謎のビジネススキル"調整力"の正体

会社組織に身を置いていると、社員の評価尺度として「調整力」が話題になることがある。あの人は調整力がないだの、あの人は全然調整力がないだのという具合である。

自分が以前に出入りしていた会社では「調整グループ」なる組織単位が存在していた。調整を専門とするグループ・・・いったい何を調整しているのだ。しかもそのグループが、その部内の「筆頭グループ」であるとのことだったから驚きである。部外者からすると、バリバリ営業している人が主役のような気もするが、その会社では調整役こそが王道ということなのだろう。たしかに、社員の目は外よりも中に向いているようだった。

会社により濃淡はあるだろうが、基本的には「調整力」はビジネススキルとして重宝されていると思うのだが、というか、そもそも「調整力」とはなんなのだ。

自分のイメージでは、「利害関係者の意見をうまく引き出したり受け流したり納得させたりしながら、うまいこと期限や予算内に仕事を完成させる能力」といった定義になるだろうか。これには「根回し力」「コミュニケーション能力」「打たれ強さ」なども含まれると思う。みんなが好き勝手言って振り回されつつもがんばってやりきる人のことを言うのではないか。かっこよく言えば「地雷を踏まずに芯を食える人」。

と思っていたのだが、自分の中でテクニカルな部分でもっと腹落ちする定義があった。それは「利害関係者が納得しやすい原案を作成する能力」である。言い方を変えれば「妥協点を見出す能力」だ。思えば、自分の知る「調整力のある人」は、ぐちゃぐちゃになったものをうまく「調整」して形にするというよりは、議論のスタート地点からしてうまいことやっている場合が多い。それはおそらくその人が提示する原案がそこそこいいからではないだろうか。(まれに「調整力」を勝手に見込まれて途中から火中に放り込まれる不運な人もいる・・・)

このように考えると、ぼんやりとしていた「調整力」の解像度があがり、それを身に着ける術も少しはイメージしやすくならないだろうか。会社員垂涎必至の「調整力」をテーマにビジネス書を執筆されたりセミナーを開発される際には、ぜひこの発想を思い出していただき、私にいくばくかのアイデア料を恵んでいただけると大変ありがたい。我ながら実によい原案だと思う。

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