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「私たち『らしさ』を貫く」− by ToyFight <vol.6>

WORKS GOOD! MAGAZINE 第6弾は、イギリス・マンチェスターにオフィスを構えるクリエイティブエージェンシー ToyFight 。約2年前に創立したばかりで、メンバーは10人未満とまだまだ小さい会社ですが、創業者であるリーとジョニーは国外での就労経験もあるクリエイティブディレクター。大手エージェンシー出身の強みを生かし、デジタルの領域だけに留まらず活躍の幅を広げています。過去の経験からいかに学び、それを今どうアウトプットしているのか詳しくお話を聞いてきました。

Question 1:
まず初めにToyFightについて教えてください。


ジョニー:
ToyFightは私たち(ジョニーとリー)が2年前にマンチェスターに設立したクリエイティブエージェンシーです。2人ともクリエイティブディレクター兼デザイナーです。

リー:
会社には私たちを含めた7人のメンバーが所属していて、クライアントはアメリカ、イギリス、ヨーロッパに渡ります。

Question 2:
なぜおふたりは一緒に会社を立ち上げたのですか?経緯と理由を教えてください。

リー:
もともと数年前に、マンチェスターにあるエージェンシーで一緒に働いていましたが、NYのエージェンシーより声がかかり、私はマンチェスターを離れました。

ジョニー:
リーがNYへ拠点を移したすぐ後に、たまたま私も家族を連れNYで働くことになりました。

リー:
所属先は違いましたが、どちらも同じNYで働いているのは変な感じがしましたね(笑)。どちらも忙しかったので頻繁には会えませんでしたが、たまに会うことはありました。

ジョニー:
再会し、自分たちの将来について話すうちに、一緒に会社をつくる案が生まれました。当時、エージェンシーに所属するデザイナーは、クリエイティブディレクターになって、デザインの実作業から離れるというキャリアパスが主流でしたが、私たちはそれを望んでいませんでした。クリエイティブディレクターのままデザインもできる環境を作りたかった、というのが会社を立ち上げた理由のひとつです。

リー:
また、雇われていた時は週末に仕事をすることも度々あり、そんな生活から脱出したいと思ったことも、会社設立のきっかけです。仕事だけが私たちの暮らしではないし、もっとやりたいことをできるようにしたいと思ったんです。会社を創ることが、こんなにも自分たちの経験と違うものかと思いましたが、数年後再びマンチェスターに戻り、ToyFightを設立しました。

ToyFight

Question 3:
採用の際に気をつけていることはありますか?

ジョニー:
いざ採用となると、採用ポリシーとして決めている『私たちと同じ考え方を共有できるか』が鍵となってきます。Photoshopやillustratorなどのツールの使い方は教えることができますが、その人の持つ考え方を変えることはとても難しいと感じています。ですので、考え方の方向性がマッチしていれば、多少の才能は必要にせよ、たとえスキルがなくても採用するようにしています。

リー:
今も若いデザイナーが1名所属していますが、技術を教えることは苦ではありません。いいデザイナーを育てるのは大切な仕事の一つだと考えています。ただそれと同じくらい、会社の考え方をしっかり共有することも大切です。決して、全て自分たちに従って欲しいと思っているわけではありません。会社の未来は皆で一緒に築いていけたらと思っています

ジョニー:
そのためにも、まずは自分たちが会社の考え方やスピリットを確立していかなくてはなりません。他のメンバーにもそれを引き継ぎ、制作過程を彼らに任せることができれば、私たちは、そこに監督者という立場で関わることも、プロジェクトの一員として関わることも可能になります。


Question 4:
コンペを受けられることはありますか?また、コンペ費が支払われることはありますか?

ジョニー:
やります。コンペ費がもらえることはとてもまれで、実際に経験したこともないですね。アメリカで働いていた時もコンペ費は支払われないのが普通でした。

リー:
イギリスでもアメリカでもそうなのですが、以前はクライアントからRFP(※1)が支給され、それに対してテキストで、何ができるかを回答するだけでした。しかし最近では、コンペの前にデザインやプロトタイプを提出することを暗示的に求められることがあります。そこで一度ふるいにかけられ、選ばれた人のみがコンペに参加できる、といった状況です。

そのようなことからもわかるように、競争は激しくなっていますね。どの会社もコンペに多くの工数を費やすことを求められています

ジョニー:
私たちみたいな小さい会社だと、コンペにリソースを何週間もつぎ込むことは難しく、受注できれば大きな問題はありませんが、受注できなかった場合は、たくさんの時間を失うだけで何も残らないことになります。

また、有名なブランドの仕事をしたという実績が欲しいために、無償で仕事を引き受ける会社も出てきているのが現状です。無償でやる会社が出てくることで競争はさらに激しくなる一方です。

※1
Request For Proposalの略。提案依頼書。

Question 5:
コンペの際に気をつけていることはなんですか?

リー:
教えてもらえることはまれですが、コンペの競合がどこかは質問するようにしています。私たちの会社はまだまだ新しく、会社の規模や歴史、実績だけを見られてしまうと不利な立場にいる気がするので、戦う相手が大きければ大きいほど、絶対に良い提案をして勝ちたい、という思いが増しますね(笑)

また通常のコンペとは違うのですが、イギリスでは、行政が出資をしている企業が、とあるオンラインシステムを使ってエージェンシーを探すケースもあります。その場合は、まずそのシステム上に彼らが提案依頼書を掲載し、それを見ることができるエージェンシーが入札に参加するというものです。依頼に対しての見積りと過去の実績を提示すれば受注できる可能性があるので、エージェンシーの規模に依存しないこの方法がフェアな場合もあります。

ただ、一般企業のコンペでも行政のコンペでも、常にチャレンジしていくことに変わりはありません。

Question 6:
案件受注後のフローを教えてください。

ジョニー:
案件を受注したら、まず概算見積りと、大まかなスケジュールを提出します。そこでクライアントの合意が取れたら、SOW(※2)を発行します。簡単にいうと契約書のことですね。その契約書にサインをもらえたら、まず始めに案件をよく知る作業へと入ります。リサーチをしたり、話を聞いたり、資料を読んだり。その次に、アイディアを出していきます。一通りアイディアを書き出したら、次はコンセプトを決める作業へと入ります。その後、その案件を一人でやるのか、複数人でやるのかを、スケジュールやスケールで判断します。

そして、複数のコンセプト案をクライアントに提示し、決まればデザインへ、その後開発作業へと移っていきます。

リー:
毎回、その案件に合っていて、また私たちにとってもやりやすい案件の進め方を考えて採用するようにしています。なので、案件の進め方にフォーマットはなく、常にやり方を変えています。

ジョニー:
私たちは基本的にワイヤーフレームを作りません。別に投げやりになっているわけでも、怠慢になっているわけでもなく、私たちはワイヤーフレームが必要ないと考えているからです。そのかわりにクライアントに優先度リストを作ってもらうようにしています。リストを使って、私たちはデザインをしていきます。こうすることによって、クライアントも私たちも何の優先度が高いのか、何が本当に必要なのか、フォーカスできるからです。

また、情報設計のフェーズはスキップしてしまうことが多く、なるべく早くプロトタイピングに入れるようにしています。デザインに割く時間が一番重要だということを自分たちで把握していますし、早めにプロトタイピングに入れれば、その分早めに問題点も見つけられ調整をしていけます。クライアントに対しても、フラットなデザインより、動画やプロトタイプを見せた方が、理解のスピードが早く、次のフェーズにも早く進みやすくなります。

リー:
IAも時には必要だと思いますが、ワイヤーフレームを作成する時間をデザインや開発に少しでも充てられた方が、私たちのもつ強みを最大限に発揮できると考えています。

ジョニー:
そして何よりも楽しいですしね(笑)常に楽しくできたらと思っています。

※2
Statement Of Workの略。作業範囲記述書。

adidas

Question 7:
一度に抱える案件は平均して何件くらいですか?

ジョニー:
会社としては5~6件くらいですね。ただ、すべての案件が同時にスタートしているわけではなく、一つの案件はデザインフェーズ、もう一つは最終確認に近い開発フェーズなど、制作段階が少しずつずれるように調整しています。

リー:
個人としては、抱えているプロジェクトの大きさにもよりますが、同じフェーズのプロジェクトは2つ以上同時にやらないようにしています。もしどうしてもこなさないといけない時は、外部リソースを追加しますが、社内でなるべく収まるようにしています。

この先もっと仕事の数は増えていくと思いますが「遅くまで残ってでも仕事をする」という文化は決して築きたくありません。もしメンバーみんなが遅くまで残って仕事をしないといけない状況が続いたら、それは、人を雇う合図だと思います。貪欲になりすぎて無理を強いることはしたくありません。

ジョニー:
もしくは、働き方の改善をプランニングする必要があるか、ですね。

Question 8:
クライアントへの請求のタイミングについて教えてください。

ジョニー:
ケースバイケースですね。初めて仕事をするクライアントの場合は最初に必ず、予算の50%を請求できるよう交渉しています。もし大きい案件であれば、3分の1、もしくは4分の1に分けてもらいお支払いいただくこともあります。私たちはしっかりと責任を持って案件を遂行するので、クライアントにも同じように、責任を果たしてもらう必要があると思うからです。

AwwwardsにてSite Of The Dayを獲得したOpen Continents


Question 9:
リモートワークや副業は許可されていますか?

リー:
パートナーとはリモートで仕事することもありますが、社内にリモートワークをしているメンバーはいません。ただ必ずしもこのオフィスで働かないといけないという制約はなく、働いてもらう場所にこだわりはありません

ジョニー:
副業については、あまり賛同できません。会社でやっている業務と同じことを外部でも仕事にしているようなことがあったら、給与が少ないのではないか?とか、会社での業務に問題があるのではないか?と思ってしまいます。会社の業務とは違うサイドプロジェクトをするのであれば、いつでも応援したいと思っています。

Question 10:
最後に「いい仕事」をするのに一番大切なものは会社として何だと考えていますか?

ジョニー:
ブランドやクライアントの決裁権のある人が、ちゃんと私たちの話を聞いてくれること、また、ちゃんと言い合うことのできる関係だと思います。

リー:
クライアントは私たちに助けを求めているので、ちゃんとそれに向き合うことが必要だと思っています。彼らが望むものをそのまま何も考えず実行することは、誰にでもできることですからね。クライアントに私たちの決断を信頼してもらえることもとても大切だと思います。


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<wework>

<Keen>

<salomon>


※この記事内容は2017年8月公開当時のものです。

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前回までの記事はこちらから!

Vol.5 :「社員は7名。世界中のクリエイターとともに、期待を超えるアウトプットを。」 — by FIELD


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