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岸田文雄という男

見えないビジョン

 岸田政権は新しい資本主義を掲げて誕生した。「令和の所得倍増計画」を掲げて分配と成長の好循環を目指すとしているが、その目標をどうやって達成するかは依然として不透明である。当初は金融課税が強化されるではないかと金融市場が疑い、「岸田ショック」なるものが見られた。また、よく分からないタイミングで自身の長男を総理秘書官に就任させ、案の定、外遊先の行動を新聞や週刊誌からボロクソに書かれる始末である。

 そうかと思えば、防衛費増額に関してはサラッと通過させてしまっている。防衛費を対GDP2%までの増額や敵基地攻撃能力の明記言う戦後の防衛政策を転換させる重要な問題である。これは筆者の推測であるが、安倍元総理の時代ならこれ程までに波風立たず通過できたはずがない。

 ネット上では「検討使」なる言葉が誕生したが、のらりくらりと批判を交わしながらそれでも着実に政策を立案していくのが岸田総理の政治手法なのかもしれない。

やりにくさ

 先月末、今年度の予算案が参議院を通過し成立した。今国会では立憲民主党と日本維新の会が協調関係を構築したことによって岸田総理にとってはやり難い国会になるのではと予想された。しかし、蓋を開けると特段困難な点もなく無事予算案は可決された。防衛費も同様である。

 安倍元総理は色が濃かったため、対決色を鮮明にすることで存在感を示せた。敵を明確にし攻撃を厭わなかった。しかし、岸田総理は対決色をあまり出さず他党を批判することはあまり無い。またある種の「朝令暮改」も辞さず、世間の評判が悪ければ直ぐにその政策を引っ込める又は改変する。これによって野党はのらりくらりしている岸田総理を掴めず存在感が低下している。

 一時期は危険水域に入りかけていた岸田内閣の支持率はいつの間にか支持が不支持を上回る結果を出したメディアがいくつかある。

驚異的な胆力

 岸田総理は独自色を前面に出さない一方で時にはそれに相反する程、大胆不敵な行動をする。現職総理として、初めて戦地であるウクライナを訪問した。G7議長国であるがウクライナを訪問していない唯一のトップとして是が非でも訪問を成功させたかった。その様な状況下で極秘とは言えないが、インド訪問を経てキーウを訪問した。戦後、現職総理が戦地を訪問するのは初めてであり、歴史的な瞬間であった。

 また、雑賀崎漁港で暴漢に襲われた日の締め括りは、お気に入りの理髪店「ヘアモードキクチ神田日銀通り店」での散髪であった。(首相動静を見ると月に2回ほど通っているが、どこをそんなに気にしているのか不思議である。) 警備関係者からすれば暴漢に襲われた日くらいは静かに安全地帯で過ごしてもらいたいだろうが、襲撃された後も和歌山駅前、新浦安駅前及び本八幡駅前にて演説をする堂々ぶりである。

 国のトップを務めると言うことはこれ程までに驚異的な胆力の持ち主でなければ務まらないと言うことだろう。

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