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【書物】けもののこども

ある森の奥深くに、ティガという小さな獣人族が住んでいました。
ティガは幼い頃に、ヒューマン種との間に起きた戦争で親を失っており、孤独な生活を送っていました。

「お父さん、お母さん……ティガはもう疲れたよ……」

ヒューマン種が台頭するその時代。
ティガは行く先々でいじめや迫害を受け、彼にはいつも居場所がなかったのです。

「どうしてみんなティガをいじめるの? ティガは悪いことしてないのに……」

そんなある日、ティガは彼を殺そうと追ってきた冒険者たちから逃げている途中で、力尽きて倒れてしまいました。

「……もう……ダメかな……ティガも……そっちにいくからね……」

しかし、彼は森の中で倒れているところを魔族の女性、ローゼに助けられました。
ローゼはティガを自分の家に連れて帰り、温かく世話を焼いてくれました。彼女の優しさと愛情の中で、ティガは初めて本当の幸せを感じることができました。

「ティガは最近楽しいんだ! 生きていてよかったと思うよ! ローゼに会えたから!」

しかし、平穏な日々も束の間、ある日、ヒューマン種の冒険者たちが魔族狩りにやって来て、見つかったローゼは大けがを負ってしまいます。
さらに、ティガが彼女を助けようと反抗してきたことに冒険者たちは腹を立てました。
そして彼らがでっち上げた嘘の罪状によって、ティガも無実の罪で捕らえられてしまうのでした。

「ローゼ! ティガが必ず助けるよ! 必ず守るよ!!」

しかしそんな彼の思いは天に届きませんでした。
ティガは獄中で、兵士たちの暴行による、彼女の悲劇的な最期を目の当たりにすることになってしまいました。

「……ローゼ! ローゼ!! どうしてっ!! なんで……なんで——!!」

怒りと共に、ティガはその身に宿した力が目覚めました。
彼は怒りに任せてその場にいた全ての兵士を殺害し、監獄から脱出します。

ローゼの遺体を持ち帰ったティガは、彼女を彼女の家の庭に埋めるのでした。

「ローゼ……ごめん……守れなくて……ごめんなさい……ティガは役立たずだ……」

ティガは一人慟哭しました。
ずっとずっと。

そしてそれ以降、ティガの心は暗黒の怒りに覆われました。

彼はヒューマン種への強い憎しみを抱き、自らの力を使ってヒューマン種に対する復讐を果たすことを決意しました。

彼はヒューマン種の主権国家である帝国の政権転覆を目指し、そのために強大な力を求めるようになったのです。

数年後、そこにはかつての弱いティガの姿はありませんでした。
憎き獲物を容赦なく狩る飢えた猛虎は、その鋭い瞳で水平線の果てを睨みつけるのでした。

「ようやくこの時が来たか。全ての種族を獣人国家ティエンムーの前に……この俺の前に跪かせてやる」

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