見出し画像

女性向け情報番組「アルテミッシュNIGHT」について

1991年からテレビ東京で放送がスタートした女性向けのお色気番組「ギルガメッシュNIGHT」。1990年代と言えばビデオデッキが普及し、成人男性たちはアダルトビデオへの人気が集中していた時代である。そのような状況の中、当時のテレビ東京の制作陣たちは「男性にはAV人気があり、もう男性視聴者は深夜番組から離れてきている。だから今度は女性のためのお色気番組を制作してみよう」と判断します。

ギルガメッシュNIGHT オープニング映像

¨男も楽しめる、女の子のためのエッチ番組¨というコンセプトで放送がスタート。当時、番組のプロデューサーも「この番組は女性の視点で作っており、エロ番組といわれると心外。」と語っている。女性視聴者を中心に男性視聴者や思春期の中高生まで見てしまうなど人気番組となった。1960年代後半~1970年代前半生まれの2020年代現在、主に50代の人たちがこの番組の世代である(バブル世代 - 団塊ジュニア(氷河期世代))。

アルテミッシュNIGHTの司会を務めた石黒 賢と松田 純

90年代を代表する深夜番組として人気を得ていたが、90年代中盤になると初期メンバーや全盛期の出演者たちが徐々に卒業してしまう。レギュラー陣が一新され、それまでの人気コーナーも終了するなど人気が低迷。番組終盤の頃には視聴者から「内容が既にマンネリしている」・「お色気番組として笑って見過ごすことができない」といった苦情が多数寄せられるようになり、テレビ東京の放送番組審議会で番組内容が審議された。当時、テレビ東京の社長だった一木社長をはじめ、審議会の委員など計9名が参加。
・「上半身裸だからいけないということはないが、作り手の品位の問題だと思う。
・「4月の番組改編でギルガメッシュないとは3月で終了させる
・「4月からは路線は似ているが若い女性が見ても楽しめることを目指して「アルテミッシュNIGHT」を編成する
審議の結果、これらの意見がまとまり、ギルガメッシュNIGHTは終了した。

アルテミッシュNIGHTの名場面シーン

前番組のマンネリ化が検討された結果、新たにスタートした「アルテミッシュNIGHT」。ギルガメッシュNIGHTは、古代メソポタミア・シュメール初期王朝時代の伝説的な王の「ギルガメシュ」が由来であったが、アルテミッシュNIGHTは、ギリシア神話に登場する狩猟・貞潔の女神「アルテミス」から取った番組名である。女性向けの情報番組ということで「アロマフィットネス」・「おしり特集」・「バストアップ」・「エステ」・「最新水着特集」「キャバクラ道場破り」・「コギャル変身メイク」・「美容整形」といった女性視聴者をターゲットにした健康的な内容が多く放送された。

白鳥智恵子が担当していたコーナー「ランジェリーシネマ」

「ギルガメッシュNIGHT」の後継番組ということで前番組からのタイトルおよび設定やコーナーを受け継いでいる点もある。
ギルガメ治療院→ラップ治療院
ギルガメ温泉巡り(温泉ロケ)→ラブラブ秘湯めぐり
バスルームシネマ→ランジェリーシネマ
ギルガメ写真館→アルテミ写真館
GNNヒップライン→アルテミヘッドライン 

アルテミッシュNIGHT 名場面

ギルガメッシュNIGHTの平均視聴率は4~5%台だったのに対し、当番組の平均視聴率は2%台と伸び悩み、当初から「男が見ても女が見てもつまらない」といった意見が多く寄せられた。また、人気を得られなかった原因に番組の放送開始前後の時期にフジテレビの「A女E女」、TBSの「ランク王国」、同じテレビ東京の「新世紀エヴァンゲリオン(再放送)」といったライバル番組が放送されていたことが僅かに影響している。前番組のような人気は得られなかったため、番組は2年間で終了した。以降、同局ではお色気要素のある深夜番組は2005年の「やりすぎコージー」まで5年間休止状態となる。

ギルガメッシュNIGHT 番組後期のシーン 

このような番組が姿を消していった理由として現在では主に「規制が厳しくなった」・「今では放送できない」という意見がよく挙がるが、これは間違いである。実際にはギルガメッシュNIGHTも1995年以降から人気が低迷しており、ビデオデッキやアダルトビデオの普及でテレビ放送においてのアダルト系番組は視聴率を落としていたので(VHSに番組を録画して視聴した場合も視聴率に反映されない)、この時代は深夜のお色気番組の影響力はそこまで大きくなかったと見るのが正しい。

2008年にテレビ東京で放送された「おねがいマスカット」

ギルガメッシュNIGHTとアルテミッシュNIGHTは女性向けのお色気番組として企画されたが、番組が進行していくごとにお色気は下品なエロに走ってしまい、同性受けする女性タレント(AV女優、グラビアアイドル)も少なかったという副作用が応じていた。当時は女性タレントやAV女優のルックス・容姿・スタイルなどがあまり求められていない時代であり、番組を観ていた女性視聴者は多かったものの、飯島 愛や細川ふみえといった一部の女性出演者を除いて女性向け番組でありながら女性タレント個人の同性ファン層は広がらなかった。テレビ東京はその反省点としてギルガメッシュNIGHTの放送終了から10年後の2008年にグラビアアイドルとAV女優が出演する「おねがいマスカット」を制作した。ギルガメッシュNIGHTのような過激なエロ要素を排除し、女性でも憧れるルックスの良いAV女優とグラビアアイドルを揃えた。お色気番組ではなく、あくまで通常のバラエティ番組として放送され、女性タレントも恵比寿マスカッツ = アイドルまたはタレントとして売り出した。夕やけニャンニャンの深夜版というコンセプトで企画されたため、アイドルの冠番組として評価する方が正確である。結果、若い女性視聴者を多く獲得、恵比寿マスカッツのメンバー1人1人にも女性ファンが付き、同性人気の獲得に成功した。以後、この番組のファンだったまたは恵比寿マスカッツのメンバーに憧れていた女性がAV女優としてデビューする事例も増加した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?