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路地裏の雑文集 vol.1 駒沢公園のランナーと映画 her 。
目の前に差し迫った現実的な不安と、次なる時代への期待感で、相変わらず頭の中がぐちゃぐちゃなのですが、noteではワクワクしたい方の頭を頼って書き散らかしていきます。
まずは、ちょっと、取るに足らない話から失礼。
自宅が駒沢なので、いつも運動がてら歩いて駒沢公園を半周しつつ学芸大学まで通っているのですが、コロナ以降、刻々と様変わりする公園の景色を観察するのがひそかな日課となっております。
とりわけランナーの大発生には驚きましたね。
都内随一のランニングの聖地として目される駒沢公園は、どちらかといえば中級上級者向けの緊張感が漂い、ウェアもNIKEやノースフェイスでシュッと洗練されたランナーが多かったのですが、ここ1ヶ月は、「〇〇高校サッカー部」と刺繍が入ったダボダボのディアドラ(90年代サッカーイタリア代表ロベルトバッジョによって一世風靡)のジャージを着た中年男子や、おそらくユニクロと思われる上下グレーのスウェットで走る女子の姿も混ざり合って、かつてないほど景色がカオスなのです。(※感染防止上、公園内でのランニングは禁止になるのは時間の問題)
STAY HOME発令以降、在宅ワークで時間と身体を持て余しているのか、このままではマズイと、即席の健康意識が芽生えているのでしょう。コロナ以前は、ランニングに興味も意欲も湧かず、ランニングウェアすら買ったことのなかった層までが突如ランニングを日課に取り入れている状況に、僕は不謹慎ながらも、それはそれで、なんかいいなーと勝手にホクホクしています。
そりゃ、一過性の人もいるしょうが、自粛期間が長引くと、これを機に、図らずも、走ることの解放感や、自然の中で体を動かすことの充足感を味しめてしまい、もはやランニングをしてなかった頃の自分には戻れなくなってしまう人も多いと思うのです。いずれディアドラからアンダーアーマーに衣替えし、何なら駒沢公園のアスファルトでは飽き足らず、高尾山や陣馬山まで遠征してしまうかもしれません。
「ウェルネス」「ウェルビーイング」なんて言葉が持て囃され、身体も心も健康で、サステナブルな社会を目指そう!という共通目標が意識の高い層に浸透しつつありましたが、コロナ禍によって、小難しいスローガンやまどろっこしいステップをすっ飛ばして、意識のだいぶ低かった層まで問答無用に巻き込んで、「ウェルネス」的な未来に一気に肉薄してしまうのではないかと妄想しています。
「リモートワーク」、「SDGs」、「地方分散」、「食の自給自足」、「ベーシックインカム」、「みんなの政治参加」、「家族との時間は大切!」、etc。
理想の未来を語り合う中で、いつも俎上に載せられては、実現するタイミングをいまいち掴めず、机上の空論だと先延ばしされてきたお題目らが、この状況下で、小難しいスローガンやまどろっこしいステップをすっ飛ばして、実社会に装備されていくのではないかと、不謹慎ながらも、ワクワクしています。
変化を拒み、もとの形に戻そう、戻りたい、という力学との激しい軋轢を経験しながらも、やっぱり社会はジリジリと前進していくと思うのです。というか前進すべきです。
一度別れた彼女と、もう一度ヨリを戻したとしても、だいたい長くは続かないのと同じように、不可逆だと思うのです。
違うか。
あれ?
これ何の話でしたっけ?
そうだ、映画「her / 世界でたったひとつの彼女」の紹介をしたいと思ったのでした。
なにかと近未来に思いを馳せることが増えたいま、ぐるぐると妄想するのにオススメなのがこの作品。同じ未来系でも「ブレードランナー」や「レディプレイヤーワン」より、こちらの世界観の方が僕はしっくりきます。
奇才スパイクジョーンズ監督、鬼才ホアキンフェニックス主演。2030年ぐらい?の近未来のLAを舞台に、離婚調停中で失意の底にいる主人公が、ひょんなことからAIに恋してしまい、AIと恋する中で、人を愛することの深い意味を理解していくというお話。いちおう再生の物語です。終盤にかけてぐっときます。スカーレットヨハンソンの声の色気ときたらもう。
とにかく、スパイクジョーンズが描く近未来の舞台設定が粋です。
空飛ぶ車やドローンが行き交うわけでもなく、高層ビルが立ち並ぶ街の外観はいまとほとんど変わらないのですが、何かが絶妙に違う。人間と端末との関係がより成熟する中で、街はどこか物静かで、街を行き交う人々がそこにいるようで、そこにいないような、寂しげでノスタルジックな空気感なのです。
ただ、個々がインドアで切り離されているわりには、ビーチの海水浴は大混雑だったり、ツールが高度に発達しているわりには、手紙文化の需要が高まっていたり。(主人公セオドアの職業が代筆業という設定がたまらない)
デジタルで置き換えられるものと、体温を感じたいアナログなものとが、トライアンドエラーの末に、最適な配合で溶け込んでいるような未来。ロマンチックなスパイクジョーンズの希望と意志が色濃く投影された未来がそこにはあって、ちゃんと血が通っているんですよね。ホクホクします。
これから僕らは、しばらくの間(半年なのか1年なのか)、「オンライン飲み会」、「オンラインフェスティバル」、「オンラインスポーツ」、「オンラインデート」、「オンライン旅行」、「オンライン大貧民」などなど、オンラインの大海原にどっぷりと浸かることになるのでしょう。最初は不慣れで違和感があったものが、サービスのアップデートが繰り返され、どうせジワジワとフィットしてくるでしょう。
長い巣篭もりを終え、ふたたび外界(オフライン)に踏み出す時、その経験の先に、僕らは何をデジタルに任せ、何をフィジカルに頼りたいと思っているのか。何を合理化して、何に手間をかけたいと思っているのでしょうか。
そんなことを考えながら、ほしい未来について仲間と議論するのが、いま一番楽しいことかもしれません。
her、おすすめです。
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