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100点よりも100%を

厳しいのはいつもそう。
いつもみていた100%は徐々に物足りなく感じてしまって、いつしか100点を求めているような現状。チームとはこうも難しいモノなのか、とちょっと悲しくもなります。まぁ、その儚さも含めすべてが好きですが。

上手くいかないシーズン。思わずため息の出る、フラストレーションの溜まる今季ですが、ここにきてようやく、ようやく兆しが見えてきた。ここ数試合の変化を一過性のものにしてほしくないがために「結果出てないけど、ここ、頑張ってんだぜ」ってのを伝えたい。


今期の大きなテーマはズバリ「脱・疑似カウンター」です。これは一昨年の夏ごろから試合毎にマイナーチェンジを施し、ごまかしごまかしなんとか勝ち点を拾って食いつなぎつつ、現状からの脱却を緩やかに行うという意味合いが強かった。が、いよいよ「緩やかな」変化では誤魔化しが利かなくなってしまったのが現状。

今回なぜ筆を執ったか、ですが、川崎F戦の後半の入りをきっかけに横浜FM戦からの5試合で、これまでにない大きな変化が久しぶりに感じられたから。


「逆境上等!」の精神はとても好きですが、気丈にふるまってもどうしても勝敗に左右されるもの。勝つためにどうあがいて、頑張っているかを汲んであげたい。そこらへんを共有したい。どう変化させたか。それにより何が良くなり、課題は何か。ここを書いていきます。


ここ数試合の振り返り

まずは川崎F戦以降のリーグ戦の振り返り。
基本のフォーメーション→ビルドアップ→前プレ→守備(自陣)と4つの局面での立ち位置の変化に注目して行きます。

J1-24節 横浜FM戦(1‐5●)
バチボコに、木っ端みじんになってしまったこの試合。
まさかの井上健太を右SBにした4‐2‐3-1を採用し、これから変化していくためのマイルストーンにしたかったが、、、
「前田大然対策」の井上は9分に警告をもらうとトーンダウン。チームとしてもボールをろくに持たせてもらえなかった。まぁ最初からうまくいくならこんな順位にはいないわけで…


J1-25節 札幌戦(1‐1△)
CKから呉屋が移籍後初ゴールを決めたことくらいしか記憶にない…
が、ここの試合から攻守の4局面が見えてきました。

スタートのポジションは3-4-1-2。
・ビルドアップでは香川が下がってボールをもらいに行き、増山が前へ
・前プレでは2トップが相手CB-SB間に立ってアンカーをトップ下の町田が見る(※今回はあくまでも大分側の立ち位置の変化を見るため、相手選手の立ち位置や噛み合わせは省略しています)
・自陣では増山が最終ラインに吸収されて、伊佐と町田がポジションチェンジ

この日の狙いは呉屋を左サイドと中央のファジーな位置に立たせ、カウンターの際に坂からピッチを横断したロングボールで札幌の右CBの岡本をサイドに引っ張り出すことと、増山が上がる時間を確保することであった。


J1-26節 神戸戦(1‐3●)
ほえ~。香川ってJ1初ゴールやったんか~。
武藤の腕の使い方と菊池のウザさにイライラして、「ドーム特有の暑さで~(ニチャァ」って増田解説員の解説()にもイライラさせられた試合。

・長谷川をアンカーに据えた3-3-2-2(3-1-4-2)でスタート
・ビルドアップは複雑に見えるが反時計回りに選手を動かしました、って並び。香川下げーの増山上げーの。
・前プレは2トップが神戸の2CB(+下がってくるボランチ)を見る仕組み。神戸のボランチはサンペールが下がるため、4月の時みたいに簡単に中央で面白いように剥されてカウンター地獄にはならずに済んだ
・自陣では内側を締めた5-3-2。おそらく中央に人数をかけて大迫への楔をつぶしたかった。

この日のトピックスは「呉屋と長沢の共存」。
巨神兵長沢をビルドアップの際にトップ下的な位置にして、相手が前からプレッシャーに来た時にシンプルに蹴って長沢を収め所にしましょう、と。で、呉屋を裏抜けマシーンにして相手のDFラインとボランチを間延びさせようというもの。結果はまぁ…長沢に機動力を求めるくらいなら伊佐のが良くねぇか?というビミョーなものに。


J1-27節 広島戦(1-4●)
正直、一番心が折れた試合。幸先よく先制したことと、思った以上にリーグ初先発の藤本がハマってたことくらいしか記憶に残らず。ほっこりしたのは試合終盤のJ.サントスの落としが左サイドの梅崎にまで渡って「そうはならんやろ~」ってちょっと笑ったくらい。2点も取るな。

・前節ではアンカー長谷川がハマらなかったため、Wボランチに戻す
・ビルドアップではこの試合も反時計回り。中央前目に人数を掛けたいので、ボランチの片方が「深さ(この図では下田)」を作って内側でトライ
・前プレでは、相手のスペシャルな配給源である青山に小林ゆがマンマークで対応
・自陣ではボランチが横並びになって5-4-1で「いつもの」守備

この日はスーペル黒子のこばゆお兄さんが暗躍する試合だった。ビルドアップでは最終ラインと中盤の糊付け役、前プレでは青山とデート、自陣での守備では肉壁と五臓六腑に染み渡るもの。が、しかし。佐藤寿人解説員(有能)からたびたび指摘があったように「距離感が離れすぎていた」ため、時間が経つにつれて元気がなくなっていき、しんどい試合になってしまった。


J1-28節 湘南戦(2‐0○)
久々の勝利!無失点!
今季おそらく初めての6ポイントゲームを掴み取った試合。内容はまだまだ詰めていかねば…といったものだったが、勝ったからオッケー(オッケーではない)である。勝ちは万病に効くんじゃぁ~

・小出下げーの香川上げーの
・ミドルサードから下田をサイドに流して補強。香川は一度インサイドに「潜って」からサイド大外へ流れる
・前プレでは渡邉がコースの限定。アンカーのケアを長沢。下田が定位置に戻る
・自陣では5‐4‐1でセット

狙いは相手のアンカー脇。香川を相手のマークが付きづらいところに配置して、大外のケアを三竿と下田が見る。サイドに下田を動かすことで、茨田が手前の下田と背後の香川という2枚を同時に見る必要を迫る設計。
リスクとしてビルドアップで引っかけられると、下田がサイドにいる分中央がスカスカになるが、そこは羽田がにらみを利かす。ボール奪取で計算を立てるために小林ゆでも長谷川でもなく羽田だった。また、無理に繋がずにロングボールもオッケーにしていたため大きな事故も起こらなかった。


ここ数試合のまとめ

・3-4-2-1から可変で4バックでビルドアップは継続。が、「落とす」選手はボランチからSBへと変更
・増山シフトを採用。走力と突破力に長けた彼を生かすための立ち位置を1つの基準にする
・攻撃の形は相手によって調整

みたいな印象を受けた。
最初のビルドアップについてはこちらの記事に当時、予測として書いたものがあるので参考にしていただいて…
ここからはこの4試合を終えて「改善点」と「課題」を共有したいな、と。

その前に、これまでの選手間の動きをおさらい。こことの比較も含めて書いていきます。

・基本の立ち位置には変化なし
・ビルドアップでは
①ボランチが1枚下がって4バック化。3バックの左右が開く。もう片方のボランチがアンカーに
②シャドウの2枚はアンカーの前に立ってビルドアップの出口(ボールの受け手)に
③WBはサイドを駆け上がって大外張っとけおじさん。
・前プレは1トップ2シャドウでコースを限定した5‐2‐3
・自陣ではいつもの5‐4‐1

これまでの5‐2‐3の前プレ(主に前線の3枚)の役割は「相手のパスコースの限定」であった。相手に「ん~。前にボールが届けられない!」ってさせている間に大分は両サイドのWBを自陣に下げて守備陣形をそろえてしまう事が目的。つまりは大分の守備は「5‐4‐1でセットできたらある程度失点しない」という計算の下、設計がなされていた。
また、これまでは失点が少ないからロースコアでOK。僅差で焦った相手の寝首を掻くために、ロングカウンターを中心に攻撃も組み立てていた。
が、今期はいよいよこの構えたら簡単には失点しないという前提が崩れたため、守備も攻撃も共に計算が立たない。さてどうしたもんかというのが今季の苦悩である。

というのを踏まえて…

改善点

ここ数試合で大きく変わった点は前プレでボールを奪いきることができるようになったことだ。これはハイライトだけ見てもなんとなく感じ取れるはず。

大きな変更点は前プレの設計。
これまでは5‐2‐3でコースの限定を目的としていたが、前線の人数を1人増やして4人で制限をかける仕組みに変更。じゃあ+αになる1人は誰?となったのは(今のところ)増山であり、小出であった。
CFとボールサイドのシャドウが2トップ的な振る舞いをして、サイドに誘導。SBにボールが渡ったところでプレッシャーを強めて奪い取る。無理に内側を通して来たらボランチが対応して自陣1/3より前でボールを奪いきることを目的とした。
より前でボールを奪うことができれば、その分よりゴール近くでプレーができる。人数もいるため、攻撃に迫力が増すのも頷ける。

湘南戦では、前への意識を「連動させる」ことができた。
ボールサイドに人を多く配置できるように1レーン分横幅を狭めて選手間の距離を狭めた。結果としてコンパクトな守備を成立させ、ボールを奪った後に選手間の連動が多くみられた。

今のところ明確な改善点はこれだけ。これだけ!?ってなるかもしれないが、ここ2年くらいの足踏みからすると相当大きな進歩だと感じる。

課題点

この前プレの時に一時的に4バックにするという変更。これはすなわち、「レーンを跨いだ」ポジショニングが肝である、ということである。

これまでの3‐4‐2‐1ベースの可変は、ビルドアップ時こそ後ろを4枚にするが、選手の移動は基本的に縦移動。同じレーンに留まり、高さを調整するため、「ボールがどこにあるか」を基準に適切な位置が分かりやすい。また、左右対称の動きをするため、逆サイドの選手の立ち位置を見てバランスが取れる仕組みだ。これで弱点となったのが唯一対称の動きをしないボランチ→アンカーの所。上記の図では長谷川の立ち位置。ここでボールを奪うと剥き出しのDFラインとタイマン勝負なため、相手チームは「大分にボールを持たせてアンカーの所で突けばひっくり返せるぞ」となった。
これを隠すために今年の夏まではいろいろと工夫を凝らした来たが結果が付いてこなかった。
そのため、この夏からは上記のようなWBをつるべの動きにしてボランチを下げない、前から網を張ることをして重心を前へと押し上げた。

が、ここで課題が。

ボールがどこにあるかにより立ち位置を動かすのが現代サッカーの大前提。この夏で新たに取り組んでいるサッカーは、これまでのように縦軸主体の移動だけでなく、横軸。つまりはレーンを跨いだ立ち位置の変化がより必要に。
そのため立ち位置が大きく変わる前線からハイプレスをかけてくるチームを相手にすると、適切なポジションに立てず、結果として大きく陣形が崩れて簡単に失点してしまう。マリノス戦がまさにそうであった。
これから大分が抱えるであろう苦悩は「ハイテンションなサッカーに耐えうる強度があるか」に尽きる。今までより速いスピードで決断をして、相手より勇気をもってプレーできるか、だ。
いい意味で膿を出して問題点と向き合えたマリノス戦。ボールに対して強く、前向き(ゴール方向へ)にプレッシャーをかけて、ゴールへ迫る意志を形にすることを目的にしていた。そのため、DFラインはボールの受け手に躊躇なく寄せに行き、奪ったらまずは縦にパスを入れることを意識していた。
この試合で課題として際立ったシーンがあった。レオ・セアラ―の3点目のアシストにつながった前田大然の裏抜けだ。大分のDFラインは前で奪う意識と並行して、どこまでは我慢する、どこからは全体を上げてオフサイドトラップをかけるか、という判断が揃わなかった。また、最終ラインがインターセプトを積極的に試みるため、ボランチと横並びになってしまい、結果としてバイタルエリアが空くことがしばしばあった。
続く3試合では、90分間を通じて安定せず。どこかの時間帯でDF、MF、FWの3ラインが連動せず、どこかが間延びしてしまっていた。間延びした「間」でボールをつながれてしまい、芋づる式にスペースができてしまう悪循環から失点を喫してしまった。


100点よりも100%

ビルドアップと前プレを中心とした攻守の4局面は、それぞれなだらかに立ち位置を変えることで、優位性を保つことを目的とする。ここに忠実であったがために、負け込むとやれ「プレーが遅い」だの「選手の個性が見えてこない」といった負うべきリスクにケチが付いてしまっていた。が、その根底から変えましょう、というのがこの夏からの取り組みである。
「継続」の名の下に5年間かけて醸成してきたものをこのタイミングでひっくり返すのは並大抵のことではなく、これからの3か月は片野坂監督の集大成になりうる、大きな変化だ。
このチャレンジはまだ日が浅く、改善点より課題が多く感じられるのは甘んじて受け入れていくしかないだろう。
今、選手たちが取り組んでいること。それはまさに「最大値」であると感じる。この先にJ1残留を掴み取ることができれば、これから先の大分トリニータは新たなステージへと向かうことができるように思えて仕方がないのである。




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