまず差し置くと、両都市にとっては若く安価な単純労働力が絶えず供給される理想的な状態ともいえる。とはいえ、両都市とも長期的な経済発展に貢献するエリート外来人は引き留めておきたいので、学歴や給与の基準をクリアしたエリート人材には戸籍を付与(落户luohu)するという政策がある。ここまでは一般的な状況説明である。

前置きが長くなったが、最近よく考えるのは上記のケースではなく、「一応エリートとして戸籍は取得できたけど、やっぱり俺もういいわ」という人が増えているのではなかろうか、という点である。自分の周辺のサンプルから中国の全体像を推測するのは至難の業ではあるが、上海北京のエリートという範囲であれば一定程度母数が小さくなるのでよしとしよう。この一年ほどで10件以上見たり聞いたりした「上海もういいわ」のうち数例を紹介しよう。

27歳遼寧省女性:TOP10大学バイオ系卒業、上海で2年民間企業勤務後江蘇省の3級都市の地方政府に転職
30歳黒竜江省男性:TOP10大学薬学部卒業、上海で2年民間企業勤務後闽南省へ転職
26歳江蘇省女性:TOP10大学会計専攻中国会計士、Big4を2年で退職後上海近郊でベンチャー企業へジョイン

上記はすべて友人の実例で、上海戸籍取得済である。上海を離れた理由は、家を買うために人生を犠牲にしたくない、生活のリズムが早すぎる、などが聞かれた。3名とも非常に優秀だが、どちらかというと落ち着いていて自分がどのような生活を求めているかを理解しているタイプだ。中国人の仕事に対する考え方というと、金銭面の追求を思い浮かべる方が多いかもしれないが、一部の若者のなかでは金銭以外の価値にもとづいてライフスタイルを変える現象がみられる。これから数年は2級都市・3級都市の発展段階だといわれて久しいが、上記の友人のようなマイペースで頑張るエリートたちが、その発展を支えていくのだろうか。

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