サッカーの神様
小学生のとき、僕は地元岡山県津山市のサッカークラブに入っていた。
サッカーを楽しむ事に重きを置いていたそのサッカークラブでは、サッカーの楽しさを教わった。
幼稚園から小6まで通っていたスイミングスクールでは、誰とも話すことはなかったけど(それもどうなんだ)、サッカーはチームスポーツなので、みんなと仲良くなった。
自然な流れで、中学校に入学したらサッカー部に入った。
僕が入学したのが、1996年。1993年に開幕したJリーグの影響でサッカー人気は爆発していて、普通の公立中学校なのに、部員は100人を越えていた。
そして強かった。僕らの代では、県何(岡山市、倉敷市等)の学校に勝って、県大会決勝まで進む事ができた。
高校もサッカー部。
学生のときの友達はみんなサッカー部仲間だった。
そして大学に入学した僕は、サッカー部に入った。
これは、嘘みたいな話なんだけど、なんでサッカー部に入ったのか、はっきりとした記憶がない。
サッカーは高校までのつもりだった。
でも、気がついたらサッカー部に入っていた。
サークルではなく、体育会系の部活。
練習は毎日あり、週末は基本試合。お酒もタバコも禁止。
朝から授業を受けて、夕方部活をやって、夜は生活費を稼ぐためにバイト。
イメージしていたキャンパスライフとはかけ離れた生活。
練習も過酷で、何度も辞めようと思ったけど、先輩が怖くて辞めると言い出せなかった。
仲間と先輩の文句をこっそり言うのが、唯一の糧だった。
来る日も来る日も練習。
アメフト部、ラグビー部と兼用しているボコボコの土のグラウンドで、毎日泥だらけになってボールを追いかけた。
練習終わりには、歯が土で真っ黒になる。
マネージャーもいないので1年生が水を用意して、それをがぶ飲みするしかない。もちろん水道水。
一生分走った。自信を持ってそう言えるくらい走った。走らされていた。
そんな日々を続けて4年生になったとき、僕は副キャプテンになっていた。
キャプテン、副キャプテンは先輩が任命するんだけど、1回も休まず真面目に練習に取り組む姿勢をかって、僕を副キャプテンに選んでくれたのだ。
入学時、県2部リーグだったチームは、その年に1部リーグに上がって、毎年安定して1部に残留するチームになっていた。
と、ここまで聞くと割りとありがちなサッカー少年の頑張り物語だけど、僕の場合は少し違う。
小学生の頃から、ずっと補欠だった。
小学生の頃のサッカーの楽しさを教えるクラブでも、県大会決勝まで進んだ中学の部活でも補欠。
そんな奴が大学生になって部活でサッカーをやるなんてどうかしていた。
副キャプテンをやってはいたが、もちろん補欠だ。もっというと、ベンチにも入れない。
僕はサッカーしかできなかった。
いや、サッカーもできていたわけではない。
正確にはサッカーしか知らなかった。
部活もコミュニティも全部サッカーだった。
サッカーしか知らないから、大学生になったとき自然とサッカー部に足が向いたんだと思う。
上京(正確には千葉)して、友達が誰もいなかったから、今まで友達を作ってきたサッカーにすがったのかもしれない。
下手ではあったけど、サッカーは好きだった。
観るのも好きだし、プレーするのも好きだった。
試合には出られなくても、理不尽な事があっても、サッカーはずっと好きだった。
大学生最後の試合。
それは2部リーグの学校との入れ替え戦だった。その年は1部の下位にいて、ここで負ければ2部に降格。勝つしかない最も大切な試合だった。
その試合、僕はベンチ入りを果たした。
ずっとベンチにも入れていなかったが、最も大切な試合でベンチに座れた。
可能性は少ないけど、試合出るチャンスはある。
そのとき僕は思った。
これは『【サッカーの神様】からのプレゼント』だ。
ずっとサッカーを続けてきた、サッカーを好きでいた、そんな僕へのサッカーの神様からのプレゼント。
【サッカーの神様】ありがとう。
そう思ったけど、それは早いなと思った。
この試合に勝たなければ意味がない。
僕はここで引退だ。だけど、後輩たちのためにも、1部に残留させてあげたい。
絶対に勝つ!!
キックオフ。
昇格と降格がかかった試合。
緊張感があり、緊迫した試合。
当たり前だが、どちらのチームも最高に気合いが入っていた。
僕もそうだった。
ベンチではあるけど、気持ちは試合に出てる選手と同じだ。
絶対に負けたくない!
その気持ちでベンチから声を出し続けた。
相手が攻め込んできた。
なんとかクリアー。
それが相手選手にあったってゴールラインを割る。
本来ゴールキックのはずが、主審はコーナーキックを指した。
『おいっ!相手にあったてるからゴールキックだろ!』
僕は声を出した。
実はベンチからだとよく見えなかった。相手にはあたっていないかもしれない。でも、それはどうでもよかった。ベンチからでも声を出して試合に出て選手に戦ってる気持ちを伝えたかった。
補欠生活が長いからわかっていた。
ベンチからの声は力になる。
戦ってるのは、試合に出ている選手もベンチも同じだ。
そんな事を思っていると、主審がこっちに近づいてきた。
そして、僕にレッドカードを出した。
は?
『退場だ。この会場から出ていきなさい。』
は?
僕は審判への暴言で退場になった。
ベンチから退場になった。
最後の試合で。
いや、何が【サッカーの神様】だよ!!!
そんなのいねーじゃねーか!!!
なんで最後の試合でこんな事にならなきゃいけねーんだよ!ってか、ベンチから退場って!!!大学生の県リーグだぞ!!!そんなちゃんとやんなよ!!!それくらい許せよ!!!そもそもお前のミスジャッチっぽいぞ!!!ははーん、さては図星言われてムカついたのか??
別にいいよ。どうせ試合には出ないし。ただ、会場から出てどこにいけばいいの??
ロッカールーム??プロみたいに??ロッカールームなんてないよ??だって所詮大学生の県リーグだもん。
そもそも大学生になって、部活って。
キャンパスライフを楽しめよ!!!なんのたの大学生だよ!!!遊びか勉強かバイトでお金ためるか、そのどれかだろ!!!部活って!笑
【サッカーの神様】ありがとう、じゃねーんだよ!!!
そもそと【サッカーの神様】って!!!
それジーコだろ!!!
僕はサークルとかで楽しそうにしている大学生が嫌いだ。
お前らもなんかから退場になれ!!!!
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