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産業医が語る、産業保健領域の動向と重要性【後編】 健康問題を経営問題にしないために

「産業保健やメンタルヘルスは未開拓だからこそ可能性がある領域」———そう語るのは、ウェルプラでメディカルディレクターを務める堤先生です。前編では、産業保健領域の発展性や魅力についてお聞きしました。そして後編となる今回は、今企業はどのような課題を抱えているのか、そこに対してウェルプラがどのような価値を発揮できるのか伺いました。

<プロフィール>
堤多可弘(ウェルプラ メディカルディレクター)

弘前大学医学部卒業後、東京女子医科大学精神科で助教、非常勤講師を歴任。現在はVISION PARTNERメンタルクリニック四谷の副院長を務めるとともに、企業や行政機関の産業医を担当する。ウェルプラでは、メディカルディレクターとしてアドバイザー業務やコンサルティングなどを行っている。

前編のインタビューはこちら

社員の健康問題を回避し、経営に集中できるようにするための産業医

——企業の目線から見て、産業保健の重要性はどこにあるとお考えでしょうか。

近年では「健康経営」「人的資本経営」などといった言葉が出てきているように、企業価値の向上に向けて人に着目する流れが年々強まっています。人材流動性が高まってきているなか、企業はウェルビーイングやエンプロイーエクスペリエンス(EX)などの領域で差別化していくことも必要になってきています。

一方、従業員としては、経験を得るためにある程度の負荷は必要と考えているものの、それで体調を崩してしまっては困るわけです。従業員にとって会社は、自身の成長とリスクのバランスを取れる場所であり、仮に倒れたとしても助けてくれる安心感のある場所であることが大切です。経営は今後そのバランスを見極めることが求められるようになってきますし、我々産業医は従業員の安全を担保することで、健康問題を経営問題にしないという役割を担っていると考えています。

——業種ごとに何か違いはあるのでしょうか。

建設業なら事故、工場なら化学物質といった形で業種によってフィジカルに対するリスクは変わります。一方で、メンタルヘルスはどの業界でも同じような傾向になりますが、企業規模やステージによって違いがあります。たとえば、変化の速い企業やフェーズが大きく変化している企業では、メンタル不調になる人が多く見られます。

企業だけでなく社会のフェーズの変化も影響します。たとえば、COVID-19が拡大した2020年〜2021年あたりでは、新卒や転職者を中心にメンタル不調になる方が増加しました。新しい環境に変わったのにもかかわらず人的交流が少なかったことがその理由のひとつです。ただ、2022年になると各企業が危機感を持ってさまざまな対策を打つようになったため、現在では回復傾向にあります。

——環境の変化がメンタル不調に大きく影響を及ぼしているんですね。

働く人のストレスは主に、業務、人間関係、環境、プライベートの4つに起因するといわれています。特に会社のフェーズが変わると、環境、業務、人間関係が変わり、これらが足し合わさってストレスが拡大していきます。転職をしたときやベンチャー気質だった会社が大規模になったとき、買収で組織のカルチャーが変わったときなどにも起こりえます。こうした背景から、近年ではスタートアップ企業がIPOの前後で産業医を確保する動きも出てきています。社員の健康は経営に直結するものだという企業側の認識が広まってきていると感じています。

メンタルからフィジカルまで一気通貫でサービスを提供するウェルプラの強み

——堤先生はウェルプラとは普段どのように関わられているのでしょうか。

ウェルプラでは、メディカルディレクターとして、実務からアドバイザリーまで幅広く関わっているのですが、例えばストレスチェックに関しては、実施後の分析やアドバイスを行ったり、会社全体の傾向や課題を分析しそのソリューションとして施策の提案や研修を実施したり、職場改善のコンサルティングなどを担当したりしています。また、ウェルプラの産業医紹介サービスを通して自ら産業医としての実務を行うことも多いですし、産業医のマッチングについて知り合いの産業医を紹介するなどの協力をしたりすることもあります。

——アドバイザー業にとどまらず実務にまでかなり深く関わられているんですね。

そうですね。ですので、肩書は「アドバイザー」や「顧問」ではなく「メディカルディレクター」としています。産業医の資格を持っている医師は現在約9万人いるといわれています。そのなかで実際に産業医を中心とした活動を行う医師は1万にも満たないと考えています。そうした意味では、産業医、そして臨床医として精神科医療に関わっている現場の経験を活かして、深く関わっています。

——堤先生はこれまで産業医として多くの企業の課題解決に関わられてきたと思います。そうした立場から見て、ウェルプラのサービスはどの点に優位性があると感じられていますか。

分析に強みを持つストレスチェックサービスを長年手掛けてきたノウハウが蓄積されている点、それを踏まえたクオリティの高いソリューションをセットで提案できる点に強みがあると思っています。また、ストレスチェックだけでなく、健診結果や面談記録等を一元管理出来るSaaSのサービスや、産業医・保健師等の産業保健職のマッチングサービス等も提供しており、メンタルからフィジカルまで一気通貫でカバーできることも特長です。

単にパッケージを売るだけではなく、お客様からヒアリングを行いニーズを汲み取ったうえで業界ごとにカスタマイズした業界特化型サービスを提供していることも他社にはないポイントだと思います。それぞれの業界の実態や課題に沿った形でご支援しています。

——最後に、今後の産業保健領域における堤先生のご活動の展望と、ウェルプラに今後期待することを教えてください。

社会情勢が大きく変化し、1億総活躍社会として、女性や高齢者、障害者を含めあらゆる人が能力を発揮して活躍することが求められるなか、不適切な場所に不適切な人材を配置してしまうと、効率的でないだけでなく不健康になる方も出てきます。私の産業医としてのモットーは、健康問題を経営問題にしないことです。従業員を健康にすることは、経営の武器になります。引き続き、そのためのサポートを行っていきたいです。

また、産業保健は未開拓の領域です。ここを全体的に底上げしていくことで、ゆくゆくは日本のGDP成長に貢献していきたいと考えています。ウェルプラにはその専門性の高さを活かして産業保健やウェルビーイング領域のプラットフォーマーとなれるよう、さらに影響力を拡大させていってほしいと思っています。