分水嶺に立つ社会保障制度 こうすれば甦る|【特集】昭和を引きずる社会保障 崩壊防ぐ復活の処方箋[PART-6]
島澤 諭(中部圏社会経済研究所研究部長)
日本の社会保障制度は、経済も人口も右肩上がりの高度経済成長期に制度設計された国民皆保険・皆年金を中核とする。公的年金や医療、介護など主に保険料で財源を賄う社会保険と、税金で財源を賄う公的扶助(生活保護)を組み合わせることで、個人が抱えきれないリスクを社会全体で管理している。
一方で、社会保障制度は矛盾の塊ともいえる。「医療保険」は医療サービスが受けられなければ亡くなっていた人を長生きさせる「長生きできないリスク」をカバーし、「年金保険」は「医療保険」が助けた人の「長生きするリスク」をカバーするという、真逆のリスクを補い合っているからだ。
社会保障制度が整備されると、非婚化や少子化、さらには社会との関係性の希薄化を進行させる。特定の個人や集団に頼らなくても、政府が提供する公的扶助や社会保険を後ろ盾として1人で生きていくことができるからだ。
こうした社会的連帯からの隔絶は、政府に対する過大な要求を生みやすくもなる。社会保障制度は、いったん導入され充実すると、少子化を進行させ、政治過程を介して一層肥大していく。そのため、少子化によって少なくなった社会保障の支え手の生活を危うくし、さらに将来の支え手を減少させることで、自らの財政基盤を切り崩し崩壊していく。日本の社会保障制度は〝自己崩壊過程〟の真っただ中にある。
いただいたサポートは、今後の取材費などに使わせていただきます。