生き残るスキルホルダーの自転車修理のお兄さん

 地方の田舎住みだが、クルマを持っていない。

 限界集落に住んでいるわけではない。単に人口がダダ減りしている地方都市に住んでいるだけだ。県庁所在地ではないので、都会と同じでは決してない。が、かつては人口も多かったエリアなので、一応一通りのものが揃っているので、徒歩圏内だけでも生活に必要なものは揃う。特にネット通販も使える現代において、困ることはほぼない。

 カナメはすぐに電動アシスト車を購入したのだが、私は20年以上前に使っていたママチャリ(トランクルームに預けていたもの)の、子供用の補助シートなどを撤去してもらって、とりあえず普通に乗れていた。

 が、一ヶ月前くらいから、走る度に異音を発するようになった。

 それでも気にせず強引にカタンカタンと音を立てながら乗っていたのだが、防犯用のコイル式ワイヤー錠をかけたまま走り出してしまった。

 あ、とは思ったが、その時には自力で直せると思った。が、とんでもなかった。まずワイヤーを切断するツールすら持っていない。とりあえずワイヤーを切断してもらいに自転車店を目指すことになった。

 こんな田舎にも徒歩圏内に自転車店があったので、とりあえず前輪を転がしつつ、後輪を浮かせて移動はできた。後輪を持つ手が痛くなったりはしたが、とりあえず現地には着いた。

 前回も子供用シートの撤去をして下さったお店なのだが、若い後継者さんがいてめちゃくちゃ安心した。今後何年間かは必ずお世話になるだろう自転車店だ。跡取りさんがいるかいないかは、私たちにとっても死活問題でもある。

良かった。

 その若いお兄さんに、私の自転車にからまったワイヤーを撤去して頂くことになった。想像よりも意外と大変な状況で、深部にまでワイヤーが食い込んでいてパーツを一つずつ外すことに。私は自分でワイヤーを取ろうと悪戦苦闘して食い込んだ状況を確認済みなので、ワイヤーを切断すればスルスルと取れるレベルではないことは理解できた。

結果的に、すべてのパーツを外して1個ずつ動作確認して戻すという作業に小一時間かかった。無事にワイヤーもとれ、特にお願いしたわけではなかったのだが、すべてのパーツを締め直してオイルもさして下さった様で、受け取った自転車は異音を発することなく、スタンドも元気よく跳ね上がるようになり、スイスイと快適に動くようになり、涙が出そうだった。

 その作業を見ている間、色々と考え込んでしまった。

 彼のやっている作業をロボットが代替できるのかを考えてみた。

 自転車そのものの大きな構造はメーカーによって大きく変わるものではないのだが、使われているパーツの大きさも様々で、たとえば機種を固定すればロボットでも作業はできるかもしれないが、あらゆるメーカーのあらゆるタイプの自転車に対応できるような修理ロボットを作ろうとすると、そちらのコストの方が高いだろうなと思った

 つまり自転車の修理の熟練工さんにとっては容易にできることも、意外と条件設定を確定させることは難しいので、人間がやる方がリーズナブルだなと思った。現時点での人件費を考えれば、であるが。

 リノベをやってみて驚いたのは、そのイレギュラーっぷりである。新築物件を建てる場合は、建築ロボットのようなもので出来る部分はあるんだろうなとは思ったが、リノベでは、それは無理ゲーというものである。トラブルに次ぐハプニングだらけで、プロにとってもリノベの個々の状況で遭遇するトラブルは、未知の領域であることも。

 個々の家の状況は全く異なるし、そこから新しく何か建築上の追加作業を行う場合も、ロボットで出来そうなことはあまりない。実際に自分で床材を敷き詰めて、壁紙を貼ったりしたが、長い時間を経た家というものは、どこかしら歪んでいる。きっちりとミリ単位で揃っているかといえば、そんなこともなく、ズレているし歪んでもいる。凹凸があれば整えて、見栄え良く仕上げるのも人間の主観によるものが多い。つまり、こういう建築や内装などについて、まだまだ人間の手が必要なことは多いのである。

 RPA(Robotic Process Automation)を使えば、いわゆる人間がやっていたデスクワークのうちの定型業務については、かなりの割合でロボット化への移行が可能である。要するに肉体を使うものでも、頭脳を使うものでも、定型業務については、テクノロジーで代替ができるのだが、汎用度が少なく、個々の条件が大きく異るような作業については、もともとの仕事がなくならない限り、当面は安泰である。

 もともとの作業がなくなるというのは、どういうことか。

 たとえば、自転車の修理作業を例にとると、既存の自転車の修理については、ロボットが代替できるようになる可能性は当面は低いが、たとえばそれに変わるような一人用の乗り物が発明されて、自転車そのものがなくなっていくのであれば、当然その修理の仕事はなくなる。そういうことを指す。

つまり、自転車に変わる次世代の移動手段が出てくるまでは、価値ある仕事として残り続けるはずだ。

そういう目で見てみると、庭師さんや、美容師さんや、大工さんや各種の修理工の方などは、少なくとも今後10年くらいは楽勝かもしれない。

そう言えば、カナメがPrime Day Saleでサドルを買ってたわ。ペルテックの電気自転車に早速つけてゴキゲン。

ちなみに私はペルテックのサドルで特に問題ない。ただ、最近はかなり長時間乗っていたりするので、こういうものでも乗り心地は違うのかも。

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