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「ファーレ立川」マークを使った、さまざまなモノづくり。

前回の記事でも取り上げている「ファーレ立川」。

2016年につくられたシンボルマークは、現在、109点のパブリックアートが点在する「ファーレ立川」街区のいたるところで目にすることができます。

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▲配色のパターンが異なるマークが、フラッグとなり、「ファーレ立川」街区内の通りに設置されています。


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▲前回記事でご紹介したガラスのサインも、すっかり街に溶け込んでいます。左下に写っている白い車止めや、ビルの壁にあるネオンサインも、アート作品です。


2016年から現在にいたるまで、このマークの認知度を高めていくためのさまざまな取り組みがありました。

GRAPHが関わった取り組みについて、前回に引き続き、プロジェクトマネージャーの若狭さんにお話を聞いてきました!

マークを浸透させるために、さまざまなツールで露出させていく

「ファーレ立川」の109作品はパブリックアートなので、いつ訪れても、楽しむことができます。

が、1年に2回、ファーレ立川街区がさらに盛り上がる特別イベントが開催されています。

その名も「ファーレ立川アートミュージアム・デー」

毎年、春と秋に開催され、アートツアーや限定インスタレーション、トークイベント、カフェでのコラボスイーツ販売など、来場者が楽しめる企画が盛りだくさんなのです。

そんな「ミュージアム・デー」のお知らせのために、2016年から毎回作られてきたのがこちらのチラシ

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▲カラフルなチラシ。使われているフォントや、レイアウトなど、そのときどきでデザインが変わります。


遊び心や、にぎやかなお祭り感があって、イベントへの期待が高まるチラシです。


パンフレットも製作しています。日・英・韓・中(簡体/繁体)と、多言語展開されています。

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▲それぞれの言語で、表紙のマークの配色が異なります。世界各地から、アートを楽しむ人たちが訪れています。パブリックアートとまちづくりの成功事例として、行政関係者の視察も多いそうです。


イベントではアートマーケットなども開催され、物販が行われるため、オリジナルのショッパーも製作されました。

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▲ビニールポリ製のショッパーにも、大きくマーク。


若狭:「このショッパーは、色の境界線など、印刷する際に、色の境界線がどうしてもズレてしまうのですが、それはそれで良しとしました。光の重なりのように見えますし、“多様性”を表現する、というマークのコンセプトから逸脱していなければOKとしています。

イベント時には、このショッパーを持った方が街にあふれて、にぎやかになります」


それから、こんなものも作られました。

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▲飲食店でよく見かける、紙ナプキンです。マークのアウトラインを単色で印刷したものを、5色で展開しています。

若狭:「紙ナプキンは、ファーレ立川アート管理委員会からいただいたアイデアです。5万枚ほどつくることになり、マークのコンセプトである“多様性”をここでも表現したいと思いました。

レストラン資材の製造会社に相談していろいろ調べ、製造上、コスト面で効率がよかったことから、5色展開になりました。

さらに、納品時には色ごとにまとめるのではなく、5色をランダムにセットしてパッキングしてもらっています。

ひとつのアイテムに対してどこまで多様化できるか、という挑戦でもあったんです」


それゆえ、同じレストランの同じテーブルであっても、1枚取り出すたびに違うカラーに出会えるのだそうです。

年に2回の「アートミュージアム・デー」の開催時に、街中の飲食店や、ミュージアムデーに参加するキッチンカー付近で出会えるそうですよ。

5色集めてコンプリートしたくなりますね!


マークのコンセプトを活かしたグッズとしては、こんなモノも。

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▲チケットホルダー。2年ほど前に、スタンプラリーイベントに参加してくれた方に配布するノベルティとして作られました。


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▲クリア素材なので、色がきれいに重なりさまざまな色が生まれます。まさに“多様”。


このようにして、あらゆるところでマークを使い、イベントを盛り上げ、「ファーレ立川」の認知度を高めていったのですね。


マークは、“110点目のアート作品”だ

さて、ここまでご紹介してきたツールやノベルティの製作と並行して、ひそかに進められていたものがあります。

それは、販売できるオリジナルグッズの開発です。

パブリックアートは、劣化や破損が避けられないものでもあり、修復や再生が必ず必要です。

メンテナンスには当然費用がかかりますが、その財源確保は簡単なモノではありません。

物販を行い、収益を得ることができれば、財源の足しにすることができるのです。

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▲街に溶け込むアート作品の例。今までに2度、アート修復再生事業が行われています。


若狭:「最初は、109点のアート作品をモチーフに使ったグッズを提案しました。

たとえば、写真家の安斎重男さんが撮影された109枚以上の作品写真をスリーブに使用した109個の消しゴムをつくる、という提案です。

社会科見学で訪れた小学生や、海外からの観光客に手に取ってもらえる手軽で実用的なアイテムとしてぴったりなのではないかと考えたんです。

しかし、アート作品の全てには、所有者と著作権者がいます。そして、所有権は土地の所有者にあり、著作権はアーティストにあります。

作品は109点、アーティストは92名。各アーティストが拠点としている国も36ヶ国に及びます。

それに、設立から25年以上経っていることから、アーティストがすでに亡くなっている場合もあり、権利関係の確認や相談など、作品が109点もあるので、大変です。

未来へとつないでいくパブリックアートなので、誰も嫌な思いをすることがないようにしなければなりません。

時間をかけて行う必要があるため、「アート作品を使ったグッズ開発をすることは、すぐには難しい」ということがわかりました」


では、どうするか。


若狭:「そこで、まずはシンボルマークを使ったグッズを開発していくことになりました。

マークは、いわば「ファーレ立川」の110点目のアートである、という考え方です。

2016年から現在いたるまで、マークのコンセプトを大事にしながら、さまざまなグッズを考えてきました」


本社工場の職人さん考案! 幻のメモブロック

さて、「ファーレ立川」110点目のアートを、どのようにモノに落とし込んでいくか。

いろんなアイデアを出しつつ、どうまとめるか考えていた若狭さんのもとに、ある日、兵庫県の本社工場の職人さんから、こんなものが届いたのです。


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▲職人さんが送ってくれたのは、こちら。断面を使って「ファーレ立川」マークのカラーが表現されたメモブロックでした。


若狭:「実はこれ、本社工場でアートミュージアム・デーのチラシを印刷したときの、「余り」でつくられているんです」


というわけで、チラシの印刷時の、断裁前の用紙を見せてもらいました。

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▲上部の余り部分に、カラフルな枠線が印刷されているのがおわかりでしょうか。これが、メモブロックの“もと”です。(オンライン取材中のひとコマです。)


若狭:「チラシの印刷をしていたときに、「この余った部分で、何か作れたらいいですよね」という話を、本社の職人さんと話をしていました。

具体的なアイデアがあったわけではなかったのですが、その話を受けて、職人さんが独自に設計して、作ってくれたんです」


ファーレ立川カラーは、紙の「断面」に印刷されているのではなく、「平面」に印刷されています

1枚1枚がつながって見えることで、断面にカラーが表れます。


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▲チラシがフルカラー両面印刷なので、メモ用紙も1枚1枚の紙が両面印刷になっています。断面でマークを表現できるように、3パターンの柄を印刷して、それぞれ積み重ねています。


工程としては、

①チラシの印刷時に、メモ用紙も一緒に印刷

②メモ用紙をカット

③カットした用紙を積み重ねて、直方体をつくる

④糊付け

⑤三方を断裁し、きれいに整える

このようになっています。


若狭:印刷現場から出たアイデアというところが、とてもGRAPHらしいなと思っています。

余った部分を活用して、価値に変えているというところもいいですよね。

できあがったモノも完成度が高く、このメモブロック自体がアートだともいえると思います」


しかし・・・残念ながらこのメモブロック、商品化はされていません。


若狭:「ファーレ立川は、街の中にパブリックアートが広く点在する“アートの森”なので、とくに拠点というものをもっておらず、グッズを販売できるような場所がないんです。

作ったところで置いてもらえる場所がないということで、残念ながらサンプルだけになってしまいました。

今後そうした場所ができれば、もしかしたら商品化が実現するかもしれません


開発が進む立川駅北口に期待!

そんなわけで、「常設の販売場所がない」ということがネックになっていた、「ファーレ立川」の商品開発。

しかし皆さま、肩を落とすことなかれ・・・!!

立川駅北口には、この春「GREEN SPRINGS(グリーンスプリングス)」という大きな複合施設がオープンしました。

ショップあり、ホテルあり、美術館あり、飲食店あり、遊べる広場ありの、とっても素敵な場所なのです。

「ファーレ立川」街区からも目と鼻の先です。


その一角に、「たましん美術館」もオープンしています。

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▲多摩信用金庫の1階にある「たましん美術館」。


「ファーレ立川」はこの「たましん美術館」と連携して、今後グッズを販売できる場所を常設する計画があるそうです。

GRAPHでも、新たなグッズ開発を進めてるそうなので、詳細が決まりましたら、またお知らせします!!

2020年秋の「アートミュージアム・デー」は現時点では開催が確定していませんが、「ファーレ立川」街区はただ歩くだけでも、とても楽しい場所です。

GREEN SPRINGSと合わせて、散策してみてくださいね。


<お話を聞いた人>

若狭  健(わかさ・たけし)

GRAPH東京オフィス プロジェクトマネージャー。ものづくりに関するプロジェクトを主に担当。元書店員という経歴をもち、本や印刷に関すること、加工全般に精通している。ファッションやアートにも詳しい。

「ファーレ立川」は若狭さん自身がとても好きだというプロジェクト。「GRAPHが手がけたロゴマークの中で、「ファーレ立川」のマークが一番好きかもしれません」と話してくれました。

若狭さんへのインタビューはこちら↓から!





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2019年12月連載開始。Design×Printing=GRAPHを標榜する、グラフ株式会社のことについて、主につづります。おおむね毎週金曜日更新。 執筆者:八木美貴 編集・ライター。 デザインや建築、インテリアなどのジャンルでムックや雑誌、ウェブ等を編集執筆しています。
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