見出し画像

日本酒:昨22年は輸出量・額ともに過去最高を更新

今、動きのある航空貨物の品目を様々な視点から解説する”エアカーゴ専科”。
今回のテーマは「日本酒」。

海外では日本酒がブームとなっている

海外で「SAKE」として親しまれている日本酒は和食のみならず各国の料理に合う食中酒として、人気を博している。2020年にはコロナ禍により落ち込んだものの、昨22年には量・額ともに過去最高を更新、この23年も好調を維持し、日本産酒類の輸出をけん引している存在だ。

海外での日本酒人気の高まりは、2013年に「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録されたことが大きく影響している。和食への興味や関心が強まるにつれて、日本酒も海外で注目されるようになったのである。

日本酒は、北から南まで日本の地域ごとに違う四季の気候風土、歴史、地域の味覚とともに受け継がれている酒造りがあるため、地域文化と密接に関係している多くの蔵元が存在している。
日本酒は冷やして良し、常温でよし、燗して良し、という世界でも珍しいお酒だ。
また、一口に「燗酒」と言っても、その温度帯で、日向燗、人肌燗、ぬる燗、上燗、熱燗、飛切燗と細かく分類されている。
飲用温度も幅があり、5℃〜55℃くらいまでと広範囲にわたる。

日本酒を美味しく飲むにはワインと同様に温度管理が重要といえる。保管時にはまず1〜8℃(日本酒の種類で異なる)の温度で置き、温度変化が少なく日光から遮断されていること、殺菌灯/蛍光灯は使用しないのが理想とされている。
また、ほとんどの日本酒はワインと異なり、コルク栓を使用していないため酒質管理上、高湿度である必要はない。かえって湿気が多いと、王冠・キャップにサビが生じたり、カビの発生によってラベルの汚損や異臭の原因となる。
横に寝かせて保存する必要もなく、通常は冷蔵庫内に立てておくのが良いとされている。適切に保管することで、蔵元の出荷時に近い品質で日本酒を楽しむことができる。

2022年は輸出量・額ともに過去最高を更新、輸出額は6年連続で前年を上回る

日本酒は今も日本の代表的な飲み物とされる。しかし現在、アルコール飲料の消費量1位はビールだ。さらに焼酎やウィスキー、ワイン、ハイボールなどの人気に押し負け、日本酒の売り上げは減っているという。
農林水産省によると、1973年から2020年の間に年間の国内販売量は75%減少したそうで、さらにビール酒造組合によれば、21年の国内市場での需要は、過去10年と比べて30%縮小したという。

日本酒の国内出荷量が減少傾向にある中、輸出量については海外での日本食ブームなどを背景に増加傾向にある。20年は新型コロナの影響により、出荷量は大幅に減少したが21年は急増し22年には過去最高量を更新している。

23年も好調を推移している

一方、日本酒の輸出金額については、1リットルあたりの日本酒の輸出価格が21年に続き22年も上昇しているのが特徴。10年前(2012年)の輸出金額は633円/リットルだったが、2022年には1323.1円と2倍以上に上昇した。これもあって、21年には402億円(前年比67%増)となり、22年には475億円と過去最高額を更新したわけだった。すなわち、高価格帯の“プレミアムな日本酒”が海外輸出のトレンドになっていると言える。

日本酒の輸出は海上輸送がメーンである。しかし、一定の温度管理が必要となるため、海上輸送ではリーファー・コンテナを利用するのが一般的。
一方、高価格帯の日本酒輸出が増えるにつれエアによる輸送も増加しており、21年の日本酒の航空輸出額は前年比65%増の45億4500万円と大幅に増加し、過去最高となった。このうち香港向けが23億7200万円と5割を占め、シンガポール向けが8億1000万円、中国向けが4億1300万円、台湾向けが1億1400万円と続く。

また、1リットルあたりの輸出価格についても香港がトップで2619円で前年から減少しているものの、高単価で推移している。
平均輸出額は1323円だが、シンガポール(2353円)・中国(1917円)は平均単価を上回っているのに対し、米国(1203円)・台湾(722円)は平均を下回っている。この点からも金額面では、香港・シンガポール・中国がけん引し「量よりも質」という傾向がアジアでは顕著であると言えるだろう。

香港・シンガポールは1リットルあたり2000円を超える(出典:日本酒造組合中央会)

今後の展開として

コロナ禍からの経済活動の回復によりアメリカ・中国・韓国・東南アジアへの輸出が拡大中で、またカナダも数量・金額共に急成長している。

マレーシア(前年比188%)、ベトナム(同237%)、タイ(同202%) と、東南アジアでは日本酒市場が急拡大しており、インバウンドも多い東南アジアは今後の成長が期待できる。高価格帯の日本酒が好まれるシンガポールなども、今後のさらなる市場拡大が見込めそうだ。
また欧州においても、金額が255.1億円(前年比:125%)と堅調に推移しており、日本酒造組合中央会では、フランスやドイツで開催される酒類の世界的展示会に出展し、さらなる拡大を目指すと発表している。

そのほか日本酒造組合中央会は、2022年に国際ソムリエ協会(A.S.I)とのパートナーシップを締結。22年9月にマレーシアで行われた若手ソムリエ教育プログラムに参加した。
2023年2月7日~12日に開催されたA.S.I. 世界最優秀ソムリエ・コンクール(パリ)へも参加し、ガストロノミー分野で影響力が高い世界のソムリエへの日本酒の啓発活動に力を入れていくようだ。
今後も日本酒の輸出ポテンシャルは大きい。

2023年10月5日掲載

▼▼▼前回のエアカーゴ専科をチェックする▼▼▼

※ジャパンプレスの発行するメールマガジン登録(無料)をすることで、最新の航空貨物ニュースを受け取ることができます。
ご登録はこちらから


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?