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日本式自動精算(セミセルフレジ)スタイルに唸る

 日本のスーパーマーケットでは、スキャンを終えた商品代金を自分で精算する自動精算機のことを「セルフレジ」と言うことがあるが、それを見るたびに脳内で全力に突っ込んでしまう私である。

レジとは、レジスター(登録機)の略称であるので、精算だけを行うアノ機械は、セルフペイ(メント)ではあっても、セルフレジではないと思ってしまうのだ。でもそれで通じるから、まぁいいかとも思う。

帰国後、ほどなくこの日本型セルフ決済機を初めて見た時は、

「えええええ、これがセルフレジ?ウケルー。」

こんな言葉を私が言うわけはないが、脳内は確実に嘲笑モードであった。ニッポンってユニークね、そんなことをしてもレジスタッフの人数は別に減ってないし(=人件費が大幅削減できたわけでもなし)、って思ったのだ。

ところが!

このスタイルが意外と合理的だと気づくまでに時間はかからなかった。

仕事柄、ベストプラクティスやビジネスプロセスリエンジニアリング(BPR)には興味があるので、ほんまもんのセルフレジ(自分で商品をスキャンして支払いまで行う)レーンができた時には、すぐさまそちらに並んで実際にやってみた。

もう一回ですべてを理解したわ。

スーパーマーケットの様に、あらゆる形状の、あらゆる種類、あらゆる大きさ、あらゆる包装形態のものが混在する商品群を、スキャンするだけでめちゃくちゃ時間がかかってしまったのだ!

1、まずバーコードがどこにあるかを商品ごとにイチイチ探さないといけない。

2、素人がスキャンしようとすると、一回でキレイに読み取ってくれるとは限らない。

3、商品によってはバーコードがないものもあり、その場合は、そばにある商品リストから該当商品を探し出し、そのバーコードを読み込ませないといけない。

4、セルフレジの機械の仕様だろうが、万引き防止のためかチェック済み商品の重量を計測しているらしく、気軽に自分のバッグに入れると大音量で警告が出る。

5、ちょっとしたことでエラーになり、その度に店員さんを呼びつけないといけない。

もう、とにかく判断につぐ判断を迫られ、ちょっとイレギュラーなことをするとすぐにアラームが鳴り、店員さんが介入することとなり、そのためにびっくりするほど時間がかかってしまうのであーる。

もちろん商品が数点だけで、他のレジが混んでいる場合にはセルフレジをオススメしたいが、大量購入する場合は、プロのレジ係の方にスキャンして頂く方が、圧倒的にストレスも少ないし、時間短縮になるのである。

そこで気づいたのは、レジエリアで最も時間をとられていたのは、そのスキャン部分ではなかったということだった。

これは、日本の「お客さまは神様」モードが関係しているのかもしれない。

一般的なレジでは、プロのレジ係さんのスキャン行動は実に短時間で終わる。すごいスピードである。そして今は袋詰め自体はセルフになって久しいので、別カゴに配置し直すのも、的確にスピーディに終わる。

問題はそこからである。

客である私は、まずエコバック持参であること、ポイントカードがあること、クレジットカード一括払いであることを伝える(あるあるなのだが、先に言っておいても「お支払い方法は一回でよろしいですか?」と再度聞かれることの方が多い。もう慣れたけど。)時々「シールを集めています」などと言う場合もある。場所によってはQRコード決済をすることもあるので、そのQRコードは事前に読み込ませておいて、その場で金額の数字を打ち込み、その画面を見せて確認をとった後、ようやく決済が終わる。それでも私のこの行動は、レジで並んでいた他の方々の中でも最速だと思う。

高齢者のおばあちゃんは、何度も金額を聞き返したり、お財布の中から一枚一枚小銭を取り出したりする。途中、世間話をはさむこともある。見えにくいからとか、聞き取りにくいからという理由を言って、丁寧に謝る方もいる。ようやく決済が終わったかと思うと、「袋ないんやけど」と言い出し、そこから追加でプラスチックバッグを購入し、またカバンからお財布を取り出して、「え、何円?4円?」と聞いてからお財布をパカっと開ける。そして硬貨を一枚一枚数えている間に、重そうなカゴをレジ係さんがサッカー台に運んでくれたりする。

すっごくすごく時間がかかっているのに、それでもレジ係さんは丁寧にずーっと笑顔で待ってくれるし、時には「急がんでもええですよ」などと優しい言葉をかけているのだ。

なぜかニッポンでは、その列の後ろで待っている人達の立場は無視されることが多い。お客様は目の前にいる今現在対応している人だけである。その丁寧すぎる対応が当然であるかの様に、客側は急ぐでもなくゆっくりと支払いをするのだ。

つまり、日本のレジにおいてのボトルネックは、チェック(スキャン)部分ではなく、支払いにおける一連のアレコレの方なのである。

そのボトルネックのアレコレを一切合切アウトソーシングしているのが、あのセミセルフレジである。最も時間のかかる部分がどこであるかを十分に理解し、そのソリューションとしての「日本式自動精算機」システムは、日本のスーパーにおいてのベストプラクティスなんじゃないかと思えてきた。

最初にこれに気づいた人、凄すぎるわ。

セミセルフレジでは、現金だろうとカードであろうと、個々がどれほど支払いにもたついて時間をかけようと、次の人に迷惑がかかることはない。レジの台数に比べて精算機の方が多く(ほぼ1.5倍ほどある)、私自身は、今までにレジで並ぶことはあっても、その精算機待ちをしたことは一度もないのだ。

そもそも日本には古くから、食券を券売機で買う文化があったし、店員さんと話したい層がいる一方、一切のコミュニケーションを回避したいと思う層もいる。会計のアレコレを自分でゆっくりやりたいと思う人も、後ろで並んでいる人が気になる人もいる。私自身は、自動精算機は大歓迎である。

人口減少の事実と、それに対する完全な無人化ソリューションまでの過渡期である現在としては、このセミセルフレジは、取り扱い商品の多彩なスーパーマーケットにおいての最適解だと断言できるよ。

あくまでも過渡期のソリューションとしてね。

以前購入して読んだ本が、kindle unlimitedで読めるようになってた!

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