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なぜドイツには元プロでない若手指導者が多いのか?


はじめに

今回は、4大リーグとJリーグ監督の平均年齢、そしてドイツの元プロではない若手監督についてテーマを絞って記事を書いていきたいと思います。

*ドイツと日本のお指導者ライセンスの比較を知りたい方は過去のページを参照して下さい。


各国リーグ(1部)の監督の平均年齢(2020年4月現在)

プレミアリーグ(イングランド)
プレミアリーグ監督の平均年齢は50.5歳であり、最年少はアーセナルのミケル・アルテタ監督の38歳、最年長はクリスタル・パレスのロイ・ホジソン監督の72歳。

ラ・リーガ(スペイン)
ラ・リーガ監督の平均年齢は49歳であり、最年少はグラナダのディエゴ・マルティネス監督の39歳、最年長はバルセロナのキケ・セティエン監督とレガネスの元日本代表監督でもあるハビエル・アギーレ監督の61歳。

ブンデスリーガ(ドイツ)
ブンデスリーガ監督の平均年齢は49.2歳であり、最年少はRBライプツィヒのユリアン・ナーゲルスマン監督の32歳、最年長はドルトムントのリュシアン・ファーヴル監督の62歳。

セリエA(イタリア)
セリエA監督の平均年齢は50歳であり、最年少はサッスオーロのロベルト・デ・ゼルビ監督の40歳、最年長はサンプドリアのクラウディオ・ラニエリ監督の68歳。

Jリーグ(日本)
Jリーグ監督の平均年齢は51.5歳であり、最年少は鳥栖の金 明輝(キン・ミョンヒ)監督の38歳、最年長は札幌のミハイロ・ペトロヴィッチ監督の62歳。

各国リーグ(1部)の監督の年齢表▼

最年少

上記のデータを見てみると日本は4大リーグと比べても平均年齢の差はほとんどないことが分かる。

ブンデスリーガ各クラブの監督年齢▼

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元プロ選手でない監督

しかし、日本と世界(特にドイツ)とでは大きく違う点が一つある。それは元プロ選手でない選手が監督になるケースである。

日本であれば、過去のトップリーグの指揮をとって有名なのが三浦俊也監督(元仙台、大宮、札幌、神戸、甲府、現ホーチミン・シティ)ぐらいしか思い浮かばない。

一方近年ドイツでは多くの若手監督、そしてプロとしての実績のない監督が毎年出てくる。

元プロ選手でない現ブンデスリーガ監督(20年4月現在)
・マルクス・ギズドル (1.FCケルン、現在50歳)
・アヒム・バイヤーロルツァー(FSVマインツ05、現在52歳)
・フロリアン・コーフェルト(ヴェルダー・ブレーメン、現在37歳)
・ユリアン・ナーゲルスマン ( RBライプツィヒ、現在32歳)                                             
元プロ選手でない過去の若手監督
・ドメニコ・テデスコ(元シャルケ、当時31歳、現スパルタ・モスクワ)
・マヌエル・バウム(元アウグスブルク、当時36歳、現ドイツU20監督)
・ハンネス・ヴォルフ監督(元シュツットガルト、当時36歳、現ゲンク監督)
・サンドロ・シュワルツ監督(元マインツ、当時38歳)*元2部選手
・アレクサンダー・ヌーリ監督(元ブレーメン、当時37歳、)*元2部選手

プロ選手経験がなく、ブンデスリーガの監督へとなる経緯

ドイツではブンデスリーガを経験していない選手がどのようにブンデスリーガの監督へと就任するのだろうか。今シーズン、RBライプツィヒを指揮しているユリアン・ナーゲルスマンとヴェルダー・ブレーメンのフロリアン・コーフェルトの2名を例にとって紹介したいと思う。

ドイツ若手指導者といて真っ先に名前があがるのはユリアン・ナーゲルスマンであろう。ドイツのポータブルサイト「FuPa.net」で彼の選手としての最終経歴は地区リーグになる。地区リーグとは趣味としてサッカーを楽しむレベルだ。ユース時代は悪くない選手であっただろう。TSV1860ミュンヘンのユースから2軍へ昇格、FCアウグスブルクの2軍へと移籍している。しかし、若干20歳で怪我により、選手としてのキャリアを終えている。そこから彼は古巣のTSV1860ミュンヘンのアカデミーで指導者としてのキャリアをスタートさせ、ホッフェンハイムのアカデミーへ移籍し、同クラブのアカデミーで結果を残し、トップの監督へと上り詰めた。

もう一人今シーズンの若手監督フロリアン・コーフェルトは、大学生の時にブレーメンの3軍でプレーしいた。もちろん3軍と言えど名門のアカデミーチームとなるので、決して簡単に入れるチームではないが、難しいかと言われるとそうでもない。近年ブレーメンの3軍は5部リーグに参戦していて、ドイツの5部リーグはアマチュアリーグに分類される。大学ではスポーツ学などを専攻しながら、ブレーメンのアカデミーで指導者としてのキャリアをスタートさせる。U17のアシスタントコーチ、監督、トップのアシスタントコーチ、2軍の監督を経て、トップの監督へと就任する。

2人に共通することはアカデミーで指導者としてのキャリアを積んでいることと結果を残していることである。ドイツの大学でスポーツ学や指導論などを専攻していると実習でブンデスリーガのクラブへ関われるチャンスもある。プロ経験やプロクラブとの関わりがない指導者はそういった実習などで評価されてブンデスリーガクラブでの指導の場を与えられることもある。


名選手、決して名監督にあらず

 同じスポーツとはいえ、立場が違えば必要能力も変わってくる。ドイツサッカー連盟は各クラブに良い指導者がいたら、「積極的に起用してほしい」と伝達している。このような背景から若手の育成指導者に扉が開かれている。ブンデスリーガの監督にための条件として最高位の指導者ライセンス「フースバル・レーラー」が義務付けられているが、そのライセンスに応募するに当たって決められた条件下での監督経験が必要となるため、元プロ選手だけで埋まることはない。

前回の記事でもドイツのライセンスについては解説している。

日本の進むべき道

 日本では2019年に日本サッカー協会とJリーグが協議し、次代の日本サッカーを担う優秀な選手の輩出を目的とし、J2とJ3で、21歳以下の選手の出場を奨励するルールが導入される事になった。これが監督にも適用されると、各チームとも若手監督を積極的に使うようになっていくのではないだろうかと思う。性別、年齢、経歴ではなく純粋に指導者としの能力だけで判断されるようになってくる事を望む。

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