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「沈黙×手食×蝋燭の光」を通して気付いたこと @11/27 mokujiki体験レポ

mokujiki(もくじき)に行ってきました。
心地よくて、自分の糧になったイベントでした。
今回はその体験レポを書いていきたいと思います。

mokujikiとは?

yamanofoodlabo主催で開催された劇場型脳内再生型コース料理を食するイベント。
一切話をせず、手のみを使って蝋燭の明かりだけを頼りに食事をするというもの。

人間の自然への関わりあいを問い直すことを目的として、千葉県松戸市を会場に開催されてきました。
今回は「磁力と根と」がテーマに、架空の民族「山の民」の食事を食すというコンセプト。
群馬県の妙義山麓にある一棟貸しの宿 sazareを会場に行われました。

yamanofoodlaboとは?

スパイス料理を媒介として文化と人をデザインすることを目的として、今年から群馬県中之条町六合(くに)地域を拠点に活動しているプロジェクトユニットです。

yamanofoodlaboのInstagramアカウント。
画像をクリックすると該当ページに移動します。

私との関わり

元々、yamanofoodlaboを知ったのは今年の4月。
群馬県東吾妻町にある飲食店セレニテで行なわれていたイベントにyamanofoodlaboが出していたビリヤニ(※)を食べたのがきっかけでした。
※ビリヤニ→インドやその周辺の国で食べられているスパイスの炊き込みご飯のこと。

参加した理由

食べたビリヤニのおいしさ、地元の食材とスパイスをコラボするというコンセプト、そして不思議な魅力を放つ店員さんの虜に。
以来、何度かスパイス教室に参加にするように。
そんな中で知ったのが「mokujiki」でした。

食事中に話は一切はしない。
食べ方は手づかみだけ。
明かりは蝋燭の火のみ。

いつもの食事とあまりのかけ離れ度合いにびっくり。
しかし、その特殊さ故に好奇心旺盛な私の心はくすぐられました。
「どんなイベントなんだろう?」
「参加した後はどんな気持ちになるんだろう?」
考え出したら止まりません。
もう参加しない理由がありませんでした。

プログラムの主な流れ

主催者からの挨拶・ルール説明など

ここまではおしゃべり可。
このタイミングでコンセプトやルールを聞きました。
ルールはだいたいこんな感じ。

  • ずっと同じカップ、皿を使う。隣の方と会話不可。目配せも筆談もダメ。

  • 自分自身に発するものはOK。咳払いとかくしゃみもOK。

  • テラスに行きたくなったらいつでも出てOK。

  • 携帯電話はマナーモード。

  • 写真OK。但し写真に集中しすぎないようにすること。※今回、写真が少なめなのはこのためです。

  • なるべく携帯電話は見ないように。

  • トイレはいつでもOK。

  • 食事は原則残さないこと。

  • テーブルマナーは忘れる。行儀良く食べない。本能に従って食べて良い。

簡単なルールは事前に聞いていましたが、通常の食事とはあまりに違います。
身が引き締まるような思いで説明を聞きました。

開始

「キーン」
まず聞こえてきたのは、ティンシャの音。
ちなみに、ティンシャとは、元々はチベット仏教の法具のこと。
今はヨガでも使うことがあるそう。

奥がティンシャ。小さいシンバルのような形

その後、聞こえたのはかしわ手。
続いて、照明の代わりに蝋燭一つ一つが灯されていきます。
目の前の光景も相まって厳かになっていく心。
「どんな食事、そして自分が待っているんだろうか」
揺らめく蝋燭の火を見つめながら、そんなことを思いました。

同期

同期→冬支度→知恵と適合→山の雫→土とつなぐもの→人とつなぐもの→深部
と一品ごとにテーマを持った食事が出されました。

目の前にまず出てきたのは葛餅。
上には、紫式部の実。
ヒノキと砂糖を使ったシロップをかけていただきました。
口に入れると、まるではじめから体の一部だったかのように溶けていきました。

冬支度

2番目の料理は、椎茸やピーナッツを味噌やヨーグルトで和えたもの。
美味しい。
右手で料理をすくうのが精一杯で、そんな言葉しか出ませんでした。
干し柿の優しいとろみのある甘さに、目の前が一瞬「パッと」明るくなったのはよく覚えています。

蝋燭の明かりしかないため、色味は不明。
その分、味や食感に思いを馳せられました。

星空を見て思ったこと

急に外の空気に触れたくなってテラスへ。
空には宝石を散りばめたようなたくさんの星々。
そんな星空に見とれながら頭に浮かんだ3つの言葉。
「星も自分。自分も星」
「自分も星も一つ」
「星がきれいだ」

同時に膨張していた心がダウンサイジングされていくような感覚に。
自分の中の何かが変わっていくようでした。

知恵と適合

部屋に戻ってまもなく出てきた第3の料理。
そば粉や地粉を使った生地の上に、長ネギやほうれん草が乗ったおやきのような料理。
余韻が残る辛みが印象的。
感じたピリピリは、冬の乾いた風が体の中を吹いているよう。
一緒に出された飲物は冬の日の日差しのようでとても穏やかでした。

けっこう食べ応えがありました。

塗香

ここでいったん食事は小休止。
代わりに出されたのは塗香(ずこう)。
複数のスパイスなどをパウダー状にして混ぜ合わせたお香で、お坊さんが寺に入る際に身にまとうようです。今回は2種類のスパイスと落ち葉を使っているとのこと。

さじ一杯分の塗香を左手に乗せてもらい、手にすり込んでいきます。
体温に反応して立ちこめてくる香り。
シナモンのような気高さを感じる香りが心に刺さりました。

山の雫

4番目の料理はスープ。
鹿の出汁と小豆、エゴマを使ったのだそう。
「どんな色のスープなんだろう?」 と思いながらすすります。
小豆のような素朴な甘さとコクの共存を感じました。

蝋燭と喧噪

ふと、目の前にある蝋燭の絵を描いてみました。
なぜか描きたくなったんです。
描いている最中、ずっと空間の中を流れているBGMや調理音に変化が。
同じ音の内容、音量のはずなのにやたら騒がしく聞こえる時間が1分ほど続きました。蝋燭の絵を描き終えると耳の中の喧噪は段々静かに。
あれは何だったのでしょうか?

その時に描いた蝋燭の絵。
ずっと火が揺らめいていたのが印象的でした。

土をつなぐもの

第5の料理として出されたのは、大根を鹿の出汁で炊いたもの。
皿の中央にある大根は、まるで土の上に咲く一輪の花のように強くて華やか。力をいれると簡単に裂ける様子に儚さも感じました。

お腹にも手にも心地よい温度

人とつなぐもの

柏の葉に乗って出てきた第6の料理。
見た目はまるでおじや。
餅米やバスマティライスをモルディブフィッシュや大蒜を使っているのだそう。
「山の祭りだ」
見た瞬間にそう感じたんです。
手が汚れるのを忘れて柏の葉もろとも夢中で食べました。
いや、「喰らう」という言い方のほうが正しいかもしれません。
まさにむさぼるようでした。

感極まりすぎてブレる写真


口に運びながら、頭に浮かんだのは
「食材を喰らう=神を喰らう=神と自分が一体化」
大学時代に民俗学の授業で聞いたフレーズ。
「もう少しで何かに気付ける」
予感に似たような思いを抱いたのが忘れられません。

深部

最後に出てきたのはデザート。
クレープのような生地の上に、リンゴなどが乗っている甘い一品。
一番上に乗っていたのは椿の花びら。
聞くと会場のそばに咲いている椿の花を使ったのだそう。
その姿を見ていて浮かんだ光景は「夕焼けに照れされた里山に咲く椿」。
浮かんだ言葉は「世界はこんなに愛おしいんだ」。
気付いたら、デザートが入った皿に手を合わせていました。

感謝と自信はつながっている

料理を口にしながら脳裏によぎったのは、
「自然を慈しむ=神を慈しむ=自分を慈しむ」と「ありがとう」の言葉。
そして、「食材を作ってくれた自然を慈しむことは、山の神を慈しむことにつながり、ひいては自分を慈しむことにつながる。慈しむこと、それは感謝であり、「ありがとう」だ」という気付き。
自分の中で何かがつながった瞬間でした。

「周りに感謝をすることが自信にもつながるし、自信が感謝する心の余裕につながるのでは」
頭に浮かんでくる自分へのアドバイス。
最近の自分は自らの選択に持てず、周りの言動や環境にいらだちを覚えてしまうこともしばしば。

モヤがかっていた心が晴れていくようでした。
目頭を熱くしながら最後の料理をいただきました。

この体験を通して

「感謝」と「自信」は表裏一体ということに気付きました。
人生は選択の連続。
これからも悩むことも迷うこともあると思いますが、「感謝」≡「自信」と胸に悔いのないように過ごしていきたいと思います。

食材たち、食材を作ってくれた自然、生産者の方、主催者の2人、参加者の皆さんに、送り出してくれた家族に感謝でいっぱいです。
そして、参加を選択した自分にも。

ありがとう。
そして、ごちそうさまでした。


○劇場型脳内再生型コース料理 -mokujiki-
会場:森の宿 sazare(群馬県富岡市/妙義山麓の一棟貸しの宿)
参加日程:11月27日(日)※
時間:17:00開場/17:15開演
参加者:6名
主催:yamanofoodlabo
※イベント自体は11月26日(土)、27日(日)、28日(月)、29日(火)までの開催。


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