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休日(2)

フレークをスプーンで掬って口に運んでいるときに、昨日観た映画のことを思い出した。
若い男女が出てくるイギリス映画で、食卓を囲んで二人の未来について話し合っていた。
すれ違う心。交わらない未来。食卓には豆の煮物。イギリス映画によく出てくる豆の煮物は、お世辞にも美味しそうには見えないけれど、テンション低く口論する場面には良く似合う。
池の鯉にえさをやるように、ぽつぽつと話し、時々思い出したように豆をスプーンで口に運ぶ。
精神的にも経済的にも生活していくのがやっとの彼女を、献身的に支える男。だけど彼女は男のことをどうしても愛せないと言う。感謝もしているし、友人としてかけがえのない存在であることは認める。でも、どうしても。理由はない。理由がないから苦しいと告げる。
理由がないのであれば、悪いところを直して好きになるということができない。
高校時代の友人の蒼汰は、A(ヨーロッパのサッカーチーム)が嫌いらしい。理由もなく。
蒼汰に言わせると、それはAのライバルチームBの熱狂的なファンの親父の影響なんだそうだ。
小さなころからAの悪口ばかり聞かされてきたらこうなったと言っていた。あまりに嫌いなので、何がそこまで嫌いなのか考えてみたけれど、理由が見つからなかったらしい。
「Aの選手は嫌いだけど、別のチームに移籍した途端、応援したくなるのが自分でも不思議」なんだそうだ。
「サッカーって、見てると本当に狩猟そのものだよね。そりゃヨーロッパに勝てないよ」
そう言ったのはメグミだったっけ。放課後の教室から、校庭にいるサッカー部を眺めていた。
そういえばあいつ、蒼汰のこと好きだったな。あと、左利きだったな、確か。授業中、黒板に答えを右肩上がりの字で書く姿を思い出していた。
どうでもよい思考の連鎖を断ち切り、夕食の献立を考えることにした。
とはいえ、人間の欲望はよくできているもので、ご飯を食べながら、次のご飯のことを考えることはできないようになっているらしい。
できないと言えば、人間の構造上、自分の肘を舐めることはできないんだっけ。思考の連鎖は止まらない。

ベーコンと白身を先に食べてしまい、黄身が最後に残った。
パンだったら上に乗せて食べたのに、と思いながら丸ごと頬張る。口の中に黄身が広がる。
立ち上がりながらコーヒーを流し込み、食事を終える。
もう少し飲みたかったので、キッチンでサーバーからマグカップにコーヒーを注いだ。
日曜日は、朝食のときに数杯分のコーヒーを作っておいて、飲みたくなったら飲めるようにしている。
ついでにトースターの横に置いてある料理本のページをぱらぱらとめくる。自分の中から出てこないなら外から刺激を与えてみる。
週の途中でも食べられるように、日曜日はいくつかのメニューを作る。そっちはあまり考えずにいつも適当に決めるけれど、さすがに今日の夕食ぐらいは食べたいものを、と考える。
本のページを最初から最後まで何度もぱらぱらとめくっても、なかなか決まらない。うーん。
作るものって結局偏るよね、そう思いながらチキンカレーを作ることにした。

(続く)


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