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日刊アルカディア

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毎週刊行日である土曜日の19:00以外に、投稿する場合にこちらにも追加します。
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#詩のようなもの

踊る草と囁く森の謎

踊る草と囁く森の謎

異世界の空には二つの月が並び、その間をゆらりと漂う空中の海が広がっていた。
陸には不思議な太陽が輝き、草原を温かく照らしながら、虹色の光が揺れていた。
突如、海から無数の水滴が降り注ぎ、「ぶぃー」と音を立てながら地面に当たると、草が鮮やかな紫色に変わった。
草の間から「ほごもご」と囁く声が聞こえ、耳を澄ますと、花々が軽やかに踊り始めた。

遠くの森では、木々が「くちゅくちゅ」と歌いながら、空に向か

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パンティージャムジャムおじさん

パンティージャムジャムおじさん

夜の街に現れる
不思議なおじさん
その名はパンティージャムジャムおじさん

「パラダイス~☆♪♡」と
歌いながら
街を歩く彼の姿は
どこか異国の道化師のよう

子供たちは不思議そうに彼を見つめ
おじさんはにっこり微笑んで
「ムッフン☆♪♡」と答える
「パンティージャムジャムだよ!」

その名を聞くと
みんなが笑い声を上げる
「パンティージャムジャムおじさんだよぉ」
とおどけながら
街を練り歩く

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社会のコバエ

社会のコバエ

気が付くと湧く
どこから湧いたのかいつ湧いたのか
見えぬところから
そっと現れる

黒い塊となって
群がる姿に虫唾が走る
小さくともその数
大きな力となる

甘い香気に導かれるまま
腐りかけの果実へと集い
1つ1つの噛み跡が
果実を腐らせていく

一度集まれば
その執拗さは留まることを知らず
群がり、喰らいつくす
果実が無くなるまで

そしてまた新たな腐りかけの果実を見つけては
見境なくかぶりつく

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チュパチュパ

チュパチュパ

夜の静寂の中、チュパチュパが目覚めた
「チュパチュッパ、チチュウ」と
不気味な音が響き渡る
何の音だ、と人々はささやく

伝説の魔獣、チュパチュパ
その名を聞いただけで恐怖が走る
「チュッパ!」「チュポポ」「チュパパ」と
闇の中で蠢くその姿
まさか……伝説の魔獣が

チュパチュパはあらゆるものを吸いつくす
壁、木々、建物、そして人々
「やめてくれ、それを吸うな」と叫ぶ声
しかし、チュパチュパは止ま

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やだやだやだやだやだ!

やだやだやだやだやだ!

やだやだやだやだやだ!
面倒だもの
だるいだるいだるい
えー、しんど
やる気でないんですけどー

朝からずっと鉛のように重い
まぶたが開かない
腰が重い
じゃあ引きずってください
動きたくない

やだやだやだやだやだ!
夢の中にいたいよ
現実はもうもうもうもうもうっ!!
やだやだやだやだやだ!
近づいてくる
やるべきこと
押し寄せる波のように

やだやだやだやだやだ!
逃げたいけど
逃げられない

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くっさささささささ! くっさささささささ!

くっさささささささ! くっさささささささ!

暗い夜道を歩いていた時
突然、風が吹き抜けてきた
「なにこれ?」と一瞬、立ち止まる
その風に乗って、強烈な匂いが鼻をついた

「なんなのこれ?」と口元を押さえる
「うぇっ」と思わず声が漏れる
目の前には謎の物体
一体何が起きているのか

「ヤバめ、くっさ」
その一言に全てが詰まっていた
匂いの元は分からない
ただひたすらに「ぷおーん」と漂う

「ぷぷーん」と響く音が
耳に入ると同時に
「ぷぅっ」と

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ワシの子を産んでくれんか2

ワシの子を産んでくれんか2

「ワシの子を産んでくれ」
その言葉は、何度も繰り返される
「後生じゃ」と嘆願する声が
夜の静寂を破る

「ワシを拒まないでくれ」
その願いは、心の奥底から湧き上がる
「ワシのDNAが、ワシの子孫を残すことが」
「本能じゃよ」と言い聞かせる

「今宵、アンタのところへ行く」
その決意が、老いた身体を動かす
「ワシじゃよ」と囁きながら
優しい手で、ドアを叩く

「ワシの子を産んでくれ」と
再び願いを込

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