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お盆と婆ちゃんと十手(ホラー回)

毎年お盆が来るのが少し億劫になる。
もうかれこれ婆ちゃんが亡くなってから毎年続いている事なんだけど。本当に厄介でいつも御盆が近づくと憂鬱になってしまう…。

婆ちゃんが亡くなったのは丁度5年前の冬。
年が明けて今年はいい年になれるといいなといった矢先、あっけなくぽっくりと逝ってしまった。
比較的僕は婆ちゃんと仲が良くて、自営の仕事の合間畑仕事を手伝ったり、毎週土曜日に近くのドラッグストアーで買ってきたお菓子をあてに婆ちゃんに寄ってたかっていた。
婆ちゃんもまた僕の事を可愛がっていて、婆ちゃんが亡くなった夜は悲しくて堪らなかったのを覚えている。

丁度その次のお盆時、僕は婆ちゃんが会いに来てくれるだろうか?と楽しみで仕方がなかった。
お盆の迎え火の日、その日は嵐でも来たんじゃないかというくらいの大雨で、玄関前に火を焚いていたんだけど余りにも雨が強すぎて上手く煙が立たなかった。

「今年初めての迎え火。ちゃんと辿り着けるだろうか」

と不安で仕方がなかったのを覚えている。

僕の不安をよそに婆ちゃんはしっかり僕の家に訪れてくれた。ああしっかりと迎える事が出来たのだと僕は安心した。

その次の日の朝僕の左腰からふくらはぎ当たりの激痛で目が覚める。余りにも痛くて寝ている間に足でもつったのかと思うくらいだった。
取り敢えず寝起きの水を飲もうと立ち上がるが、足を地面に着けるだけでひどい激痛で悪いがその日は何もできずに布団に包まった。

お盆の間中それこそ何かをしようとしても、足腰が痛すぎるのであれは本当に参ってしまった。
「お前と仲が良かったから、ばあちゃん乗っかってるんじゃないのか?」と父から言われて内心頭に来た。

「息子の親父よりも僕につくとか、親父あんまり大切にされて無かったんじゃねえの?」って悪態をついたけど、もはやそんな元気も無かった。

結局お盆が終わり送り火と同時に痛みがスーッと消えた。

本当に参ってしまう…。これが毎年続くもんだから
お盆が近づく度に嫌な気持ちになってしまう…。

その2年後父型の祖父の兄弟。
僕からすればおじさんなのかな?彼が亡くなったと聞いて、僕と父は埼玉まで乗用車で向い、現地でトラックを借りた。

おじさんは孤独死だったらしい。アパートの大家が即急に遺品を整理して欲しいとのことだった。
正直言って彼はそこまで住人に好かれていなかったらしい、どちらかと言えば腫れ物に触れる様な扱いだったと祖母から聞いたことがある。
おじさんの一人暮らしの部屋はまあとっ散らかって大変だった。親父がトラックを横付けしてどんどん荷物を運び込む。一体何往復したかわからない程最後には荷物で一杯になった。

殆どが現地の焼却所へと運ぶことになる。
その日を境に僕は無駄な荷物は持たない様に生きようと心に誓ったものだ。僕にミニマリストとしての生き方を目覚めさせてくれたきっかけになったのは感謝している。

なぜにこうも男の部屋というのはいらん物で溢れるものだろうか?本人からすれば大事な物でも他人からすれば不用品だ。でも本当に優しくて良くしてくれた恩があるからしっかりと片づけてあげたかった。あらかた片付いたので今度は場所を変えようと部屋の奥の棚に手を伸ばした。
そしてその奥の方で妙に硬い金属の塊の様な物に手が触れたので、それを掴んで引っ張り出してみた。

その金属の塊は丁寧に薄手の小さな風呂敷に包まれていたので、僕は徐ろにそれを解いてみた。その金属の正体は十手だった。
よく時代劇等で警察がちょうちんと一緒に持っている片手武器の様なものだ。
片付けが忙しすぎて、僕は息抜きがてらそれを抜いて親父の前でふざけて振り回して見せると。

「そんなもの触るんじゃない。すぐに捨ててしまえ」

親父がイライラして怒鳴ったのが面白かったのか、こっそりと記念に持ち帰ることにしたんだった。

まさかそれがとんでも無い事を引き起こすとはその時は知りもしなかったのだが…。

無事に片付けが終わり、その日は母型の祖父母の家に泊めて貰い、朝一番で実家に帰る予定だった。

普段使わない筋肉を駆使したせいか、その日は疲れて直ぐに寝てしまった。

そしてその次の日僕は得体のしれない体調不良に襲われた。40℃近い高熱と、異常な身体の痛み。
そのままその日も泊まったほうがいいと思ったけど、流石に長居は出来ないので申し訳ないが帰りは全て父に運転を任せた。

その道中は本当に酷いものだった。
ただ熱が出ているならまだしも、身体がダルいは痛いわで本気で死ぬかと思った。
なんとか家についてそのまま風呂に入らず床についた。
勿論その次の日も悲惨だった。まともに横になる事も敵わなくて、ただ苦しみと痛みに耐える日々が続く...。


そして一週間後、お盆時がやってきた。僕の嫌な予感もしっかりと当たり今年も腰痛とふくらはぎの痛みで悲惨だった。

十手の呪いと婆ちゃんとでただの生ける地獄でしかなかったのだww

お盆の最初の夜。僕は壮絶な夢を見た。
大量の悪霊が僕に付きまとい、僕の身体をむしばもうと纏わりついている。意味不明な言語なのか呻き声なのかわからない声でずーっと永遠と僕に囁き続ける。
急に光がパーっと光ったと同時に婆ちゃんが目の前に現れた。

右手にはあの十手が握られていて、僕の周りに纏わりつく悪霊を一網打尽にする。婆ちゃんは背も小さく見た目がマスター・ヨーダに似ていたので、良く生きていた頃は
「ヨーダヨーダ」とか言っておちょくっていたのだが、正にマスター・ヨーダバリに十手を振り回していた。

全ての悪霊が消え去って僕の目の前に立つばあちゃんが

「どうしてこんな物を持ってきたんだい!?」「いいからこんな物はどっかに捨てちまいな!」

そんな事を言って婆ちゃんは光と共に消えてしまった…。

目が覚めると僕の身体の痛みも熱もすっかり引いてしまっていた。まだ夜も明けていなかったけど、直ぐ様身体を起こして少し離れた山中まで車で出向いて思いっきり投げ捨ててしまった。


その日からすっかりあの十手の呪いから解放された。
もうあの体験はこりごりなので、時代劇で十手を見ると震えてしまう程になってしまったw


もうあんな辛い出来事はもう嫌だ。これならすんなり死んでしまった方が全然楽だったと思っている。
地獄とは正にアレだったんだろう。文章では想像できないが、文面の10倍位の辛さだと思って貰っていい。


マジで地獄。いや地獄以上だったと言ってもいいだろう。


相変わらず毎年お盆時に腰とふくらはぎの痛みが続いている。今年もきっと痛みがやって来るだろう。
ただそれと同時に今年も祖母が会いに来てくれるのだと思うと少し楽しみでもある。

ただ少しばかり痛みを和らげてくれると有り難いのだが…


もしあなたの親戚が亡くなり遺品整理をしなければならない状況になったとしても、絶対に変な物を家に持ち帰らない様にしましょう。面白半分で持ち帰って下手すりゃ命を落とす事も十分ありえますからね…。


婆ちゃん命を救ってくれてありがとうな!
今年は大好きだった食べ物でも用意して、出迎えてあげようかな?

でもなぁ婆ちゃん一番好きな食べ物おでんなんだよなw


真夏におでんとかww食えるかw


それではまた👻👻👻👻👻👻👻👻

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