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生鮮ホタテ:昨22年は輸出額が過去最高に

今、動きのある航空貨物の品目を様々な視点から解説する”エアカーゴ専科”。
今回のテーマは「生鮮ホタテ」。

ホタテは片方の殻を船に見立て、もう一方を帆のように立てて走ると信じられていたことから”帆立て”と呼ばれるようになったと言われている。実際は、大きな貝柱で殻を開閉させ海水を吹き出して泳ぐ。
ホタテの殻の中身は、ウロと呼ばれる消化器官を取り除けば、ほとんどの部位を食べることができる。外とう膜は「ヒモ」と呼ばれ、酒のつまみとしても食されている。

ホタテの貝柱は人気があり、生鮮・加工品合わせてよく食されている

特に、中央にある「貝柱」は人気が高く、干したり冷凍したりして単独の部位としても流通している。強じんな筋肉の固まりである貝柱は、水分を除くと約8割がタンパク質で構成されている。また、うま味成分であるグルタミン酸やグリシンも多く含まれる。さらにホタテには、鉄分や亜鉛などのミネラル、ビタミンB1・B2なども豊富に含まれ、その他にもアミノ酸の一種のタウリンも多く摂取できるため高タンパク質かつ低脂肪で、ヘルシーな食材あるいは“ダシの素”としても利用範囲が広い。

天然のホタテは年に2回、旬を迎える。1度目は産卵が終わった桜の咲く頃からプランクトンを沢山食べて貝柱がどんどん大きくなる夏(5月~8月)の時期。 2度目は冬(12月~3月)に生殖巣(卵)が発達した時期が美味しい。また、 養殖ほたては1年を通じて食べることができる。

ホタテ生産量の1位は北海道

ホタテの生産量は、北海道が1位で青森県が2位。この2地域で日本のホタテ生産のほぼ100%を占めている。
日本では1934年頃にホタテの養殖の研究が始まったとされ、1970年代に養殖が本格化して安定した生産ができるようになった。ホタテ養殖の方法は2種類あり、稚貝にひもを通したり、かごに入れたりして海中に吊るしたまま2〜3年育てるのが「垂下式」と言われ、稚貝を海底に放流してから3、4年後に底引き網で漁獲する方法が「地まき式」と言われており、地まき式は天然もののホタテとして扱われることもあるという。
「垂下式」は、北海道の内浦湾や日本海沿岸、青森県の陸奥湾などで行われており、冬から春にかけて水揚げされることが多い。「地まき式」は主に北海道のオホーツク沿岸で行われ、初夏から秋にかけて漁獲されている。

2022年の輸出額は過去最高に

ホタテは日本の農水産物・食品の輸出額においてトップの品目であり、2022年の輸出額は前年から42.4%増加し910億円となった。
ホタテの輸出全体では、1位が中国向けで10万2799トン・467億円、2位が台湾で3005トン・111億円、3位が米国で1948トン・78億円、4位が韓国で1万2722トン・75億円、5位が香港で2865トン・48億円となっている。全輸送量の7割が中国向けであり、この中国向けの輸出は99%以上が海上コンテナで輸出され、そのほとんどが冷凍ホタテである。そのため本記事のホタテ輸出は、エアカーゴとして輸出される割合が大きい生鮮/冷蔵のホタテにスポットを当てている。

財務省:貿易統計データから

財務省の統計によると、2022年の日本の生鮮ホタテ輸出は1万6356トン・95億円であった。輸出相手国は、1位が韓国で1万2056トン・66億円、2位が香港で1836トン・12億円、3位が中国で2393トン・12億円、4位が台湾で56トン・2億円となりこの4ヵ国で、輸送額の98%を占めている。
したがって生鮮ホタテの仕向地としては韓国が圧倒的に多いと言える。韓国では貝焼きの専門店などで、日本の生鮮ホタテが提供されているという。

近隣国を中心に生鮮ホタテは輸出されている(資料:財務省貿易統計データ)

輸出額は、2012年に10億円を上回り徐々に増加していったが、2019年には台風や豪雨といった自然災害が相次いだほか、2月にホタテの産地である北海道で発生した地震の影響によって1年を通じて不漁が続き、さらに2021年にもコロナ禍によって需要が落ち込んだため、輸出量・額ともに落ち込んだ。
しかし、22年になると一転、外食需要が欧米や中国などで回復し、輸出額を押し上げたと言っていい。

今後の展開

順調に近隣国への輸出を伸ばしてきたホタテだが、東京電力福島第一原子力発電所で溜まった処理水を基準を下回る濃度に薄めて海に放出する計画をめぐり、中国では税関当局が日本から輸入する水産物などについて放射性物質の検査を厳しくする方針を示すなど、日本産食品の輸入規制を強化する動きがみられている。
これを受けて、日本から水産物などを輸出する業者の中には手続きに時間がかかれば品質が落ちて廃棄せざるを得なくなるとして、日本からの輸出を自粛する動きも出てきている。
海洋放出が開始されれば、ホタテの最大の輸出先である中国当局が対日措置をさらに強化する可能性は高く、今後はアジア近隣国から米国や欧州などへ販路をシフトチェンジしていく必要があるかもしれない。

2023年8月16日掲載

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