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設計しているユーザー体験は、どのKPIにアタックしているのか?

こんにちは。ビジネスとクリエイティブによって企業価値の向上と事業成長を支援する、セブンデックスの事業統括を務めております、西野と言います。

セブンデックスでは、ビジネス戦略から顧客体験・コミュニケーションまで一気通貫でデザインし、クライアント企業様の事業成長を加速させる「ビジネス・クリエイティブ・スタジオ」という事業を運営しています。

私自身は、4年前からUXデザイナーとしてのキャリアをスタートし、プロダクトのUXUIリニューアル、新規事業の立ち上げやブランド戦略策定など幅広いプロジェクトに関わってきました。

本noteでは、UXデザイナーとして求められる要件が変わりつつある中で、大事だと感じる視点について書いていきたいと思います。

UXデザイナーは、「理想のユーザー体験を設計すること」がゴールではない

はじめに少し余談から入りますが、最近、デザイン界隈では「UXデザイン終了時代」「UXデザイナーの求人数が減っている」といった記事を見かけるようになり、ここ数年でUXデザインという分野に対する見方が変わってきたなぁと、肌で感じています。

セブンデックスという会社も、私が入社した4年前はUXUIデザインカンパニーとして事業を展開していましたが、市場の変化に伴って支援領域を拡大し、現在はビジネスの戦略構想からインナーブランディングをはじめとした組織構築・データドリブンなグロース支援まで、一気通貫で支援を行う形態へと変化していきました。

「UXが不要」ではなく、「UXだけでは足りなくなった」

市場で言及されているUXデザインに対する評価は様々ですが、個人的には「UXというものが大事ではなくなった」ではなく、「ユーザー視点だけでは足りなくなった」が正しい捉え方かなと思っています。

ユーザー視点でサービスやプロダクトを設計することは今も数年前も大事であることは普遍である中で、"良いユーザー体験"プロダクトを作るという視点だけでは、ビジネスとして持続可能な価値提供ができない。そして、競合サービスが次々と参入してくる世界の中で生き残り続ける(ユーザーに使われ続ける)ためには、サービスとして成長していかなければならない。

そのために、収益性・サービスモデル・オペレーティングシステムなど、持続的にビジネスとして運営し続けることができる「ビジネス視点」が必要であり、持続的にサービスを提供し続けるからこそデータが溜まり、より良いサービスを作るために改善を続けることができる。

という話であると捉えています。

下記の株式会社ベイジ 枌谷さんの記事では、事例を踏まえて、良い体験」を作ることの落とし穴と、ビジネスの根本に向き合うことの大切さについて書かれています。

事業成長に目線を置いたUXデザイナーとして持つべき、「ユーザー体験」と「KPI」との関係

このように、ユーザー体験の設計を行うUXデザイナーが、「どうやって持続的にサービスを続けていくのか」「どうやってサービスを成長させていくのか」というビジネス視点を求められている中で、これからの事業成長を牽引するUXデザイナーとして必要な視点は何かを考えてみました。

それが、タイトルにもある「設計しているユーザー体験は、どのKPIにアタックしているのか?」という視点です。

UXデザイナーの仕事は、インタビューをして、AsIsの体験を可視化して、ToBeの体験を設計して、それをプロダクトに落としていく。つまり、「理想のユーザー体験を設計すること」が目的になりやすい側面があります。

一方で、ビジネス視点を取り入れると、「そのユーザー体験がよくなることで、事業がどう成長するのか?」を捉える必要があります。

ユーザーの行動が変わると、KPIが変わる。KPIが変わると、KGIが変わる。

「そのユーザー体験がよくなることで、事業がどう成長するのか?」を考えるにあたり、「ユーザー体験」と「事業成長」の関係性について見ていきます。

「事業成長」という言葉が曖昧ですが、一旦「サービスのKGI(多くの場合売上)が伸びていくこと」と仮定すると、

UX(UI)をアップデート
→サービスを利用するユーザーの行動が変わる
→プロダクトのKPIに変化が現れる
→KGI(売上)が伸びていく

という構造になっているかと思います。

上記を前提とした時に、「今設計しているユーザー体験は、どのKPIにアタックしているのか?」を捉えながらUXを設計すること(シナリオやジャーニーを作成すること)が大事なのではないかと思っています。

もし仮に、今設計しているユーザー体験の先に、プロダクトの主要KPIがない場合(主要KPIに影響を与えない体験を設計している場合)、いくらユーザー体験を改善したとしてもサービス・プロダクトの成長に大きく繋げることはできません。

例えば、上記で紹介したベイジさんの記事では、下記のような事例が紹介されています。

「牛丼チェーンの吉野家の椅子には、背もたれがない。椅子に座って寛げないようにすることで、回転率を上げるための工夫である。」

この場合、「椅子に座る体験」をより良くすることは、サービスの売上に繋がらないアプローチということになり、「事業成長に繋がるアプローチ」とは言えないものになってしまいます。

プロダクトのグロースモデルを捉える

上記の視点を持って体験を設計するためには、プロダクトのサービスモデル・マネタイズポイントを理解した上で、プロダクトのグロースモデルを捉えておく必要があります。

グロースモデルとは、サービスやプロダクトが持続的に成長をするためのサイクルをモデル図として可視化したものです。

↓グロースモデルについて説明している記事はこちら

このグロースモデルに、主要KPIをマッピングすることで、「マネタイズを行なっていくために抑えるべきKPIと、KPIを伸ばすためにアタックするべきユーザー体験」が見えてきます。

グロースモデルにKPIをマッピングしたアウトプットのサンプル(赤い丸にKPIが入ります)

この「KPIがマッピングされたグロースモデル」をベースに、「自身が設計しているユーザー体験がどのKPIにつながっていくのか?」を捉え、より適切なアプローチ・リソース配分に繋げていくことが、UXデザイナーとして事業成長に寄与していくにあたっては重要な目線ではないかと感じています。

ユーザーに喜ばれるだけでなく、持続的に成長し続けるサービスを創るために

本記事では、ユーザーに求められるサービスづくりを担ってきたUXデザイナーが、事業成長を担うUXデザイナーへとステップアップするために、「設計しているユーザー体験は、どのKPIにアタックしているのか?」という観点が大事であるということを書いてみました。

冒頭に書いた通り、UXデザインは「不要になった」ではなく、「必要だが、それだけでは足りないことが見えてきた」という盤面にあるのではないかと思っています。

UXデザイナーの皆様は、日々プロダクトのユーザーの体験に向き合われているかと思いますが、ビジネス視点を持つために必要な観点をインストールし続けることで、ユーザーに使われるだけでなく、ビジネスとして持続的に成長していくプロダクトを創っていく。

そんなアップデートへの一助となれば幸いです。

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