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俺の弾丸はコレだ!!個人的マカロニ・ウエスタンのススメ!!

はじめに

※この記事はにわかマカロニファンが好き勝手に書き連ねた適当な内容となっています。
情報の正確さなどは極力調べた上で書いてはいるつもりですが、ひょっとするとマニアの方々には不適当に感じるような事を書いている恐れがありますのでご了承ください。

それはとある年末の山奥での事。
久しく会った友達とコテージを借りてバーベキューを楽しんでいた時に映画の話になる。
俺のお気に入りの映画は「夕陽のガンマン」で死んだ時はこれのDVDを墓に入れてほしいという話をすると、マカロニ・ウエスタンの映画でお勧めを教えて欲しいと尋ねられた。
そう聞かれるとコレだ!という回答は常々考えていて、その時も「ドル箱三部作と怒りの荒野が鉄板だ」と答えた。
…答えたものの、後で考えるといささか雑な返答だったように思える。
なので、マカロニ・ウエスタンについて語りたいと思う。
荒野と酒と弾丸と、脂ぎった男の映画。
所詮はネットで知った口を叩く人間の勝手な論評ではあるが、どうかご静聴願いたい。

そもそもマカロニ・ウエスタンとは?

なんでマカロニやねんグルメか、なんて思ったりしたのはジャンルを知る前の自分のことである。
マカロニ・ウエスタンとは、大雑把に言えば「イタリア製の西部劇」である。
本来、西部劇といえば開拓時代でのアメリカの荒野を描いたものであり、言ってみればアメリカの時代劇である。
有名所を言えば「荒野の七人」や「OK牧場の決闘」、「3時10分、決断のとき」がそれにあたる。
このアメリカの本場で撮られた西部劇を見て、ウチの土地でも似てるからイケるやん的なノリをもってイタリアの人々が撮り出したのがマカロニ・ウエスタンである。
イタリア人がアメリカの時代劇を撮っているのである。
日本で例えるなら、水戸某や遠山の某をC国やK国が撮ってる的なトンチキなノリだ。
しかし、そこはセンスに定評のあるイタリア人。
スタイリッシュな撮影技にお国柄ともいえる残酷描写で独特のかっこよさを演出し、1960年代に一大ブームを巻き起こしたのだ。

ちなみに本来なら「スパゲッティ・ウエスタン」というが通称でマカロニと呼ぶのは日本と隣国くらいのものである。
理由は「さよなら、さよなら」でお馴染みの淀川のオジキがそう呼び始めたのが定着したから。
スパゲッティじゃ語呂が悪いというのと、マカロニよろしく中身がスカスカというダブルミーニングらしい。

他にもマカロニ・ウエスタンというジャンルについては色々あるが、長くなるので興味があればwikipedia等を参照しよう。
次項からが本題のお勧めマカロニ・ウエスタンの紹介である。

俺の弾丸はコレだ!!マカロニ初心者に捧ぐ、傑作マカロニ・ウエスタン!!

その1「荒野の用心棒」

マカロニウエスタンの父・セルジオ・レオーネ監督作品の初期の3作、名無しのガンマンを主役に据えたシリーズを「ドル箱三部作」と呼ぶ。
「荒野の用心棒」はその第一作目で、原点にして頂点、金字塔とも言える作品だ。
当時、本場アメリカの西部劇ドラマ「ローハイド」の主演を努めたものの、いまいちうだつの上がらなかったクリント・イーストウッドを一躍有名俳優にのしあげた作品でもある。
無精髭にポンチョ、何を考えているのか分からない凄腕のガンマンが、町を支配するギャングと腐敗した警察の両方に自分を売り込み、騙しながら両陣営を壊滅へと追い込もうとするが…といったあらすじ。
博識な映画マニアであれば、今のあらすじに既視感を覚えるだろう。
実はこれ、黒澤明監督の映画「用心棒」の西部劇アレンジなのだ。
大筋は「用心棒」のストーリーをなぞってはいるものの、細かいところで差異があったりするので、「用心棒」と「荒野の用心棒」どちらも視聴して見比べるのも面白いと思う。
個人的な見どころはラストの決闘シーン。
人質を取られ、大人数相手に名無しの男が挑むのだが、いかにして敵を騙し討ち、これらの無法者から勝利を得るのか…。
「用心棒」では三船敏郎演じる桑畑三十郎が流れるように敵をなぎ倒していくのが圧巻だったが、「荒野の用心棒」では行き当たりばったりに見えて実は緻密に計算された戦いになっているのだ。
一度決闘を見届けて「ハッタリ」を理解した上で、状況を分析しつつもう一度決闘シーンを見るとそこには唸る発見がきっとあるだろう。

…余談だが、この「荒野の用心棒」。
実は当初、日本の東宝に無断で作ってしまったことになっていて、がっつり訴訟を起こされている。
興味がある人は調べてみると面白いかもしれない。

その2「夕陽のガンマン」

冒頭で自分が述べた墓まで持っていきたい映画。
上記の「荒野の用心棒」の続編であり、ドル箱三部作の二作目である。
(一応、時間軸は繋がってないらしい。)
前作から引き続きイーストウッド演じる名無しの男・「モンコ」をメイン主人公とし、今回はイーストウッド同様に本場アメリカでうだつの上がらなかった俳優・リー・ヴァン・クリーフがベテランガンマン・「モーティマー大佐」というもう一人の主人公を務める。
個人的にこのリー・ヴァン・クリーフ、世界一格好いいハゲ(褒めている)だと思っており、鷹の目を思わせる鋭い眼光にシュッと引き締まった体躯が画角映えする名優である。
対して今回の宿敵・エル=インディオは前作でも敵の親玉を努めたジャン・マリア・ヴォロンテが怪演、前作にあった粗暴や狡猾さに加え、今回は薬物中毒による狂気も加えられてより凶悪な敵役を仕上げている。
物語はモンコとモーティマー大佐、二人の腕利きがエル=インディオという高額の賞金首を巡って、時に騙し合い、時に互いの腕を信頼してインディオを追い詰めていくが、この追う者と追われる者、一筋縄ではいかない因縁があり…といったもの。
個人的な好きなポイントは、「モンコ(不具)」の名が表すように主人公は銃を扱う時以外は一切右手を使わないといった所作や、脇役の一人ですらアクの強すぎる俳優陣、そして今作も健在の緻密な計算が存在する決闘シーンと枚挙にいとまがない。
同じ賞金首を追うライバルでありながら、互いの腕を信頼し合うドライな友情と、それ踏まえた終盤のやり取りは、見終わった後に胸にこみ上げるものを感じずにはいられないだろう。
決戦で使った銃を元の持ち主に返すくだりは、個人的にこの映画のベストモーメントだ。

その3「続・夕陽のガンマン 地獄の決斗」

アエアエアー!!
ドル箱三部作の3つ目、続・夕陽のガンマンは原題「The Good,The Bad,The Ugly(良いやつ、ヤなやつ、くそったれ)とある通り、3人のガンマンのしのぎあいを織り交ぜた荒野のロードムービーだ。
主演はもはやドル箱三部作の顔と言っても差し支えがないクリント・イーストウッド演じる名無しのガンマン(今回は「ブロンディ」と呼ばれる)に、同じく前作から再びリー・ヴァン・クリーフが登場。
今回のクリーフ師匠は鋭い目つきを活かした冷酷な殺し屋・「エンジェルアイ」を好演、悪役俳優の本領を発揮している。
そして3人目の主演、イーライ・ウォラックは本場アメリカの「荒野の七人」で敵役を演じたベテラン俳優で、本作ではブロンディと結託しつつ、あわよくば出し抜こうとする卑怯者・「トゥーコ」を熱演している。
物語は大まかに言えば、南北戦争のいざこざで隠された20万ドルの大金を巡って【良いやつ】ブロンディと【くそったれ】トゥーコが睨みを効かせながら一緒に大金の元へ旅し、それを【ヤなやつ】エンジェルアイが追跡、虎視眈々と大金を狙う。大金を手にするのは果たして!?ブロンディとトゥーコの友情の行方は…!?といった内容。
モリコーネの情緒ある音楽をバックにゆったりと荒野を映す情感たっぷりのレオーネ監督的な作風が確立された映画であり、雄大かつ寂寥感漂う荒野の情景がありつつも、南北戦争を背景にした戦闘描写やマカロニお約束の暴力シーンもふんだんに盛り込まれた見どころ満載のロードムービーだ。
個人的な見どころはやはり終盤の大金の隠し場所に到達してからの三つ巴の決闘シーン…からの首吊り紐がぶら下がった衝撃(!?)のラストシーン。
ネタバレになるのであまりここには書けないが、最後のどうなる!?どうなの!?と緊迫した場面からの「HEY BLONDIE! YOU KNOW WHAT YOU ARE!! JUST A DIRTY SON OF A BIAAAAA!!」のシーンがすごく面白いのでぜひともその目で確かめて頂きたい。
なお、個人的に推奨する話になるが、この続・夕陽のガンマンを初めて見る際はできることなら完全版…ではなく、できることならテレビ放映版の視聴をオススメする。
というのも、この続・夕陽のガンマンは完全版だと3時間近くの長尺の映画であり、前述のレオーネの作風もあってダレてしまいかねない内容だからである。
テレビ放映版なら2時間ほどの内容で本作の魅力も十分伝わるので、長尺の映画が苦手な人はそちらを選んだ方がいいと個人的には思う。
(もちろん最初から完全版を見ても問題はないが。)

その4「怒りの荒野」

4つ目に取り上げるのは先程のドル箱三部作を手掛けたレオーネ監督の弟子にあたるトニーノ・ヴァレリ監督作品「怒りの荒野」。
マカロニ御三家の一柱にしてマカロニ界随一の伊達男・ジュリアーノ・ジェンマが主演を務め、相方兼悪役は前項でも紹介した悪役俳優・リー・ヴァン・クリーフが登場する。
あらすじは、娼婦の子として産まれ町の住民に蔑まれながら生きていた青年・スコットが、町に流れ着いた腕利きのガンマン・タルビーと出会い、「ガンマン十戒」で始まる銃捌きの手ほどきを受ける。やがてスコットは腕利きのガンマンとなり、タルビーの右腕として町で鳴らすようになるが、タルビーはスコットを利用して町の実権を握り、支配を目論む。果たしてスコットはタルビーの右腕として生きるのか、それとも…といった内容。
ジュリアーノ・ジェンマといえばスラリと伸びた長い脚に甘いマスクのイケメン俳優で、ガンプレイからヒロインまで軽やかに捌ききる優男的な役がお約束だったのだが、この怒りの荒野では蔑まれた境遇に与えられた力と自分の中の正義の間で苦悩する青年を好演、さらにもう一人の主演であるリー・ヴァン・クリーフは夕陽のガンマンでのモーティマー大佐が「善の」クリーフの極致とするならば、この怒りの荒野で演じる腕利きガンマン・タルビーは「悪の」クリーフの極致といったところで、主人公スコットに厳しくも力を授ける師匠として、そしてスコットを利用して町を手中に収めようとする悪党の役を見事に演じきっている。
ストーリー的にもガンマンの心得「ガンマン十戒」やスコットとタルビーの師弟対決、そして主人公が手にする必殺武器の「ドク・ホリディの銃」など男の子が大好きな設定が詰まっており、痛快な内容となっている。
マカロニ・ウエスタンと言えば上記ドル箱3部作が鉄板で後は癖が強い作品がほとんど(個人の主観)だが、レオーネ監督が手掛けた作品以外でこれに匹敵するマカロニタイトルといえば個人的にはこの怒りの荒野を挙げるのが相応しいと言わせていただこう。

曲者揃い!!その他のマカロニ・ウエスタンをピックアップ紹介

ここまで紹介した4作は今見ても通用する傑作としてタイトルを挙げさせていただいたのだが、マカロニ・ウエスタンには他にも癖の強いタイトルが多数存在する。
筆者が実際に見た上で「これは!?」と思ったキワモノタイトルをこの項では改めて紹介させていただこう。

  • 続・荒野の用心棒

「続~」となっているが、前述の荒野の用心棒と関連はない。(配給会社が勝手につけた邦題)
マカロニもう一人のセルジオこと技巧派監督・セルジオ・コルブッチが作り出したこの「DJANGO」は哀愁漂うテーマに乗って泥まみれの荒野を棺桶を引き摺って歩く無頼の男・ジャンゴを世に出した怪作だ。
ジャンゴというキャラクターはマカロニ・ウエスタンのジャンル内で大人気を博し、ジャンゴが出てこないにも関わらずタイトルにジャンゴとつけられたマカロニ映画を乱発させた、マカロニを語る上では欠かせないキャラクターだ。
ジャンゴ演じるフランコ・ネロもマカロニ看板俳優の一人であり、哀愁漂う渋いキャラクターを数多く好演している。
全体的に暗くじっとりとした絵面に、意味ありげに引き摺った棺桶に何が入っているのか思いを馳せながら鑑賞するとより入り込めるだろう。
(逆を言うと棺桶の中身を知ると楽しさが半減するかもしれない…今の時代にネタバレもクソも無いが。)

  • 復讐のガンマン

勇壮なテーマ曲から始まるこの映画、上記でも紹介したリー・ヴァン・クリーフがこの映画では正義に燃える熱血ガンマンを好演。相棒にマカロニ三枚目俳優・トーマス・ミリアンを迎え王道の西部劇が展開する。
見どころは後半の決闘三連発シーンで、白鳥の湖をバックに緊迫の早撃ち勝負や、拳銃vs投げナイフといった無茶な早撃ち勝負も繰り広げられる。
まさに痛快マカロニ・ウエスタンといった感じの映画だ。

  • 血斗のジャンゴ

上記の復讐のガンマンと同じく、マカロニ第三のセルジオと呼ばれたセルジオ・ソリーマ監督の社会派マカロニ・ウエスタン。
ドル箱三部作で悪役を務めたジャン・マリア・ヴォロンテといつもはコミカルな役とは違いシリアスな演技をするトーマス・ミリアンのW主演となる今作は、善良だが体の弱い学者が悪党だが義侠に厚い盗賊と行動したことにより、学者が悪徳に目覚め、それを見た盗賊が己の正義を見つめ直すといった作品の善悪のキャラクターが逆転してしまうという衝撃の内容となっている。
特に主演のヴォロンテが序盤は弱々しい学者を演じながらも、物語が進むに連れ徐々に悪意に歪む顔つきになっていく様は息を呑まずにはいられない。

  • 情け無用のジャンゴ

上記でも紹介したマカロニ三枚目俳優・トーマス・ミリアンを主演に迎えた本作はジャンゴが出ていないにも関わらず何故かジャンゴと名を関したタイトルである。
身の毛もよだつ問題の超残酷シーン”などと当時のポスターでは煽られていたようだが、映画の内容としては正直言って駄作である。
だが、筆者の知る限り(筆者が見漁っていた当時の掲示板など)では、この映画はマカロニ映画通の間では定番のタイトルとして愛されており、マカロニを語るにあたって欠かせない作品である。
物語半ばで目的を完遂し宙ぶらりんになる主人公、屋敷の引きこもり奥さんと不倫にふける主人公、黒尽くめの男たちに乱暴されるレイ・ラブロック(イケメン)、洞窟で磔にされてコウモリにちくちくされる拷問にあっさり折れてしまう主人公(情け無用っていうか情けねぇジャンゴ)、挙げ句に馬を爆破してシタり顔で去る主人公…とツッコミどころが多い内容だが、筆者的には黄金を使ったギミックがお気に入りで、特に黄金で鋳造された弾丸を受けた人間の末路は、人間の業を利用したまさに情け無用のギミックだなぁと今でも感心する次第だ。

  • 群盗荒野を裂く

荒野の用心棒に始まり、夕陽のガンマン、血斗のジャンゴでも怪演ぶりで魅せてくれた社会派俳優・ジャン・マリア・ヴォロンテ。
本作はメキシコ革命のさなか、列車を襲う山賊と謎のアメリカ人青年の出会いを通して、革命とは何かを真摯に描いた真面目なマカロニ映画で、ヴォロンテは革命を通じて自分の使命を見出す粗野な山賊を熱演する。
痛快だが中身が無いとまで揶揄されがちなマカロニ映画でも一線を画する社会派映画であり、時代を越えた今でも見入ってしまうことうけあいだろう。
「いいか、爆弾を買え!!パンじゃなくて爆弾だぞ!!」

  • ガンマン大連合

技巧派のセルジオ・コルブッチが監督した作品。
前述の群盗荒野を裂くに続いて、こちらもメキシコ革命を取り扱ったマカロニ映画だが、うって変わってこちらは痛快さに比重を置いた内容になっており、肩の力を抜いて観られるアクション映画に仕上がっている。
主演は革命に燃える青年役にトーマス・ミリアン、その相棒の武器商人役に本家ジャンゴことフランコ・ネロを据え、よもやマカロニ映画史上最もキルカウントが高いのではないかといったど派手な銃撃戦が繰り広げられる内容となっている。
絶望的な状況に抗わんとする男たちの熱い友情で本作が締めくくられるのもかっこいい。
「やっちまおうぜ!!野郎ども!!」

  • 殺しが静かにやってくる

マカロニ技巧派監督・セルジオ・コルブッチの異色作であり、問題作である。
白一色の雪原の舞台、唖者の主人公、黒人のヒロインなど、マカロニ・ウエスタンはおろか西部劇のお約束を外すに外しまくった内容で、ラストも衝撃的な結末が待ち受けている。
また、本作は内容が残虐過ぎて公開を中止した国がある、主演俳優の一人が自分の娘を虐待していた事が死後発覚するなど、まるで呪いと言わんばかりの曰く付きの作品である。
(別に呪いのビデオとかそういう内容じゃないので安心してほしい。普通にマカロニ映画として面白いので、興味があれば観てみよう)。

おしまいに

友達に紹介するマカロニ・ウエスタンという目的で今回の記事を書いてみたのだが、いざ書き始めるとアレを書こうコレを語ろうとなど、思ったよりも膨れた内容になってしまった。
果たしてこんな記事で友達に正しく伝わるだろうか心配になるが、とにかく筆者が観た中でマカロニ映画の面白い要点が伝われば幸いかなと思う。
この記事ではまだまだ書いてないアレとかコレとかたくさんあるが、とりあえずマカロニ・ウエスタンを観たことがない人向けの紹介としては必要なことは書けたと思うので、また何かの機会があれば視聴済みのマカロニ映画の感想を書き連ねた記事なんか書いてみようかなと思う。
っていうかまだ観てないマカロニのDVDを積んでるままだから、どっかで消化しないとだね。

ここまで読んでくれた方へ。
長文の記事に付き合っていただきありがとうございました。

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