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ANA Cargo脇谷謙一社長インタビュー:第1回

全日本空輸(ANA)グループの貨物事業会社ANA Cargoは、貨物機と旅客機のネットワークを組み合わせたコンビネーションキャリアとして、国際物流事業を着実に成長させてきた。将来的には「カーゴフルサービスキャリア」、「グローバルトップ5」といった明確な目標を設定し、いまも前進を続けている。

そのANAグループの貨物事業を統括するリーダーとしてことし4月1日、脇谷謙一氏が執行役員貨物事業室長兼ANA Cargo社長に就任した。現職就任から約3ヵ月が経過したところで、脇谷社長に2023年の日本におけるマーケット展望や営業戦略、今後の方針などについて直撃インタビューを試みた。以降、3回にわたって掲載する。

ことし4月1日付けでANA Cargo社長に就任した脇谷謙一氏

──ことし4月1日付けでANA Cargo社長に就任したわけですが、 着任して3ヵ月間の感想と抱負をお聞かせください。

私はANA Cargoの社長でもありますが、ANAグループの貨物部門を統括する貨物事業室長でもあります。ANA Cargo社長に就任した当時で社員が1012名、それ以外にも海外、委託先、グループ会社を含めれば相当数のスタッフを抱える大きな事業部門ですので、相応の責任を感じています。就任に際しては、「これまで長い時間をかけてようやく大きくなってきた会社を発展させ続けなければいけない」、そういう強い意気込みで挑みました。

──サービスを提供するにあたり一番大事にしている点は?

サービスにしろ商品にしろ、サービスそのもの、商品そのものがすごく大事です。この基本がしっかりしていないとお客様からの信頼は得られない。空港から空港への安全輸送は絶対条件ですが、当社のサービスで一番大事にしている点は輸送品質の高さです。この輸送品質を徹底して高め続けていく。

その中で重点を置くのは、空港のフロントライン(現場)のスタッフの対応力です。システムのデジタル化や機械・設備の自動化など、効率化できるところはしていますが、最終的には「人」でないとできない業務があります。この「人」にこそ、商品力やサービス品質を決定づける重要なポイントがあると思っていますし、ここをしっかりと育成し、強くしていきたい。

「空港スタッフの育成、強化」はサービス品質を左右する重要なポイントになる

──人材育成を積極的に進めているというわけですね。

そうです。当社は「業務上必要な教育」、「人づくり」の2つを軸にして展開しています。まず教育に関しては、従来各部署に教育担当がいる形をとっていましたが、ことしから「エデュケーションセンター」という専門部署を立ち上げました。人事、空港貨物オペレーション、貨物営業マーケティング等の各部署における教育訓練機能を集約し、航空物流に関わる部門横断的かつ体系的な教育プログラムを整備することで当社ならびにグループにおける航空貨物プロフェッショナルを育成するというものです。

──「人づくり」についてはどうですか?

これは一番難しい。カーゴマンとして絶対に習得しなければならない安全に関する知識や専門知識、航空貨物運送についての資格などについては当然教育しますが、社員個人が仕事を通じて実現したいことがあった時に、それを実現する方法を知らないで悩み苦しんでいるケースがあります。それを色々な面でサポートすることがすごく大事だと思っている。そうすることで、周囲の社員も自然に「自分もこうしたい」と手を挙げられるような雰囲気が出てくる。エデュケーションセンターはこの部分にも焦点を当てたプログラムを準備し、良い組織風土づくりの起点となることを期待している。

──日本では航空業界をはじめ、さまざまな分野でサービス品質が高いと言われていますね。

ありがたいことです。ただ、我々は国内航空貨物のみならず、国際航空貨物を取り扱っていますので、日本と同水準のサービス品質を海外でも提供しなければならない。ただ、海外には自社のほかに必ず委託先があります。委託先の業務も含めてサービス品質をどう担保していくか、お客さまのニーズに応えるサービスを提供できるか、こうした点を重要視して取り組んでいますが、やるべきことはまだたくさんあります。

──ANAグループとしての今年度の方向性は?

当グループはことし2月、2030年に向けた新経営ビジョン「ワクワクで満たされる世界を」を発表しました。ワクワクというと子どもっぽく感じるかもしれませんが、ワクワクには深い意味が含まれています。

──といいますと?

航空機は皆さんの日常の足(移動手段)であってほしいという思いがありますが、その一方で航空機に乗ることは特別なシチュエーションだと感じてほしい。いずれにしても、お客さまが空港にきた時、またはANA便を利用してくださる時など、少しでも「特別感がある」と感じてもらえるといいなと思っています。その特別感を提供するのが我々であって、そこで働く社員自身がイキイキしていないと、お客さまにワクワク感を提供することはできません。先ほどの人材育成にも通じる話ですが、社員がイキイキするためには仕事が充実していることが大事で、社員に「日々充実している、ANAグループで仕事してよかった」と感じてもらえるためにはどうしたら良いかを常に考えています。

<インタビュー第2回に続く>

脇谷謙一(わきやけんいち)社長プロフィール:
1991年4月ANA入社。貨物本部マーケティング部チャネル企画チームリーダーや貨物事業室マーケティング業務部部長などを経て、ことし4月から執行役員貨物事業室長兼ANA Cargo社長を務める。趣味は、自転車・自動車の運転、スポーツ、麻雀、将棋、料理、映画鑑賞など多岐にわたる。自動車はマニュアル車が好きで、「将来はスポーツカーに乗りたい」と画策する。学生時代は野球/ラグビー/柔道に励み、スポーツ観戦も好む。「先読み好き」がこうじて麻雀や将棋を嗜むが、「仕事は先ばかり見ていて、足元が疎かになってはいけない」と笑う。今後は、コロナ禍で辞めていた水泳を再開したいと意気込んでいる。55歳。

2023年7月26日掲載

↓↓第2回目・第3回目↓↓


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