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健康管理にデータの「見える化」が必要なワケ

前回は、健康管理が企業にとってなぜ重要なのか、どのようなことを行う必要があるのかについてお話しいたしました。

その中で、積極的な健康管理にはデータの活用が不可欠であり、特に「見える化」していくことがポイントになるとお伝えしました。

人間の心身の状態を包括的に捉えるべき健康については、デジタルデータでシステマティックに管理することが相反するように思えるかもしれません。
でも実は、データを統合的に活用するからこそ可能になるアプローチがあるのです。

今回は、なぜ健康管理にとってデータの利活用が重要なのかをみていきたいと思います。


健康は、問題解決型+未来志向型で考える

健康は、「失ってはじめて大事だと痛感した」とよく言われます。
うまく回っているときは当たり前な状態で意識にのぼらず、危機的な状況になってから対応に当たり始めることが多いというわけです。

この流れで考えた場合、「健康を失わないために」という問題解決思考でのリスク管理として健康管理を行うことになりがちです。

極端にいうと、問題解決型の健康管理では、不健康が不節制や意志の弱さ、自己管理のなさだと評価されてしまい、ますます健康状態に関する話ができなくなっていきます。健康に対する基本的な知識や習慣が身につかないという悪循環にもなりかねません。

企業が行う健康管理は、問題解決型だけでなく、未来志向型のポジティブなものも並行して取り組みを行うことが望まれます。
つまり、「(健康状態が良い人もそうでない人も)現在よりもっと良い状態を続けていくために」、いま何をしていくべきかを考えるという方向へ、意識を向けていく必要があるのです。


包括的に健康を捉えるために、データを活用する

人によって、現状も、目指したい状態も違います。問題解決の割合が大きい人もいれば、未来志向の割合が大きい人もいるでしょう。

企業として理想的な健康管理は、大勢の従業員に対して、それぞれの状態を明らかにし、各自の目指したいところを引き出して支援することです。
しかし、現実的には、一人ひとりから状況を聞いて個別に対応を考えていくことなとてもできません。

だからこそのデータ管理です。
事実ベースで基本となるデータがあれば、問題解決型でも未来志向型でも、さまざまな解析や判断、行動の導線づくりのシステムを組み合わせていくことができます。

一人ひとりに最適なしくみをつくるために、共通の基準や属性を整えて蓄積することができるデジタルのデータは、とても強力なアイテムとなってくれるのです。


健康管理のためにデータから読み取るべきもの

では、具体的にどのようなデータがあれば、問題解決型にも未来志向型にも役に立つのでしょうか。

ここからは、健康管理のためにデータを使ってどんなしくみをつくっていくことができるのかを整理していきましょう。

リスク管理のための健康データ
まず従業員個人の視点から健康管理を考えると、緊急性の高いものから順に、「治療すべきもの」「放っておくと治療が必要になるもの」「このまま維持したいもの」に分けることができます。

問題解決型のリスク管理として捉えれば、前2つは回復や改良のため、3つめは問題を未然に防ぐための予防としてのデータ活用といえるでしょう。

したがって、リスクとなる要素の特定、影響度の判定、予測、水準値を超えた場合の警報などを行うためのデータが重要になります。
例えば、健康診断や人間ドック、ストレスチェックの結果、勤怠記録といったものが挙げられます。

より良い状態を目指すための健康データ
未来志向型で健康データを活用するしくみは、これまであまり言及されることがありませんでした。たいてい「維持するためのしくみ」であり、予防の範囲を超えなかったからです。

しかし、従業員を「人的資源」として大切にすることにより未来の企業価値を高めていくためには、マイナスにならないためという消極的な取り組みではなく、プラスを積み上げて掛け算にもっていくような、より積極的なアプローチが必要です。

現在の自分の状態をポジティブに受け止める自己受容のしくみ、現在の習慣をもっと続けたいと思わせるしくみで、従業員が自ら行動を起こす導線をつくりだしていくシステムが重要となります。

ここで必要になるデータとしては、毎日少しずつ積み上げられる生活習慣に関連するものが挙げられるでしょう。
例えば、歩数、食事、睡眠、健康クイズの成績、ヘルスケア関連のイベントへの参加などがあります。


効率的・効果的なデータ管理を行うために

データそのものは、従業員の毎日の行動から得られる事実ベースのものですが、それらを効率的また効果的に活用するためには、ちょっとしたコツがあります。

効率的なしくみづくりに欠かせない自動化
リスク管理として行うしくみにとって最も重要なのは効率化です。

各部署から収集したデータをいかに集約してリスクを特定し、予測して警報を出すかがポイントですから、集計からデータをふるい分けして判断材料を整理するしくみを極力自動化させることにより、最終的な判断を行う人間の時間を確保することが望まれます。

ここでのポイントは、集計の自動化だけでなく、AI(人工知能)の活用などにより、露払いにあたる一次判断も自動化し、緊急かつ重要な課題に専門家の時間を多く配分できるようにすることです。

もうひとつポイントがあります。事務の作業量を減らすことにより、専門家との連携や従業員へのフィードバックを早く行い、機会の損失を軽減することは、規模が大きな組織ほど重要です。

解析結果の共有や判断・指示事項の伝達、リマインドなどのコミュニケーションについても、自動的に促しを行うシステムを導入するなどの工夫をするとよいでしょう。

エンターテインメント性を上げるゲーム要素
健康状態が悪くない従業員にとって、必要性を感じない健康行動のために毎日の生活習慣をデータにして積み上げるには強い意志が必要です。たいてい三日坊主になってしまうでしょう。

このため、健康を目的としなくても楽しく続けたくなり、データを蓄積することに喜びを感じて毎日アクセスしたくなるエンターテインメント性の創出が必要になります。

効果的なしくみのひとつがゲーム要素です。
ランキングやバトルなどの競争型、アイテムやコイン、ポイントを積み上げる収集型、知恵と協力で乗り切るロールプレイング型など、楽しく続けたくなるものをしくみにしていくのがおすすめです。



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